憑依転生〜脳内美少女と死神と呼ばれた転生者

真木悔人

文字の大きさ
4 / 61
第一章 転生編

第03話 憑依転生

しおりを挟む
「誰なんですかっ!?」


 そうだ……俺は今、この子に取り憑いているんだった。すっかり、この子の存在を忘れていた……。まだ騒いでたのか。しかし、どうやら女神ファラシエルとの会話は、この子には聞こえていなかったらしい。

 そう言えば、もうすぐ死ぬ運命なんだよな……この子。

 俺が再生する為とは言え、死ぬのを待ってるみたいで何だか居たたまれない。この体もいずれ、俺の体になるんだよな……そう思うと、なんだか少し申し訳ない気持ちになる。暫くは同じ体に同居するんだし、挨拶くらいはしておこう。気味悪がられるかも知れないけど。

(よぉ)

「──っ!?」

 反応した。ちゃんと聞こえてるみたいだ。

「やっぱり誰か居るんですね?」

 この子も、さっきよりは少し落ち着いて来たみたいだな……これなら、何とか会話になるかも知れない。

(あぁ……すまん。さっきはちょっと取り込んでてな)

「……出て来て下さい。これは何かの術ですか?」

 この子にも俺と同じ様に、頭の中に声が響いているんだろうか。だけど、この子には何かの術か魔法のせいだと思われているみたいだ。まあ、普通は魂に憑依されているなんて、考えたくも無いだろうしな……

(悪いけどこれ、術でも何でもないんだわ。俺、君の魂ん中にいるみたいだから)

 俺は、出来るだけ普通に話しかけてみた。

「……どういう事ですか?」

 少し戸惑っているみたいだが、彼女はなんとか受け答えして来る。うん……何とか会話にはなりそうだ。

(どうもこうも、そのまんまの意味だよ。俺、君の魂の中に転生されて来ちゃったみたいでさ)

「……貴方は悪魔か何かですか? 私をどうするおつもりですか?」

 信じてくれない……ま、そりゃそうだ。

 気丈に振る舞っているみたいだけど、少し脅えたが、俺には直接伝わって来てた。

(そんなに脅えなくても何にもしないよ。それに俺は人間だ。元、だけどな。どうやら、死んで魂だけ君の中に転生されちまったみたいなんだ。何でなのかは……わからん)

 何となくだけど、自分がもうすぐ死ぬ運命だと言う事を、この子には黙っておく事にした。てか、そんな重い事、軽々しく言えないし。

「にわかには信じ難いのですが……何故か、嘘は言っていない様な気がします。全て……では無い様ですが」

 この子にも、俺のみたいな物が流れてる様だな……だが、嘘を言っていないだけは伝わっているらしい。これなら信じて貰えそうだ。だけど……こりゃあ、いよいよあからさまな嘘は通用しなさそうだな。

(信じてくれて嬉しいよ。正直、俺も突然の事で……困惑している。不思議な感覚なんだが……嘘を言っていない事は分かるだろ?)

「……はい。そうですね、分かります。何となくですけど。確かに、貴方の感情が伝わって来ます。貴方が悪い人じゃない事も…何となくですが分かります。それで……転生って何ですか? ずっとこのままと言う事ですか?」

 とりあえず、悪魔じゃなくて人扱いはしてくれるみたいだ。さて……どこまで話そうか。

 俺は、この子がもうすぐ死ぬ運命である事だけは伏せて、死んだ後に体が再生する事や、その後は逆に、俺の魂の中で眠って貰う事等、知っている事を全て話した。どうせ嘘はつけないし、話してしまった方が良いと思ったからだ。

(──という訳だ。つまり……すまんが、死ぬまで一緒だ)

「そうですか……貴方も大変だったんですね。私も……最初はびっくりしましたけど、少し落ち着いて貴方と話してみたら、何だか思ったよりも嫌じゃないみたいです……この状況が」

(意外と順応性が高いんだな。普通は嫌がると思ったんだが)

 普通は自分の中に他人がいるなんて、気味が悪いと思うんだけど……意外と天然なんだろうか?

「自分でも少し驚いていますけど……私、お話しできるお友達がいないんで……ちょっと嬉しいみたいなんです」

 ──どうやら本音みたいだ。

 感情が筒抜けだから何となく分かる。本当に少し喜んでいる。しかし……まさか、この子も俺と同じとはな。

 その気持ち……分かるぞ。話し相手が欲しかったんだろ? 映画の感想とか、アニメの薀蓄うんちくだとか……俺だって友人は要らんとか強がってはいたが、寂しく無かった訳じゃ無い。本当に信じられる人間がいなかっただけなんだ……って。いかん、いかん。前世の悲しい記憶が甦って来た。

(そうか……受入れてくれて何よりだ。これからよろしく頼む。俺は、真人。瀬上真人だ)

「よ、よろしくお願いします……」

 彼女は、少し恥ずかし気にそう答えると、呟く様な声で名乗った。



「──私は……ゆ、雪といいます」

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

処理中です...