虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

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職業 《 勇者 》

67話 伝説への装備

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 オーク討伐作戦当日、集合予定の午後10時ごろ。
 現在まだオーカスというモンスターもサブラーキャというラードロも出ている情報はなく、オークたちも自ら攻撃してくる様子もないので睨み合い状態が続いていた。

 本体が攻撃している間に別動隊が各砦に忍び込んで、ラードロの情報収集、砦にこもるオークを闇に乗じて倒し、あわよくばオーカス出現の阻止する狙いがあるため今作戦は夜に決行されることになった。
 そうでもしなければ数の多いオーク相手に少なくない被害と、主戦力が足止めされた間に弱いところを突かれ、最悪作戦失敗なんてこともありうるのだ。


 そしてカーミラ率いるメーシャたち有志団は、実力はあるが冒険者にも騎士にも兵士にも所属していない者、オークから被害を受け立ち上がった者、オークの情報を聞き個人で遠くから駆けつけてくれた者と、団自体の実力もあり意志こそ同じであるが集団行動に慣れていない者が多い。
 なので重要拠点を攻めるみたいな作戦に直接関わる行動は取らず、基本的には小さな拠点を減らしていき、不利な状況になっている隊が出たら助け、攻めきれそうな所が出ればはさみうち、逆にはさみうちされそうになったり強い個体が出たりしたら担うといった"遊撃隊"のような立ち位置である。


 灼熱さんもいるデイビッドのアレッサンドリーテギルド隊は2隊に分け、ひとつをアレッサンドリーテに置き待ちの守護及び予備兵、もうひとつを街近くにある大きな拠点を攻める事になっている。

 トゥルケーゼギルド隊はワルターが覇王の宝石を持っていることもあり、本隊がオークの上位種"オークロード"がいるという1番大きな拠点を攻める。
 そして、分隊はアレッサンドリーテ兵と協力して周辺拠点を順に落としていく。

 ちなみに、オークロードはオークキングのフィジカルをそのままに、知能の高いニンゲンやエルフにも匹敵する頭脳を持ち、魔法も自由自在に扱うことができる、オーカスを除いたオーク系モンスターの最上位種と言われている。


 * * * * *


 とある山のふもと、木々で目立ちにくくなっている所ににテント、テーブルと椅子、結界だけ張られた仮拠点にて。

「──はい。トゥルケーゼギルドアレッサンドリーテ兵の隊が……はい、10分後ですね。分かりました。では、こちらはそれに合わせて南の小さな拠点をふたつ同時に攻略しておきます。では……」

 他の隊と情報共有と次の動きを確認して、カーミラがスマホ型魔機パルトネルを切った。

「10分後? あの木の柵で囲まれた砦だよね。転移陣を近くに設置してるし2分前くらいに出発だね」

 メーシャがスマホで時間を、テーブルに置いてある立体ホログラム地図で場所を確認する。

「少し時間がありますね。まあ、何かするには短いですけど。……緊張してきました」

 とうとう始まる大きな作戦を前に、ヒデヨシが緊張で少し震えていた。

『ヒデヨシはラードロに手も足も出ないってこともないし、オークに遅れをとることもないし、最悪メーシャにぶん投げりゃ良いんだから気にし過ぎるな』

 デウスがヒデヨシをはげます。
 ヒデヨシはラードロに対して特効がある上に実力もあるので、メーシャに続いて相手を選ばず戦える。それに、メーシャだけでなくカーミラとサンディーもいるので、仮にしくじってもフォローは完璧だ。

「キュイキィ~」

 緊張するヒデヨシとは裏腹に、サンディーはわくわくで震えていた。ゴーレムでもサイクロプスでも鉱石でも草でも何でも食べるサンディーにとってはビュッフェか何かと感じているのだろうか?
 それとも日常とは違った雰囲気にお祭りのような感覚をおぼえているのだろうか。

「メーシャちゃん、今いいかな?」

 カーミラが真剣な面持ちでメーシャに向き直った。

「ん、大丈夫よ? トイレも行ったしお腹も減ってないし、ヒマだよ」

「前に渡したいモノがあるって伝えたでしょ? それを今の内に渡しておこうかと……」

「イイけど、装備的なのだっけ? 今装備して馴染むかなあ?」

 メーシャはプレゼント自体はめちゃくちゃ嬉しいのだが、今日のために仕上げてきたので、装備を増やしたことでバランスが崩れるのを懸念しているのだ。

「ふふふっ。大丈夫だと思うよ」

 カーミラは自信ありげに笑うと、テントの裏に隠してあった黒い木の箱を取ってきた。

「これは?」

 よく見るとその木箱は金で装飾してあったり、魔法陣でロックがかかっていたり、木自体も魔法のかかった木でミスリル級の硬度があり、そうとうな高級品であることは想像に難くない。

「開けてみて」

 カーミラは短く答え、それ以上は語らない。

「でも、ロックかかってるんだよね?」

 メーシャが首をかしげるも、カーミラは黙って開けるように促す。

「お嬢様、開けてみましょう」

「……そだね。じゃあ……」

 メーシャはヒデヨシにも促され、カーミラの期待の目を背負い、オヤツの焼きタコをもう食べているサンディーを横目に、目の前の木箱に手をかけた。すると──

「お、おお!?」

 メーシャの手が触れた途端、木箱に描かれた魔法陣が歯車のように回転して、カチカチと小気味良い音を立てながら少しずつ解除されていく。この異世界感マシマシな光景、ゲーム好きのメーシャが嫌いなわけがないのだ。
 そして10秒ほど経ち、100段階のキーが解除されて、とうとう木箱がその口を開けた。

 ちなみに、魔法陣は使い切りではなく、メーシャが魔力を注ぐとまたロックできるようになっている。

「まぶしっ! ……金属のブーツ?」

 木箱に入っていたのは、柔らかそうな布に包まれた膝まで守れる金属でできたグリーブブーツだった。
 
「……奮発しました」

 カーミラが照れ顔で言うは、素材の違いにうといメーシャでもその輝きで察することができた。
 一見黄金のように見えるが、その輝きは角度によって表情を変え、赤や黄色のような褐色系に見えることもあれば、青や緑のように見えることもある。影もどことなく紫に光っているように見え、まるで虹でもまとっているかのようだった。

『オリハルコンか……!』

「オリハルコン? マジ!?」

 貴重な金属を使ってそうだと思っていたメーシャだったが、ゲームでいう最終盤で手に入るようなオリハルコン武器がまさか手に入るとは思っていなかったのだ。

「……かつて魔王を封印した勇者ゼプトはオリハルコンの剣を使っていたとか。そして、メーシャちゃんも勇者。……なのにもかかわらず専用の装備が無いのは、そもそも誰も用意していないのはおかしいと思って、私が貯金をはたいてオリハルコンを取り寄せ、メーシャちゃんの足の形と戦闘データを分析して、アレッサンドリーテ1番の鍛治職人に作って頂きました。……私的財産は無くなりましたけど、最高のものができたと自負してるよ」

「ぉおおおお!! イイの!? あーしのために?! マジ感謝なんだけど~!!」

 メーシャは自分のためにここまでしてくれたカーミラに感動して、ブーツと一緒にカーミラに抱きついた。

「いえいえ、どういたしまして」

「さっそくはいてみるね!」

「どうぞ!」

「……めっちゃはき心地イイんだけど! てか、ピッタリだし支えられる感じがするし、むしろ裸足より足が軽く感じる。あと……もしかしてだけど、このブーツあーしの魔力めちゃ通りやすくなってる? はきなれた靴より馴染むもん」

「ご明察。メーシャちゃんの魔力の波長を分析して、メーシャちゃん以外の魔力は通しにくく、メーシャちゃんの魔力伝導率は99.999999999%以上にまで引き上げてるし、なんなら魔法で通した魔力の出力が上昇するようにできてるよ。
 しかも、硬度があるのに柔軟性もあって壊れにくいのはもちろんのこと、戦闘で破損してもメーシャちゃんが魔力を流せばいくらでも完全補修可能。そして、使えば使うほどオリハルコンがメーシャちゃんの魔力と生命力に適応して、魔法攻撃力も物理的な攻撃力も上昇するという、神話の逸品にも負けない代物だよ」

 至れりつくせりの、まさに勇者メーシャ専用武器という名に相応しいブーツであった。

「すごっ! あと5分弱あるし、ちょっとその辺走ってくんね! なんかブーツをはいたら足が軽いし動きたくてしょうがないんだ」

「うん、いってらっしゃい! あんまり遠くには行っちゃダメだよ」

「分かってるって! いってきま~すっ」


 ●     ●     ●


 そんなふたりの喜びにあふれたかけ合いの裏で、ヒデヨシとデウスが静かに話していた。


「デウスさん……作ってないんですか?」

『……作ってない』

「前の勇者はあるとか」

『勇者選定はな、一応光の王フィオテリーチェとか、炎の王ディアマンテとかの属性の王が、他の属性の王3体以上からチカラを借りてするもんなんだ。公平をきすためにな。
 ちなみに俺様は光と炎、最後に雷の王雷御ライオンからチカラを借りたワケだが…………まあ、話で分かる通り、毎回同じやつがするわけじゃないんだ』

「つまり、前は別の王が選定したから知らなかったってことですか?」

『完全に盲点だった。ウロボロスの装飾がほどこされた世界にひとつだけの武器、それを使ってでんせつを作る勇者。良いよなあ……。創っとけばよかった』

 デウスの声は哀愁をただよわせていた。

「……今からじゃ遅いんですか? その、お嬢様は蹴りが多いから武器は多分カーミラさんのブーツで間に合ってると思いますが、装飾品とか他の部位の防具とか……作るのに時間がかかりすぎるとか、素材回収ができないとかならしょうがないですが」

『今からか…………そ、それもそうだな。時間的にはすぐにできるから良いんだけど、素材は身体がないから難しいんだ。魔石を集めてもらってる手前メーシャにこれ以上負担をかけるわけにもいかないし……』

「僕が集めても良いですよ? サンディーもいますし、手分けして集めてサプライズで作っちゃいましょうよ」

『良いのか?!』

「もちろん」

「キュ? ……キュイ!」

「えっと……そうだ! 宝珠を一個手に入れたらなんか改造するわ! あれは魔石の最高位版にたいなもんだから、きっとおもしれーもんができると思う。だから、それの改造に使うやつ集めてくれよ』

「何がいりますか?」

『プルマルのゼリー質、サイクロプスのツノ、ロックタートルの背中の鉱石、コカトリスの羽。できるだけ多い方がいい。だが、ここからが問題だ。俺様のチカラを扱っているであろうドラゴン=ラードロの、さらにエネルギーが凝縮している部位……だ。できるか?』

「最初の3つは余裕ですね。コカトリスの羽はピヨちゃんのために、巣からたくさん持ってきてますので大丈夫です。でもドラゴン=ラードロの逆鱗ですか……」

 ヒデヨシが少し頭を抱えてしまう。

『難しそうか? それがありゃメーシャの助けになって武具ともかぶらない、おもしれーもんできるんだけど……』

 沈黙が走り空気が重くなってしまう。が、その時。

「キュイ! キィキュキュイキュキュ!」

 タコ足を食べ終えたサンディーから喝が飛んできた。

「…………そうですね! 難しいからって挑戦しない理由にはなりません。やってやりましょう! そして、僕たちでお嬢様の専用アイテムを作りましょう!!」

『おう!!』

「キュ!!」

 こうして、メーシャの知らないところでヒデヨシとデウスとサンディーによる『メーシャ専用アイテム作り作戦』が開始したのだった。

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