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第二章 人間の国
第27話 世界の成り立ち
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「──だから、あの水晶では固有能力を見破れないと思ったのか……」
一部の混血者だけに密やかに伝わる、この世界の成り立ち。俺は、アスカから話を聞き終えて呟いた。
「幾ら、ギルドは血を気にしないと言っても、あくまでそれは建前。根底は変わらない。この世界では、混血として生まれた者以外は、全て純血教の洗礼を受けるから」
純血教に入信している事が、当たり前。それが、この世界の常識。だからこそ、純血教の者が作ったあの水晶では、混血の能力は見破れない筈。アスカは、そう考えていたのだろう。なるほど、確かに一理ある。しかし……
「なら、純血者にも固有持ちがいるのは何故なんだ?」
混血者のみに授けられた能力なら、純血者にそれを持つ者がいるのはおかしい。
「純血者の固有持ち。それは、時の権力者に混血の者がいたから」
どういう事だ?
俺が首を傾げていると、アスカは察した様に付け加えた。
「数百年前の王家……その中に、亜人と結ばれた姫がいたの。当然、当時の王は、民からの叫弾と教会からの圧力によって、その座を奪われた。しかも、自らの弟に当たる一族に。それが、今の王家の祖先。そして、それ以降、混血者への弾圧は更に酷い物になった──」
アスカは、更に続ける。
「──だけど、王座を奪われた兄の一族は、何故か、重罪を免れた。元王家の者を処刑する訳にはいかなかったのか、それとも、何か政治的な理由があったのかはわからない。でも、その一族は王座を剥奪されただけで、貴族としてこの国に残った。そして、その末裔……今の王家に連なる者だけが、固有能力を持つ事を許された。純血教に改信させた元王の一族の、姫が身籠ったその子供を利用して……」
つまり、当時の王家は、兄の一族と血を交えた訳か。固有能力を、合法的に手に入れる為に。
「と言う事は、固有持ちは全て、王家に連なる一族の者と言う事か?」
「そう。純血を名乗る人間で、固有持ちは王家の血を引く者だけに許された特権……」
血は薄くなれど、混血者との間に出来た子供も、また混血者。固有能力を授かって生まれて来る可能性は高い。なるほど、上手く考えた物だ。
これなら、異種族と交わらなくても、固有能力を得る事が出来る。そして、教会や民を敵に回す事も無い。その上、純血教の信者でありながら、王族だけがその能力を独占出来る。
ようやく、全てが繋がった。
そりゃあ、アリスも俺達が王族だなんて思わない。だからこそ、そこまで厳重に固有能力の有無を調べなかったんだ。俺達を、純血教の信者だと決めつけていたから。
そして、この世界の人間について、その常識や考え方についても理解した。純血と混血、其々の立場と、その理由も。
「元凶は『純血の神』、そして『純血教』か……」
今の俺も、この世界では混血者だ。しかも、悪魔の子と言う、不名誉な呼び名のオマケ付き。
(混血者への偏見や差別……。この世界で幸せに暮らす為には、この辺りを解決する必要があるのかも知れないな……)
俺やアスカだけでは無い。名もなき村で、世話になった連中。どうせなら、彼等の生活ももう少しまともな物にしてやりたい。
俺は、朧気にそんな事を考えながら、この日は久しぶりのベッドで眠りについた──。
一部の混血者だけに密やかに伝わる、この世界の成り立ち。俺は、アスカから話を聞き終えて呟いた。
「幾ら、ギルドは血を気にしないと言っても、あくまでそれは建前。根底は変わらない。この世界では、混血として生まれた者以外は、全て純血教の洗礼を受けるから」
純血教に入信している事が、当たり前。それが、この世界の常識。だからこそ、純血教の者が作ったあの水晶では、混血の能力は見破れない筈。アスカは、そう考えていたのだろう。なるほど、確かに一理ある。しかし……
「なら、純血者にも固有持ちがいるのは何故なんだ?」
混血者のみに授けられた能力なら、純血者にそれを持つ者がいるのはおかしい。
「純血者の固有持ち。それは、時の権力者に混血の者がいたから」
どういう事だ?
俺が首を傾げていると、アスカは察した様に付け加えた。
「数百年前の王家……その中に、亜人と結ばれた姫がいたの。当然、当時の王は、民からの叫弾と教会からの圧力によって、その座を奪われた。しかも、自らの弟に当たる一族に。それが、今の王家の祖先。そして、それ以降、混血者への弾圧は更に酷い物になった──」
アスカは、更に続ける。
「──だけど、王座を奪われた兄の一族は、何故か、重罪を免れた。元王家の者を処刑する訳にはいかなかったのか、それとも、何か政治的な理由があったのかはわからない。でも、その一族は王座を剥奪されただけで、貴族としてこの国に残った。そして、その末裔……今の王家に連なる者だけが、固有能力を持つ事を許された。純血教に改信させた元王の一族の、姫が身籠ったその子供を利用して……」
つまり、当時の王家は、兄の一族と血を交えた訳か。固有能力を、合法的に手に入れる為に。
「と言う事は、固有持ちは全て、王家に連なる一族の者と言う事か?」
「そう。純血を名乗る人間で、固有持ちは王家の血を引く者だけに許された特権……」
血は薄くなれど、混血者との間に出来た子供も、また混血者。固有能力を授かって生まれて来る可能性は高い。なるほど、上手く考えた物だ。
これなら、異種族と交わらなくても、固有能力を得る事が出来る。そして、教会や民を敵に回す事も無い。その上、純血教の信者でありながら、王族だけがその能力を独占出来る。
ようやく、全てが繋がった。
そりゃあ、アリスも俺達が王族だなんて思わない。だからこそ、そこまで厳重に固有能力の有無を調べなかったんだ。俺達を、純血教の信者だと決めつけていたから。
そして、この世界の人間について、その常識や考え方についても理解した。純血と混血、其々の立場と、その理由も。
「元凶は『純血の神』、そして『純血教』か……」
今の俺も、この世界では混血者だ。しかも、悪魔の子と言う、不名誉な呼び名のオマケ付き。
(混血者への偏見や差別……。この世界で幸せに暮らす為には、この辺りを解決する必要があるのかも知れないな……)
俺やアスカだけでは無い。名もなき村で、世話になった連中。どうせなら、彼等の生活ももう少しまともな物にしてやりたい。
俺は、朧気にそんな事を考えながら、この日は久しぶりのベッドで眠りについた──。
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