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第一章 転生編
第03話 憑依転生
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「誰なんですかっ!?」
そうだ……俺は今、この子に取り憑いているんだった。すっかり、この子の存在を忘れていた……。まだ騒いでたのか。しかし、どうやら女神との会話は、この子には聞こえていなかったらしい。
そう言えば、もうすぐ死ぬ運命なんだよな……この子。
俺が再生する為とは言え、死ぬのを待ってるみたいで何だか居たたまれない。この体もいずれ、俺の体になるんだよな……そう思うと、なんだか少し申し訳ない気持ちになる。暫くは同じ体に同居するんだし、挨拶くらいはしておこう。気味悪がられるかも知れないけど。
(よぉ)
「──っ!?」
反応した。ちゃんと聞こえてるみたいだ。
「やっぱり誰か居るんですね?」
この子も、さっきよりは少し落ち着いて来たみたいだな……これなら、何とか会話になるかも知れない。
(あぁ……すまん。さっきはちょっと取り込んでてな)
「……出て来て下さい。これは何かの術ですか?」
この子にも俺と同じ様に、頭の中に声が響いているんだろうか。だけど、この子には何かの術か魔法のせいだと思われているみたいだ。まあ、普通は魂に憑依されているなんて、考えたくも無いだろうしな……
(悪いけどこれ、術でも何でもないんだわ。俺、君の魂ん中にいるみたいだから)
俺は、出来るだけ普通に話しかけてみた。
「……どういう事ですか?」
少し戸惑っているみたいだが、彼女はなんとか受け答えして来る。うん……何とか会話にはなりそうだ。
(どうもこうも、そのまんまの意味だよ。俺、君の魂の中に転生されて来ちゃったみたいでさ)
「……貴方は悪魔か何かですか? 私をどうするおつもりですか?」
信じてくれない……ま、そりゃそうだ。
気丈に振る舞っているみたいだけど、少し脅えた感情の波が、俺には直接伝わって来てた。
(そんなに脅えなくても何にもしないよ。それに俺は人間だ。元、だけどな。どうやら、死んで魂だけ君の中に転生されちまったみたいなんだ。何でなのかは……わからん)
何となくだけど、自分がもうすぐ死ぬ運命だと言う事を、この子には黙っておく事にした。てか、そんな重い事、軽々しく言えないし。
「にわかには信じ難いのですが……何故か、嘘は言っていない様な気がします。全て……では無い様ですが」
この子にも、俺の感情の波みたいな物が流れてる様だな……だが、嘘を言っていないだけは伝わっているらしい。これなら信じて貰えそうだ。だけど……こりゃあ、いよいよあからさまな嘘は通用しなさそうだな。
(信じてくれて嬉しいよ。正直、俺も突然の事で……困惑している。不思議な感覚なんだが……嘘を言っていない事は分かるだろ?)
「……はい。そうですね、分かります。何となくですけど。確かに、貴方の感情が伝わって来ます。貴方が悪い人じゃない事も…何となくですが分かります。それで……転生って何ですか? ずっとこのままと言う事ですか?」
とりあえず、悪魔じゃなくて人扱いはしてくれるみたいだ。さて……どこまで話そうか。
俺は、この子がもうすぐ死ぬ運命である事だけは伏せて、死んだ後に体が再生する事や、その後は逆に、俺の魂の中で眠って貰う事等、知っている事を全て話した。どうせ嘘はつけないし、話してしまった方が良いと思ったからだ。
(──という訳だ。つまり……すまんが、死ぬまで一緒だ)
「そうですか……貴方も大変だったんですね。私も……最初はびっくりしましたけど、少し落ち着いて貴方と話してみたら、何だか思ったよりも嫌じゃないみたいです……この状況が」
(意外と順応性が高いんだな。普通は嫌がると思ったんだが)
普通は自分の中に他人がいるなんて、気味が悪いと思うんだけど……意外と天然なんだろうか?
「自分でも少し驚いていますけど……私、お話しできるお友達がいないんで……ちょっと嬉しいみたいなんです」
──どうやら本音みたいだ。
感情が筒抜けだから何となく分かる。本当に少し喜んでいる。しかし……まさか、この子も俺と同じぼっちとはな。
その気持ち……分かるぞ。話し相手が欲しかったんだろ? 映画の感想とか、アニメの薀蓄だとか……俺だって友人は要らんとか強がってはいたが、寂しく無かった訳じゃ無い。本当に信じられる人間がいなかっただけなんだ……って。いかん、いかん。前世の悲しい記憶が甦って来た。
(そうか……受入れてくれて何よりだ。これからよろしく頼む。俺は、真人。瀬上真人だ)
「よ、よろしくお願いします……」
彼女は、少し恥ずかし気にそう答えると、呟く様な声で名乗った。
「──私は……ゆ、雪といいます」
そうだ……俺は今、この子に取り憑いているんだった。すっかり、この子の存在を忘れていた……。まだ騒いでたのか。しかし、どうやら女神との会話は、この子には聞こえていなかったらしい。
そう言えば、もうすぐ死ぬ運命なんだよな……この子。
俺が再生する為とは言え、死ぬのを待ってるみたいで何だか居たたまれない。この体もいずれ、俺の体になるんだよな……そう思うと、なんだか少し申し訳ない気持ちになる。暫くは同じ体に同居するんだし、挨拶くらいはしておこう。気味悪がられるかも知れないけど。
(よぉ)
「──っ!?」
反応した。ちゃんと聞こえてるみたいだ。
「やっぱり誰か居るんですね?」
この子も、さっきよりは少し落ち着いて来たみたいだな……これなら、何とか会話になるかも知れない。
(あぁ……すまん。さっきはちょっと取り込んでてな)
「……出て来て下さい。これは何かの術ですか?」
この子にも俺と同じ様に、頭の中に声が響いているんだろうか。だけど、この子には何かの術か魔法のせいだと思われているみたいだ。まあ、普通は魂に憑依されているなんて、考えたくも無いだろうしな……
(悪いけどこれ、術でも何でもないんだわ。俺、君の魂ん中にいるみたいだから)
俺は、出来るだけ普通に話しかけてみた。
「……どういう事ですか?」
少し戸惑っているみたいだが、彼女はなんとか受け答えして来る。うん……何とか会話にはなりそうだ。
(どうもこうも、そのまんまの意味だよ。俺、君の魂の中に転生されて来ちゃったみたいでさ)
「……貴方は悪魔か何かですか? 私をどうするおつもりですか?」
信じてくれない……ま、そりゃそうだ。
気丈に振る舞っているみたいだけど、少し脅えた感情の波が、俺には直接伝わって来てた。
(そんなに脅えなくても何にもしないよ。それに俺は人間だ。元、だけどな。どうやら、死んで魂だけ君の中に転生されちまったみたいなんだ。何でなのかは……わからん)
何となくだけど、自分がもうすぐ死ぬ運命だと言う事を、この子には黙っておく事にした。てか、そんな重い事、軽々しく言えないし。
「にわかには信じ難いのですが……何故か、嘘は言っていない様な気がします。全て……では無い様ですが」
この子にも、俺の感情の波みたいな物が流れてる様だな……だが、嘘を言っていないだけは伝わっているらしい。これなら信じて貰えそうだ。だけど……こりゃあ、いよいよあからさまな嘘は通用しなさそうだな。
(信じてくれて嬉しいよ。正直、俺も突然の事で……困惑している。不思議な感覚なんだが……嘘を言っていない事は分かるだろ?)
「……はい。そうですね、分かります。何となくですけど。確かに、貴方の感情が伝わって来ます。貴方が悪い人じゃない事も…何となくですが分かります。それで……転生って何ですか? ずっとこのままと言う事ですか?」
とりあえず、悪魔じゃなくて人扱いはしてくれるみたいだ。さて……どこまで話そうか。
俺は、この子がもうすぐ死ぬ運命である事だけは伏せて、死んだ後に体が再生する事や、その後は逆に、俺の魂の中で眠って貰う事等、知っている事を全て話した。どうせ嘘はつけないし、話してしまった方が良いと思ったからだ。
(──という訳だ。つまり……すまんが、死ぬまで一緒だ)
「そうですか……貴方も大変だったんですね。私も……最初はびっくりしましたけど、少し落ち着いて貴方と話してみたら、何だか思ったよりも嫌じゃないみたいです……この状況が」
(意外と順応性が高いんだな。普通は嫌がると思ったんだが)
普通は自分の中に他人がいるなんて、気味が悪いと思うんだけど……意外と天然なんだろうか?
「自分でも少し驚いていますけど……私、お話しできるお友達がいないんで……ちょっと嬉しいみたいなんです」
──どうやら本音みたいだ。
感情が筒抜けだから何となく分かる。本当に少し喜んでいる。しかし……まさか、この子も俺と同じぼっちとはな。
その気持ち……分かるぞ。話し相手が欲しかったんだろ? 映画の感想とか、アニメの薀蓄だとか……俺だって友人は要らんとか強がってはいたが、寂しく無かった訳じゃ無い。本当に信じられる人間がいなかっただけなんだ……って。いかん、いかん。前世の悲しい記憶が甦って来た。
(そうか……受入れてくれて何よりだ。これからよろしく頼む。俺は、真人。瀬上真人だ)
「よ、よろしくお願いします……」
彼女は、少し恥ずかし気にそう答えると、呟く様な声で名乗った。
「──私は……ゆ、雪といいます」
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