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後日譚~ミサの場合~
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来るはずの生理が来ない。
生活の乱れとストレスで止まってしまっただけなのだが、ミサは検査薬もしないまま剛の子供を妊娠をしたのだと信じ込み1人で浮かれていた。
責任とって結婚してくれるよね?剛さんはあたしのこと好きって言ってくれたもん。あたしのことだけ愛してるって言ってくれたりもするし!
男の子かな、女の子かな。男の子だったら剛さんに似たイケメンになって欲しいな。女の子だったらモデルにしたい。親子で雑誌に載ったりするの。
剛さんどんな顔するかな。早く会いたい!剛さんにも、赤ちゃんにも。
***
「剛さんっ!あたし妊娠したみたい!」
「え…?」
「だからー、あたしと剛さんの子供が出来たんですよぉ!」
「…検査薬はしたの?」
心当たりが無いわけではない。ミサがおかしくなってから剛はゴムを付けるようになったけれど、付ける前にミサが無理やり入れてきたことが何度かあった。
冗談じゃない。無理。
嬉々としているミサとは対照的に剛は顔面蒼白になり、冷や汗をかいていた。
「まだしてないですけどぉ…生理来てないし!出来てますよっ」
「待って待って、ちゃんと調べよ!」
「検査薬なんかしなくていいんです。来週病院行くし。ついてきてくれますよね?ね?パパですもんねっ」
嬉しそうに笑うミサに、剛の心は震え上がった。
「いやいやミサちゃん、家に帰って自分で検査薬してみようよ!ほら、来週まで俺も待てないしさ、俺達の子供が出来てるのかなるべく早く知りたいじゃん!ね。明日また連絡するから教えてくれる?」
剛はミサの神経を逆撫でしないように無理やり笑顔を作って、喜んでいる風を装った。これで検査薬買ってね!と1万円札を握らせてミサを帰らせた。
剛さんってば、そんなに早く赤ちゃん出来てるか知りたいんだ。剛さん子供大好きだもんね!お母さんにしてもらったみたいに、あたしも愛情いっぱい注いで育てるんだから。
ミサは鼻歌を歌いながら帰った。
一方剛はホテルのベッドに寝転がり、何度も寝返りをうってパニックを起こしていた。
妊娠してたらどうしよう。あんなに嬉しそうなミサを見たのは久しぶりだ…ミサは絶対に産むと言うだろう。もしかして俺が離婚するとか思ってる?
勘弁してくれ!遊びなのに。どんな顔して家に帰ればいいんだ。
剛の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
***
「で…どうだったの?」
電話でいくら聞いても、会ってからのお楽しみですよっ!と、ミサは答えようとしなかった。
埒が明かないので数日後に剛はミサといつもの様にホテルで会うことになった。
「ごめんなさい…」
泣きそうな表情のミサを見る限り、妊娠はしていなさそうだ。剛の心の中に光が見えた。
「赤ちゃん…出来てなかったんです。そんなはずないって病院も行ったんですけど、妊娠はしてませんって。ホルモンバランスとか色々崩れて生理が来てないって、このままじゃ最悪将来に影響するとか言われて…」
「…そっかぁ…残念だったね…じゃあ今はちゃんと休んで、生活整えなきゃだね」
よかった。よかった…!!剛は心の中で胸をなで下ろした。
「だから…ちゃんと頑張るから、あたしの体が元に戻ったら子作りしましょうねっ」
さっきの泣きそうな表情が嘘のように明るくなり笑うミサが恐ろしくて、剛はひきつり笑いを浮かべながらさりげなく逃げたけれど、いつもの癖でベッドに移動してしまった。
「もー、今しても出来ないですよぉ!…でもあたしも、剛さんとしたいから嬉しい」
「いや、じゃなくて…」
「恥ずかしいけど…あたしから襲っちゃいますね」
初めてのセックスの時の様にミサは頬を赤らめた。
いや、最近ずっとミサちゃんから襲ってきてるけど…と思いながら剛はそれに応じた。
もうこれで最後にしよう。セックスが終われば少しは冷静になってちゃんと話を聞いてくれるかもしれない。というか何としてでも別れる。
「ごうさんっ、すき、すきっ…」
ミサは剛の上で腰を振りながら、剛が果てるまでうわごとのように好きだと言い続けた。
「あ…気持ちいい、いっちゃう…大好きな剛さんのおちんちんでいっちゃう!あ、いくいくっ、あ…!」
***
ミサがシャワーから上がると、剛がベッドで寝落ちしていた。
ミサに会うまでの数日間ろくに眠れていなかった剛はセックスで果てたこともあってかどっと疲れが出てしまい、気付いたら眠ってしまっていたのだ。
「ふふ…可愛い、剛さん」
ミサがベッドのそばに座り込み、剛の頭を撫でた。
…ありがとう、剛さん。お母さんが死んじゃっておかしくなってからも一緒にいてくれて。
剛さんがあたしのことを好きじゃなくなってきてるの、もう気付いてるよ。前みたいに綺麗とか可愛いとか、言ってくれなくなったもんね…。
なのに一緒にいてくれて、ほんとに優しいよね。
もう困らせたくないから離れようとしたんだよ。でも赤ちゃん出来たかもって思った時にすごく嬉しくて、1人で育てていくことも考えたけどやっぱり剛さんと一緒に育てたかったの。
お母さんがあたしを1人で育ててくれたことに何の不満もないけど、寂しい思いをしたことはある。だから自分の子供は両親が揃った状態で育てたかったんだけど…
もう剛さん、子供いるもんね。あたしがとっちゃったらその子達の父親の剛さんはいなくなっちゃうし、けどこのままじゃあたしは1人で子供を育てなくちゃいけないし。
そのことにすごく悩んだけど、結局妊娠なんかしてなくてストレスで生理が止まっちゃっただけだって、笑っちゃうよね…
なんかもう疲れちゃった。
お母さん…お母さんみたいになりたかったけど、あたしじゃ無理そう。
離れて暮らしてたけど、やっぱりお母さんがこの世界にいないなんて耐えられないよ。
…急に会いに行ったらびっくりするかな。こんなところで何してるの、とか怒られちゃうかも。
でも、自分の子供が会いに来て嬉しくない親なんていないよね。
そっちにはお父さんもいるんだよね。あたしあんまりお父さんのこと覚えてないから初めましてみたいになっちゃうと思うけど、ちゃんと紹介してね。
再婚する気はないって、私はずっとお父さんだけだっていつも言ってたよね。お母さんがそれだけ惚れ込んでるお父さんってどんな人なんだろうな、素敵な人なんだろうなって、会ってみたかったの。
あたしも紹介したい人がいるから、連れていくね。
ずっと黙ってたのはその人が結婚してる人だったからなんだけど、そっちに行ったらもう関係ないってことにしてもいいよね。それこそ怒られちゃうかもだけど…お願い、許して。
ミサはカバンから取り出した包丁を剛の胸に振り下ろした。
生活の乱れとストレスで止まってしまっただけなのだが、ミサは検査薬もしないまま剛の子供を妊娠をしたのだと信じ込み1人で浮かれていた。
責任とって結婚してくれるよね?剛さんはあたしのこと好きって言ってくれたもん。あたしのことだけ愛してるって言ってくれたりもするし!
男の子かな、女の子かな。男の子だったら剛さんに似たイケメンになって欲しいな。女の子だったらモデルにしたい。親子で雑誌に載ったりするの。
剛さんどんな顔するかな。早く会いたい!剛さんにも、赤ちゃんにも。
***
「剛さんっ!あたし妊娠したみたい!」
「え…?」
「だからー、あたしと剛さんの子供が出来たんですよぉ!」
「…検査薬はしたの?」
心当たりが無いわけではない。ミサがおかしくなってから剛はゴムを付けるようになったけれど、付ける前にミサが無理やり入れてきたことが何度かあった。
冗談じゃない。無理。
嬉々としているミサとは対照的に剛は顔面蒼白になり、冷や汗をかいていた。
「まだしてないですけどぉ…生理来てないし!出来てますよっ」
「待って待って、ちゃんと調べよ!」
「検査薬なんかしなくていいんです。来週病院行くし。ついてきてくれますよね?ね?パパですもんねっ」
嬉しそうに笑うミサに、剛の心は震え上がった。
「いやいやミサちゃん、家に帰って自分で検査薬してみようよ!ほら、来週まで俺も待てないしさ、俺達の子供が出来てるのかなるべく早く知りたいじゃん!ね。明日また連絡するから教えてくれる?」
剛はミサの神経を逆撫でしないように無理やり笑顔を作って、喜んでいる風を装った。これで検査薬買ってね!と1万円札を握らせてミサを帰らせた。
剛さんってば、そんなに早く赤ちゃん出来てるか知りたいんだ。剛さん子供大好きだもんね!お母さんにしてもらったみたいに、あたしも愛情いっぱい注いで育てるんだから。
ミサは鼻歌を歌いながら帰った。
一方剛はホテルのベッドに寝転がり、何度も寝返りをうってパニックを起こしていた。
妊娠してたらどうしよう。あんなに嬉しそうなミサを見たのは久しぶりだ…ミサは絶対に産むと言うだろう。もしかして俺が離婚するとか思ってる?
勘弁してくれ!遊びなのに。どんな顔して家に帰ればいいんだ。
剛の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
***
「で…どうだったの?」
電話でいくら聞いても、会ってからのお楽しみですよっ!と、ミサは答えようとしなかった。
埒が明かないので数日後に剛はミサといつもの様にホテルで会うことになった。
「ごめんなさい…」
泣きそうな表情のミサを見る限り、妊娠はしていなさそうだ。剛の心の中に光が見えた。
「赤ちゃん…出来てなかったんです。そんなはずないって病院も行ったんですけど、妊娠はしてませんって。ホルモンバランスとか色々崩れて生理が来てないって、このままじゃ最悪将来に影響するとか言われて…」
「…そっかぁ…残念だったね…じゃあ今はちゃんと休んで、生活整えなきゃだね」
よかった。よかった…!!剛は心の中で胸をなで下ろした。
「だから…ちゃんと頑張るから、あたしの体が元に戻ったら子作りしましょうねっ」
さっきの泣きそうな表情が嘘のように明るくなり笑うミサが恐ろしくて、剛はひきつり笑いを浮かべながらさりげなく逃げたけれど、いつもの癖でベッドに移動してしまった。
「もー、今しても出来ないですよぉ!…でもあたしも、剛さんとしたいから嬉しい」
「いや、じゃなくて…」
「恥ずかしいけど…あたしから襲っちゃいますね」
初めてのセックスの時の様にミサは頬を赤らめた。
いや、最近ずっとミサちゃんから襲ってきてるけど…と思いながら剛はそれに応じた。
もうこれで最後にしよう。セックスが終われば少しは冷静になってちゃんと話を聞いてくれるかもしれない。というか何としてでも別れる。
「ごうさんっ、すき、すきっ…」
ミサは剛の上で腰を振りながら、剛が果てるまでうわごとのように好きだと言い続けた。
「あ…気持ちいい、いっちゃう…大好きな剛さんのおちんちんでいっちゃう!あ、いくいくっ、あ…!」
***
ミサがシャワーから上がると、剛がベッドで寝落ちしていた。
ミサに会うまでの数日間ろくに眠れていなかった剛はセックスで果てたこともあってかどっと疲れが出てしまい、気付いたら眠ってしまっていたのだ。
「ふふ…可愛い、剛さん」
ミサがベッドのそばに座り込み、剛の頭を撫でた。
…ありがとう、剛さん。お母さんが死んじゃっておかしくなってからも一緒にいてくれて。
剛さんがあたしのことを好きじゃなくなってきてるの、もう気付いてるよ。前みたいに綺麗とか可愛いとか、言ってくれなくなったもんね…。
なのに一緒にいてくれて、ほんとに優しいよね。
もう困らせたくないから離れようとしたんだよ。でも赤ちゃん出来たかもって思った時にすごく嬉しくて、1人で育てていくことも考えたけどやっぱり剛さんと一緒に育てたかったの。
お母さんがあたしを1人で育ててくれたことに何の不満もないけど、寂しい思いをしたことはある。だから自分の子供は両親が揃った状態で育てたかったんだけど…
もう剛さん、子供いるもんね。あたしがとっちゃったらその子達の父親の剛さんはいなくなっちゃうし、けどこのままじゃあたしは1人で子供を育てなくちゃいけないし。
そのことにすごく悩んだけど、結局妊娠なんかしてなくてストレスで生理が止まっちゃっただけだって、笑っちゃうよね…
なんかもう疲れちゃった。
お母さん…お母さんみたいになりたかったけど、あたしじゃ無理そう。
離れて暮らしてたけど、やっぱりお母さんがこの世界にいないなんて耐えられないよ。
…急に会いに行ったらびっくりするかな。こんなところで何してるの、とか怒られちゃうかも。
でも、自分の子供が会いに来て嬉しくない親なんていないよね。
そっちにはお父さんもいるんだよね。あたしあんまりお父さんのこと覚えてないから初めましてみたいになっちゃうと思うけど、ちゃんと紹介してね。
再婚する気はないって、私はずっとお父さんだけだっていつも言ってたよね。お母さんがそれだけ惚れ込んでるお父さんってどんな人なんだろうな、素敵な人なんだろうなって、会ってみたかったの。
あたしも紹介したい人がいるから、連れていくね。
ずっと黙ってたのはその人が結婚してる人だったからなんだけど、そっちに行ったらもう関係ないってことにしてもいいよね。それこそ怒られちゃうかもだけど…お願い、許して。
ミサはカバンから取り出した包丁を剛の胸に振り下ろした。
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