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10. ユニット
リオとの食事を終えた翌朝、奏多はスマホの通知音で目を覚ました。画面を見た瞬間、心臓が凍りつく。
SNSには、昨夜の路地裏でリオと歩く自分の姿が鮮明に写し出されていた。
『リオくんの隣にいるイケメン誰!?』
『一般人? それとも新メンバー?』
『どことなく、昔の「奏多」に似ている気がするんだけど……』
憶測は瞬く間に広がり、かつての自分の名前がトレンドに浮上し始めていた。
「……どうしよう、バレる。僕の居場所がなくなっちゃう……」
ガタガタと震え、リビングで頭を抱える奏多。そこに、騒動の張本人であるリオから電話がかかってきた。
『奏多さん、写真見ました? すごい反響ですね!』
「リオくん、これ笑い事じゃないよ……。僕、もう外を歩けない」
『いいじゃないですか、この際。奏多さん、これをおきに芸能界に戻りましょうよ! 僕とユニットを組めば、みんな絶対喜びます。僕が奏多さんを、もう一度最高のステージへ連れていきますから!』
悪びれる様子もなく、むしろ好機だと断言するリオの提案に、奏多は眩暈を覚えた。
※※※※※
「……その話、俺は認めないよ」
冷え切った声がリビングに響いた。振り返ると、スマホを握りしめた颯真が、ふてくされた顔で僕をみていた。
「颯真……」
「奏多。そのリオっていう子、君を利用しようとしているだけじゃないのか? こんな写真まで撮らせて……」
「違うよ、リオくんはただ僕を元気づけようとしてくれてるだけで……」
「俺は嫌だ!」
颯真が奏多の肩を掴み、強く引き寄せた。穏やかな彼がこれほど感情を剥き出しにするのは、グループ時代でも見たことがなかった。
「あんな子供に君を渡したくない。ユニットを組むなら、俺とにしてよ。……俺は、ずっと君の隣に戻りたかったのに。君がいた場所は、俺の隣じゃないの?」
「颯真、距離が近いって……!」
「近くないと、またどこかへ逃げるじゃん。 リオくんには悪いけど、奏多を甘やかすのは俺の役目だ。……ねえ、奏多。あの子の提案なんて忘れて。俺と一緒にユニットを組もうよ」
拡散された写真の波紋は広がり続け、ついにその話はかつての仲間たちの元へも届いた。
数日後、事務所の打ち合わせ室のドアが叩かれる。打ち合わせは終わり、家に帰るため迎えに来てくれた颯真と、ご飯に行こうと誘ってくれたリオが鉢合わせてしまった日のことだ。不穏な空気を背に扉をあけるとそこに立っていたのは、今や国民的俳優となった海里と、バラエティで見ない日はない他のメンバーたちだった。
「……奏多、やっぱりお前だったんだな」
海里の落ち着いた、けれど感極まったような声に、奏多は立ち尽くした。数年ぶりの再会。しかし、彼らはもう「あの頃」の少年たちではない。それぞれが守るべきスタッフや、確立された自分の居場所を持っている。
「みんな、ごめん……。僕のせいでグループが……」
「もういいんだ、奏多。俺たちは今、それぞれの場所で頑張ってる。でも、お前がまた音楽の世界に戻ってこようとしてるなら、それは全力で応援したい」
海里は優しく微笑んだ。しかし、現実的な問題が立ちはだかる。彼らには今の仕事があり、すぐに「5人で再結成」とはいかないのが現状だった。
そこで、海里が提案した。
「奏多がまた表舞台に慣れるまで、まずは今の話題性を活かして、颯真とリオくん、奏多の3人で期間限定のユニットを組んでみたらどうだ?」
その提案に、部屋の空気が一瞬で凍りついた。颯真もリオ君も2人とも不満そうだった。
「……3人で? 冗談じゃない」
口を開いたのは颯真だった。彼は奏多の肩を抱き寄せ、リオを鋭く牽制する。
「俺は奏多と2人がいい。ようやく再会できたんだし他の誰にも邪魔されず、俺たちでもう一度作り上げたい」
「僕だって同じ意見です!」
リオが負けじと食ってかかる。
「僕が奏多さんを見つけ出したんです。奏多さんの新しい魅力を一番引き出せるのは、颯真さんじゃなくて僕です。ユニットを組むなら、僕と奏多さんの2人が最高に決まってます!」
「リオくん、君は自分のグループがあるだろう」
「そんなの、兼任でもなんでもしますよ! 奏多さんの隣は譲りません!」
さっきまでのメンバーとの感動的な再会の空気はどこへやら、奏多を巡る二人の火花が激しく散り始める。
「ちょ、ちょっと二人とも……」
困惑する奏多を置き去りにして、独占欲を隠そうともしない颯真と、真っ直ぐすぎる愛をぶつけるリオ。かつてのリーダーである海里は、その光景を呆れたように、けれどどこか楽しそうに眺めていた。
「……奏多、前途多難だな」
海里の苦笑混じりの言葉が、騒がしくなった部屋に響いた。
SNSには、昨夜の路地裏でリオと歩く自分の姿が鮮明に写し出されていた。
『リオくんの隣にいるイケメン誰!?』
『一般人? それとも新メンバー?』
『どことなく、昔の「奏多」に似ている気がするんだけど……』
憶測は瞬く間に広がり、かつての自分の名前がトレンドに浮上し始めていた。
「……どうしよう、バレる。僕の居場所がなくなっちゃう……」
ガタガタと震え、リビングで頭を抱える奏多。そこに、騒動の張本人であるリオから電話がかかってきた。
『奏多さん、写真見ました? すごい反響ですね!』
「リオくん、これ笑い事じゃないよ……。僕、もう外を歩けない」
『いいじゃないですか、この際。奏多さん、これをおきに芸能界に戻りましょうよ! 僕とユニットを組めば、みんな絶対喜びます。僕が奏多さんを、もう一度最高のステージへ連れていきますから!』
悪びれる様子もなく、むしろ好機だと断言するリオの提案に、奏多は眩暈を覚えた。
※※※※※
「……その話、俺は認めないよ」
冷え切った声がリビングに響いた。振り返ると、スマホを握りしめた颯真が、ふてくされた顔で僕をみていた。
「颯真……」
「奏多。そのリオっていう子、君を利用しようとしているだけじゃないのか? こんな写真まで撮らせて……」
「違うよ、リオくんはただ僕を元気づけようとしてくれてるだけで……」
「俺は嫌だ!」
颯真が奏多の肩を掴み、強く引き寄せた。穏やかな彼がこれほど感情を剥き出しにするのは、グループ時代でも見たことがなかった。
「あんな子供に君を渡したくない。ユニットを組むなら、俺とにしてよ。……俺は、ずっと君の隣に戻りたかったのに。君がいた場所は、俺の隣じゃないの?」
「颯真、距離が近いって……!」
「近くないと、またどこかへ逃げるじゃん。 リオくんには悪いけど、奏多を甘やかすのは俺の役目だ。……ねえ、奏多。あの子の提案なんて忘れて。俺と一緒にユニットを組もうよ」
拡散された写真の波紋は広がり続け、ついにその話はかつての仲間たちの元へも届いた。
数日後、事務所の打ち合わせ室のドアが叩かれる。打ち合わせは終わり、家に帰るため迎えに来てくれた颯真と、ご飯に行こうと誘ってくれたリオが鉢合わせてしまった日のことだ。不穏な空気を背に扉をあけるとそこに立っていたのは、今や国民的俳優となった海里と、バラエティで見ない日はない他のメンバーたちだった。
「……奏多、やっぱりお前だったんだな」
海里の落ち着いた、けれど感極まったような声に、奏多は立ち尽くした。数年ぶりの再会。しかし、彼らはもう「あの頃」の少年たちではない。それぞれが守るべきスタッフや、確立された自分の居場所を持っている。
「みんな、ごめん……。僕のせいでグループが……」
「もういいんだ、奏多。俺たちは今、それぞれの場所で頑張ってる。でも、お前がまた音楽の世界に戻ってこようとしてるなら、それは全力で応援したい」
海里は優しく微笑んだ。しかし、現実的な問題が立ちはだかる。彼らには今の仕事があり、すぐに「5人で再結成」とはいかないのが現状だった。
そこで、海里が提案した。
「奏多がまた表舞台に慣れるまで、まずは今の話題性を活かして、颯真とリオくん、奏多の3人で期間限定のユニットを組んでみたらどうだ?」
その提案に、部屋の空気が一瞬で凍りついた。颯真もリオ君も2人とも不満そうだった。
「……3人で? 冗談じゃない」
口を開いたのは颯真だった。彼は奏多の肩を抱き寄せ、リオを鋭く牽制する。
「俺は奏多と2人がいい。ようやく再会できたんだし他の誰にも邪魔されず、俺たちでもう一度作り上げたい」
「僕だって同じ意見です!」
リオが負けじと食ってかかる。
「僕が奏多さんを見つけ出したんです。奏多さんの新しい魅力を一番引き出せるのは、颯真さんじゃなくて僕です。ユニットを組むなら、僕と奏多さんの2人が最高に決まってます!」
「リオくん、君は自分のグループがあるだろう」
「そんなの、兼任でもなんでもしますよ! 奏多さんの隣は譲りません!」
さっきまでのメンバーとの感動的な再会の空気はどこへやら、奏多を巡る二人の火花が激しく散り始める。
「ちょ、ちょっと二人とも……」
困惑する奏多を置き去りにして、独占欲を隠そうともしない颯真と、真っ直ぐすぎる愛をぶつけるリオ。かつてのリーダーである海里は、その光景を呆れたように、けれどどこか楽しそうに眺めていた。
「……奏多、前途多難だな」
海里の苦笑混じりの言葉が、騒がしくなった部屋に響いた。
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