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第一章 転生
第06話 名も無き村
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──名もなき村。
敢えて名を付けるなら、この村はそう呼ばれているらしい。人の良さそうな髭の男、ビアードがそう説明してくれた。
「村と呼ぶには余りにも小さいけどな」
もう一人の痩せた色白の男、ミルドが話す。少し寂し気な、自虐的な笑みを浮かべながら。確かに、ようやく見えてきたその村は、余りにも閑散としている。今にも崩れそうな小屋がポツポツと点在し、僅かばかりの田畑が見えるだけだ。村と言うよりも、どちらかと言えば集落。俺が案内されたのは、そういう村だった。
「ビアード、その黒いのは何者だ」
村の入口に差し掛かると、屈強な大男が声をかけて来た。
「よお、ジャンク。『迷いの森』の入口で拾ったんだ。何でもこの坊主、記憶が無いらしくてな。そのまま放っておくのも何なんで、とりあえず連れて来た」
ビアードがそう答えると、ジャンクと呼ばれた大男は顔を顰めた。
「お前はお人好し過ぎる! 幾らまだガキとは言え、他所者を簡単に入れる訳にはいかん。とりあえず、村長に伺いをたてるべきだ」
「そのつもりだよ、ジャンク。ちょうど、今から呼びに行くところだ。心配なら、お前さんも立ち会うがいい」
軽い調子で笑うビアードと、俺を睨み付けながら話すジャンク。対照的な二人に挟まれていると、ミルドが話に割り込んだ。
「落ち着けよ、ジャンク。坊主が可哀想じゃねえか。どうせ今から村長に会うんだ。凄むのは、坊主の話を聞いてからでも遅くないだろ」
ミルドの言葉が効いたのか、ジャンクは大人しく引き下がった。フンッ! と一つ鼻息を鳴らし、この場を立ち去る。おそらく、村長とやらを呼びに向かったのだろう。
「気を悪くしねえでくれな。ジャンクも悪い奴じゃねえんだ。ただ、この村にはああいうタイプはいねえから……。あいつなりに、この村を守ろうと必死なんだよ」
立ち去るジャンクを見つめながら、ビアードはそう語る。他の村人より体も大きく、そして若いジャンク。彼には彼なりに思う所がある様だ。
「別に気にしませんよ、俺は」
中身は三十代だからな、俺も。いちいち、こんな事で腹を立てる程、子供じゃない……つもりだ。
そんな話をしながら暫く待つと、ジャンクが白髪の老人を連れて戻って来た。おそらく、彼がこの村の村長だろう。
「ふぉっふぉっふぉっ。ジャンクから話は聞いたよ、少年。記憶を無くして『迷いの森』を彷徨っていたそうじゃのぉ」
優し気な、しかし厳しさも含んだ良く通る声で、その老人は語りかけて来た。
──しかしこの時、俺の目は、その後ろに立つ一人の少女に釘付になっていた。
敢えて名を付けるなら、この村はそう呼ばれているらしい。人の良さそうな髭の男、ビアードがそう説明してくれた。
「村と呼ぶには余りにも小さいけどな」
もう一人の痩せた色白の男、ミルドが話す。少し寂し気な、自虐的な笑みを浮かべながら。確かに、ようやく見えてきたその村は、余りにも閑散としている。今にも崩れそうな小屋がポツポツと点在し、僅かばかりの田畑が見えるだけだ。村と言うよりも、どちらかと言えば集落。俺が案内されたのは、そういう村だった。
「ビアード、その黒いのは何者だ」
村の入口に差し掛かると、屈強な大男が声をかけて来た。
「よお、ジャンク。『迷いの森』の入口で拾ったんだ。何でもこの坊主、記憶が無いらしくてな。そのまま放っておくのも何なんで、とりあえず連れて来た」
ビアードがそう答えると、ジャンクと呼ばれた大男は顔を顰めた。
「お前はお人好し過ぎる! 幾らまだガキとは言え、他所者を簡単に入れる訳にはいかん。とりあえず、村長に伺いをたてるべきだ」
「そのつもりだよ、ジャンク。ちょうど、今から呼びに行くところだ。心配なら、お前さんも立ち会うがいい」
軽い調子で笑うビアードと、俺を睨み付けながら話すジャンク。対照的な二人に挟まれていると、ミルドが話に割り込んだ。
「落ち着けよ、ジャンク。坊主が可哀想じゃねえか。どうせ今から村長に会うんだ。凄むのは、坊主の話を聞いてからでも遅くないだろ」
ミルドの言葉が効いたのか、ジャンクは大人しく引き下がった。フンッ! と一つ鼻息を鳴らし、この場を立ち去る。おそらく、村長とやらを呼びに向かったのだろう。
「気を悪くしねえでくれな。ジャンクも悪い奴じゃねえんだ。ただ、この村にはああいうタイプはいねえから……。あいつなりに、この村を守ろうと必死なんだよ」
立ち去るジャンクを見つめながら、ビアードはそう語る。他の村人より体も大きく、そして若いジャンク。彼には彼なりに思う所がある様だ。
「別に気にしませんよ、俺は」
中身は三十代だからな、俺も。いちいち、こんな事で腹を立てる程、子供じゃない……つもりだ。
そんな話をしながら暫く待つと、ジャンクが白髪の老人を連れて戻って来た。おそらく、彼がこの村の村長だろう。
「ふぉっふぉっふぉっ。ジャンクから話は聞いたよ、少年。記憶を無くして『迷いの森』を彷徨っていたそうじゃのぉ」
優し気な、しかし厳しさも含んだ良く通る声で、その老人は語りかけて来た。
──しかしこの時、俺の目は、その後ろに立つ一人の少女に釘付になっていた。
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