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第2部
第15話:憤怒する悪魔
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病院を出たあと、西方リリカは駅前へと向かう。
その道のりでも、あの豚とその女の顔が思い浮かんで苛立ちが止まらなかった。
「あぁ~もうッ! ムカつくムカつくムカつくッ!」
心が穏やかではなかった。今までこんな気持ちになったことはなかったのに。
(どうして……? どうして……こんなにもイライラするんだろ……?)
自分でもなぜあんなにもムカつくのか、その答えは分からない。
やはり、自分の所有物である豚を奪われてしまったことだろうか。
自分の愛玩動物を盗まれれば、それは誰でも怒るのは当然だろう。
それも我が物顔を浮かべ、ベッタリされていたら益々苛立ちが募るか。
「ふふふ……誰に喧嘩を売ったのか。あの泥棒猫には教えてやらないといけないわね」
さっきまで青信号だったのに、リリカが通ろうとしたら点滅し出してしまう。
急いでいるわけでもないし、別に後からゆっくり通るしかないか。
そう思い、立ち止まってみるのだが——。
(どうしてよ……どうしてあの嫌味な女と豚のことを思い出してしまうのよ!!)
信号待ちの時間でさえ、あの二人を思い出してしまうのだ。
バカにしてきたあの連中のことを。
「特に……あのクソアマがぁ……次会ったときはただじゃおかないわ」
西方リリカは、承認欲求の塊だ。
子供の頃から注目を浴びてきた。
学校内でも学校外でも、可愛いリリカちゃんで有名だったのだ。
それなのに——。
『動画と実物で全然違うから気付かなかったぁ~』
あの女が言った言葉が。
あの女が放った言葉が。
無駄にリリカの心を蝕んでいくのだ。抉ってくるのだ。
女としての魅力を否定されたような気になってしまうのだ。
「……舐めやがって……こっちがどれだけ美容に気を使ってるか知らないくせに」
無性に腹が立ってしまう。心底憎たらしかった。忌々しかった。
あの女が。あの雌が。
自分と同等か、それ以上に可愛いあの泥棒猫のことが。
「……ぜ、ぜったいに許さない……許さない……あ、アイツのこと」
親指を口に入れると、そのままガリガリと噛んだ。
爪の味はマズいが、気持ちは幾分かは楽になる。
もしも、言ってきた相手があの女じゃなければ、どうでもよかったかもしれない。
でも、絶対に負けられない。アイツには、絶対に。
「……み、見たい……見たいよぉ……アイツが苦しむ姿を」
アイツが絶望にひれ伏す姿を。
アイツが屈辱的な表情を浮かべる姿を。
アイツが現実の厳しさを知り、土下座して許しを乞う姿を。
「あの女が涙を流してグチャグチャになる姿が見たいよぉ……」
そのためには——アイツの大切なものを奪ってやろう。
そうだ、あの豚を。あの醜い豚を自分のものにしてやろう。
アイツが大切な豚の心を奪い、二人の関係性をぶち壊してやろう。
そうすれば。
あの女は、絶対に絶対に泣きながら謝罪の言葉を述べると思うから。
「豚には……いっぱいいっぱい教えてあげないとね」
信号が変わった。
数十秒間立ち止まっていただけなのに、長時間待っていたように感じてしまう。
白線の上を歩きながらも、リリカは笑みを漏らしながら。
「幼馴染みを怒らせたらどうなるかってことを……うふふふ」
それに、と心の中で呟きながら。
(あたしをここまで怒らせたあの女にも教え込んでやらないといけない)
(目上の人に対する態度ってのを。礼儀を知らない女にはみっちりと)
そのためにも——。
(この恨みは、決して忘れてはならない……忘れることは決してしない)
かくなる上は何か。
そう考え、リリカは親指を力強く噛む。
白い指先からは真っ赤な血が流れ出した。
それを見て、赤茶髪の少女は「ふふふ」と笑みを漏らした。
まるで、クリスマスケーキを見た小さな子供のように。
それから——。
新鮮な血液が落ちないようにペロペロ舐めながら、彼女はアジトに向かうのであった。
「遅かったなぁ、リリカ。お前を待ってたぜ」
廃進広大一味のアジトは、街の中心地にあるマンションの一室。
元々会員制バーを経営していたらしく、設備は今でも全て整っている。
酒でもタバコでも女遊びでも何でもやりたい放題の空間。
取り巻き集団のひとりが不動産持ち家系で好きに使っていいと言われただとか。
「で、話ってのは何? わざわざ大切な話だからって言われて来たんだけど」
突然の着信。
相手は、廃進広大からだった。
至急、アジトへ来るようにとの連絡。
何か問題が起きたのかと思い、急いでここまで来たのだ。
「よしっ。リリカ、お前もコップを持て。えぇーと、カクテルでいいか?」
「何でもいいわ。今のあたしは虫の居所が悪いから注意して」
リリカがカクテルを受け取ると、廃進広大がソファーの上へと立った。
「お前らにビックニュースがある!!」
心底嬉しそうな表情を浮かべて、彼は続ける。
「実はな、企業からガンガン仕事の依頼が入ってきている!!」
「えええッ!」
これには思わず、この場の誰もが声を失ってしまう。
「有名雑誌から取材してほしいとの声もあるし、テレビ出演の話も」
そして、と少しだけ溜めてから。
「CM契約のお誘いもだ。フレッシュな若者を起用したいとのことだ」
「テレビ出演……有名雑誌取材……それにCM契約だと?」
「そうだよ。今後は動画投稿者としての活躍だけじゃない。タレントとして生きていける」
タレント。
その言葉に、リリカは思わず反応してしまう。
動画投稿者として活躍するのは辛いことも多いが、楽しかった。
現に、たくさんのファンに囲まれ、「可愛い」と言われるのは悪くない。嬉しいことだ。
でも、心のどこかで限界を感じていた。このままではダメだと。
いつの日か、動画投稿者として終わりが来ると。
動画投稿一本だけでは、今後戦っていくのはキツイと。
だからこそ、次の一手を考えていた。そんな自分に訪れた転機。
CM契約だが、テレビ進出への道が切り開かれたのだ。
「これからまだまだオレたちのチャンネルは伸びる!」
廃進広大の声は確信に満ちていた。
絶対に伸びる自信があるのだ。
無理もない。
今まで若さと勢いがある動画投稿者。
波に乗って、急激に伸びている若手。
「他の事業にもまだまだ手を出そうと思ってる」
「おおっ!」
「だが、その前にはまだまだ起爆剤がいるッ! こっから気合い入れていくぞっ!」
その言葉と同時に、廃進広大一味全員で祝杯を上げるのであった。
これから先訪れる幸せを祝って。
「で、リリカ。成功したか?」
「ごめん……無理だった。アイツ調子に乗ってるわ」
「……一筋縄じゃいかないか」
廃進広大はそう呟くと。
「そのためにも……あのバチャ豚を駆除する必要があるなぁ……」
廃進広大は酒を飲みながら、そう確信した。
アイツの存在は邪魔だと。
ここで切り捨てる必要があると。
と言っても、まだまだ利用価値があるので、使うだけ使って。
利用価値が消えた段階で、害獣駆除をしようと。
「バチャ豚……お前がその気なら……オレたちも利用するまでだよ」
◇◆◇◆◇◆
廃進広大一味が祝杯を上げている頃、苔ノ橋と東雲翼はというと。
「……あのぉ~。翼さん? さっきから怒ってる気がするんですけど」
「怒るに決まってるでしょ。誰が怒らせたのかなぁ~?」
「やっぱり……リリカのこと?」
「そうだよ。どうしてもっと拒絶しないの?」
「一応これでもしたんだよ?」
「顔面殴っちゃえばいいんだよ。あんな奴なんて」
シュッシュッと言いながら、東雲翼は空を殴っている。
俊敏な動きを見るに、もしかしたら運動面でも結構鍛えてるのかもと思ってしまう。
でも、基本的には暴力反対な苔ノ橋は困り顔で答える。
「……そ、それはちょっと」
「そーいうところがあるから付け込まれるんだよ? わかってるのかな~?」
東雲翼はそう言うと、苔ノ橋のほっぺたを引っ張ってくる。
ぐにぐにぐにと触られてしまい、変な顔になってしまう苔ノ橋。
それを見て、東雲翼はニコニコ笑顔である。
怒っているのは間違いないが、本気で怒ってるわけではなさそうだ。
「それにしても翼。よくわかったよね、僕がここにいるって」
「え? そ、それはもちろん……ハートの力かな?」
愛の力か。
それだけ自分たちは愛し合ってるってことなのかな。
一人でに納得する苔ノ橋剛に、東雲翼は鼻を摘みながら。
「それよりも、苔ノ橋くん。クサイよ」
「クサイ……? あ、ごめん。リハビリ終わりだし、毎日お風呂に入れないから」
「いや、そ~いう意味じゃなくて。香水のニオイだよ、香水!!」
「香水……? 僕は付けてないけど」
苔ノ橋剛は、オシャレの「オ」の字さえ知らない男子高校生。
お小遣いは全てオタク趣味に使うような人間なのだ。
だからこそ、彼は今の今まで気付かなかった。
「ふぅ~ん。なら、このジャスミンのニオイはアイツのか」
顔を歪めたままに、東雲翼は言う。
彼女から漏れ出た言葉。
ジャスミンという単語に、苔ノ橋は思わず反応してしまう。
「……ジャスミン? ちょ、ちょっと待って。今、そう言ったよね……?」
「うん。そうだけど……何かあったの?」
小首を傾げる愛する彼女に、苔ノ橋剛は「実はさ」と切り出した。
「鳥城先生が言ってたんだ。僕のお母さんを殺した犯人は別にいるって」
「……えっ? ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」
動揺を隠せない東雲翼は続けて。
「実は、私からも話があるの!!」
「……話?」
「うん」
東雲翼は眉毛を八の字にさせて。
「実はね、苔ノ橋くんのお母さんが殺された日。その近くで、廃進広大とその一味を見たという目撃情報が入ったの。それも、犯人の目撃情報と全く同じ格好をしたあの人たちが」
その道のりでも、あの豚とその女の顔が思い浮かんで苛立ちが止まらなかった。
「あぁ~もうッ! ムカつくムカつくムカつくッ!」
心が穏やかではなかった。今までこんな気持ちになったことはなかったのに。
(どうして……? どうして……こんなにもイライラするんだろ……?)
自分でもなぜあんなにもムカつくのか、その答えは分からない。
やはり、自分の所有物である豚を奪われてしまったことだろうか。
自分の愛玩動物を盗まれれば、それは誰でも怒るのは当然だろう。
それも我が物顔を浮かべ、ベッタリされていたら益々苛立ちが募るか。
「ふふふ……誰に喧嘩を売ったのか。あの泥棒猫には教えてやらないといけないわね」
さっきまで青信号だったのに、リリカが通ろうとしたら点滅し出してしまう。
急いでいるわけでもないし、別に後からゆっくり通るしかないか。
そう思い、立ち止まってみるのだが——。
(どうしてよ……どうしてあの嫌味な女と豚のことを思い出してしまうのよ!!)
信号待ちの時間でさえ、あの二人を思い出してしまうのだ。
バカにしてきたあの連中のことを。
「特に……あのクソアマがぁ……次会ったときはただじゃおかないわ」
西方リリカは、承認欲求の塊だ。
子供の頃から注目を浴びてきた。
学校内でも学校外でも、可愛いリリカちゃんで有名だったのだ。
それなのに——。
『動画と実物で全然違うから気付かなかったぁ~』
あの女が言った言葉が。
あの女が放った言葉が。
無駄にリリカの心を蝕んでいくのだ。抉ってくるのだ。
女としての魅力を否定されたような気になってしまうのだ。
「……舐めやがって……こっちがどれだけ美容に気を使ってるか知らないくせに」
無性に腹が立ってしまう。心底憎たらしかった。忌々しかった。
あの女が。あの雌が。
自分と同等か、それ以上に可愛いあの泥棒猫のことが。
「……ぜ、ぜったいに許さない……許さない……あ、アイツのこと」
親指を口に入れると、そのままガリガリと噛んだ。
爪の味はマズいが、気持ちは幾分かは楽になる。
もしも、言ってきた相手があの女じゃなければ、どうでもよかったかもしれない。
でも、絶対に負けられない。アイツには、絶対に。
「……み、見たい……見たいよぉ……アイツが苦しむ姿を」
アイツが絶望にひれ伏す姿を。
アイツが屈辱的な表情を浮かべる姿を。
アイツが現実の厳しさを知り、土下座して許しを乞う姿を。
「あの女が涙を流してグチャグチャになる姿が見たいよぉ……」
そのためには——アイツの大切なものを奪ってやろう。
そうだ、あの豚を。あの醜い豚を自分のものにしてやろう。
アイツが大切な豚の心を奪い、二人の関係性をぶち壊してやろう。
そうすれば。
あの女は、絶対に絶対に泣きながら謝罪の言葉を述べると思うから。
「豚には……いっぱいいっぱい教えてあげないとね」
信号が変わった。
数十秒間立ち止まっていただけなのに、長時間待っていたように感じてしまう。
白線の上を歩きながらも、リリカは笑みを漏らしながら。
「幼馴染みを怒らせたらどうなるかってことを……うふふふ」
それに、と心の中で呟きながら。
(あたしをここまで怒らせたあの女にも教え込んでやらないといけない)
(目上の人に対する態度ってのを。礼儀を知らない女にはみっちりと)
そのためにも——。
(この恨みは、決して忘れてはならない……忘れることは決してしない)
かくなる上は何か。
そう考え、リリカは親指を力強く噛む。
白い指先からは真っ赤な血が流れ出した。
それを見て、赤茶髪の少女は「ふふふ」と笑みを漏らした。
まるで、クリスマスケーキを見た小さな子供のように。
それから——。
新鮮な血液が落ちないようにペロペロ舐めながら、彼女はアジトに向かうのであった。
「遅かったなぁ、リリカ。お前を待ってたぜ」
廃進広大一味のアジトは、街の中心地にあるマンションの一室。
元々会員制バーを経営していたらしく、設備は今でも全て整っている。
酒でもタバコでも女遊びでも何でもやりたい放題の空間。
取り巻き集団のひとりが不動産持ち家系で好きに使っていいと言われただとか。
「で、話ってのは何? わざわざ大切な話だからって言われて来たんだけど」
突然の着信。
相手は、廃進広大からだった。
至急、アジトへ来るようにとの連絡。
何か問題が起きたのかと思い、急いでここまで来たのだ。
「よしっ。リリカ、お前もコップを持て。えぇーと、カクテルでいいか?」
「何でもいいわ。今のあたしは虫の居所が悪いから注意して」
リリカがカクテルを受け取ると、廃進広大がソファーの上へと立った。
「お前らにビックニュースがある!!」
心底嬉しそうな表情を浮かべて、彼は続ける。
「実はな、企業からガンガン仕事の依頼が入ってきている!!」
「えええッ!」
これには思わず、この場の誰もが声を失ってしまう。
「有名雑誌から取材してほしいとの声もあるし、テレビ出演の話も」
そして、と少しだけ溜めてから。
「CM契約のお誘いもだ。フレッシュな若者を起用したいとのことだ」
「テレビ出演……有名雑誌取材……それにCM契約だと?」
「そうだよ。今後は動画投稿者としての活躍だけじゃない。タレントとして生きていける」
タレント。
その言葉に、リリカは思わず反応してしまう。
動画投稿者として活躍するのは辛いことも多いが、楽しかった。
現に、たくさんのファンに囲まれ、「可愛い」と言われるのは悪くない。嬉しいことだ。
でも、心のどこかで限界を感じていた。このままではダメだと。
いつの日か、動画投稿者として終わりが来ると。
動画投稿一本だけでは、今後戦っていくのはキツイと。
だからこそ、次の一手を考えていた。そんな自分に訪れた転機。
CM契約だが、テレビ進出への道が切り開かれたのだ。
「これからまだまだオレたちのチャンネルは伸びる!」
廃進広大の声は確信に満ちていた。
絶対に伸びる自信があるのだ。
無理もない。
今まで若さと勢いがある動画投稿者。
波に乗って、急激に伸びている若手。
「他の事業にもまだまだ手を出そうと思ってる」
「おおっ!」
「だが、その前にはまだまだ起爆剤がいるッ! こっから気合い入れていくぞっ!」
その言葉と同時に、廃進広大一味全員で祝杯を上げるのであった。
これから先訪れる幸せを祝って。
「で、リリカ。成功したか?」
「ごめん……無理だった。アイツ調子に乗ってるわ」
「……一筋縄じゃいかないか」
廃進広大はそう呟くと。
「そのためにも……あのバチャ豚を駆除する必要があるなぁ……」
廃進広大は酒を飲みながら、そう確信した。
アイツの存在は邪魔だと。
ここで切り捨てる必要があると。
と言っても、まだまだ利用価値があるので、使うだけ使って。
利用価値が消えた段階で、害獣駆除をしようと。
「バチャ豚……お前がその気なら……オレたちも利用するまでだよ」
◇◆◇◆◇◆
廃進広大一味が祝杯を上げている頃、苔ノ橋と東雲翼はというと。
「……あのぉ~。翼さん? さっきから怒ってる気がするんですけど」
「怒るに決まってるでしょ。誰が怒らせたのかなぁ~?」
「やっぱり……リリカのこと?」
「そうだよ。どうしてもっと拒絶しないの?」
「一応これでもしたんだよ?」
「顔面殴っちゃえばいいんだよ。あんな奴なんて」
シュッシュッと言いながら、東雲翼は空を殴っている。
俊敏な動きを見るに、もしかしたら運動面でも結構鍛えてるのかもと思ってしまう。
でも、基本的には暴力反対な苔ノ橋は困り顔で答える。
「……そ、それはちょっと」
「そーいうところがあるから付け込まれるんだよ? わかってるのかな~?」
東雲翼はそう言うと、苔ノ橋のほっぺたを引っ張ってくる。
ぐにぐにぐにと触られてしまい、変な顔になってしまう苔ノ橋。
それを見て、東雲翼はニコニコ笑顔である。
怒っているのは間違いないが、本気で怒ってるわけではなさそうだ。
「それにしても翼。よくわかったよね、僕がここにいるって」
「え? そ、それはもちろん……ハートの力かな?」
愛の力か。
それだけ自分たちは愛し合ってるってことなのかな。
一人でに納得する苔ノ橋剛に、東雲翼は鼻を摘みながら。
「それよりも、苔ノ橋くん。クサイよ」
「クサイ……? あ、ごめん。リハビリ終わりだし、毎日お風呂に入れないから」
「いや、そ~いう意味じゃなくて。香水のニオイだよ、香水!!」
「香水……? 僕は付けてないけど」
苔ノ橋剛は、オシャレの「オ」の字さえ知らない男子高校生。
お小遣いは全てオタク趣味に使うような人間なのだ。
だからこそ、彼は今の今まで気付かなかった。
「ふぅ~ん。なら、このジャスミンのニオイはアイツのか」
顔を歪めたままに、東雲翼は言う。
彼女から漏れ出た言葉。
ジャスミンという単語に、苔ノ橋は思わず反応してしまう。
「……ジャスミン? ちょ、ちょっと待って。今、そう言ったよね……?」
「うん。そうだけど……何かあったの?」
小首を傾げる愛する彼女に、苔ノ橋剛は「実はさ」と切り出した。
「鳥城先生が言ってたんだ。僕のお母さんを殺した犯人は別にいるって」
「……えっ? ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」
動揺を隠せない東雲翼は続けて。
「実は、私からも話があるの!!」
「……話?」
「うん」
東雲翼は眉毛を八の字にさせて。
「実はね、苔ノ橋くんのお母さんが殺された日。その近くで、廃進広大とその一味を見たという目撃情報が入ったの。それも、犯人の目撃情報と全く同じ格好をしたあの人たちが」
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