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不明勢力農村占拠事件
ギリギリまで踏ん張って
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マイケルの回想が終わると、俺はコロシアムの真ん中で立っていた。天井は高く、壁も見えない。まるで暗黒に浮かぶ台座に立たされているような感覚になる。
「控え室じゃないのか。」
話の上ではロッカールームに出るはずが、いきなりルールを変えられた。ヴォジャノーイもかなり窮地に立っていると考えてもいいんだろうな。
「おーい。主賓。どういう風の吹き回しだー!!」
声は暗闇に溶けていく。
「まいったな…どうするか。」
殺気。スキルによるものではなく、俺自身が持っている常識人としての予感が背筋を凍らせた。
いくらスタチューの恩恵がないとはいえ、経験が無駄になることはない。俺は予感に従って、その場から退いた。
すると目の前に現れたのはナイフを振りかぶった人影だ。
「…気取られた!」
「マヂで趣味がワリィ。」
視界を覆うほど赤い髪。襲いかかってきたのはラピスだ。
(同士討ちさせるとは思ってたけど、こっからどうするか…。)
あのカエルは自分が窮地に陥ると卑怯な戦法を取るとわかっていたが、実際に実行されるとどうしようもない。
ナイフが一閃。空気ごと切り分けて、ラピスは横目で俺を確認した。
「ラピス!落ち着け!」
「モンスター風情が!なぜ名前を知っている?!」
追い打ちが走る。軽やかなステップに合わせた斬撃が、どこまで追いかけてくる。
「まずいな。俺の事モンスターに見えてるっぽいぞ。」
執念深いナイフの切っ先がどこまでもついてくる。
「ルールの説明もなんもないのかよ!!ヴォジャノーイ!答えやがれ!!!!」
どうあがいても声は誰にも届かないようだ。俺が切り刻まれる前に、どうにか動きを止めないと。
ポルカンは村の至る所を駆け回ったが、二人の人間の姿が無いことに気がついた。
「……ふむ。」
彼は魔力を感知する能力を会得していた。それ故に、二人の魔力が消えた事は即座にわかっていた。なのにすぐにうごかなかったのは、ヴォジャノーイの気配があちこちで突然現れた為だ。
「丁度このあたりか…」
馬の脚によって目的地に近づくと、ポルカンの意表は突かれた。
「……石像?どうせアラの手下であろう。」
像を模した石像が道の中央で浮いていたのだ。石像からは魔力とも言えない何かを感じ取ったポルカンは、大きくて長い鉄の剣を構え、切っ先を石像に向ける。
「我が剣が貫くのは異形の怪物。」
言葉の力が剣に乗る。自身の動きに合わせて揺れていた筈が、自然と力身を纏って殺意が籠もった。
そして剣は石像の顔を捉えた。
「君は……異訪者か。」
「届かない。」
剣先が石像にたどり着けない。寸での所で動きを止めて、先に進めずにいた。それはなぜか。ポルカン自身の動きを何かしらの力が羽交い締めにして、歩みどころかまばたきすらも行う事ができない。
「私はスタチュー。」
「ふんぬぅ!」
「嶋田から聞いていないかもだが、私はってやめておけ。どうせ動けない。」
ポルカンは動けぬ身体を力づくで動かそうと躍起になっていた。
「私はこの世界を守る存在だ。【世界の破片】ではなく、君のような【異邦者】には権能が働く。この世界を跨ぐことを許さない限り、そこから動く事は____」
「良いことを聞いた。」
「何?」
スタチューはこの世界を守る神のような存在だと、ポルカンは認識した。
だがそれはポルカンにとって有効に働く事をスタチューは知らない。
「我は世界を跨ぐ玉足を持つ者。お前が剪定した所で時間稼ぎだ。」
時間が動き出す。ポルカンの足は前へと進んだのだ。スタチューは物理的に避け、ポルカンはまるでイノシシのように突進を繰り出し、大袈裟にブレーキをかけた。
2人は距離を離し、お互いの出方を伺う。ポルカンは口撃にて先手を打った。
「知っているぞ。貴様がこの世界で直接手を出す事ができないと。かえって我が剣は神をも殺す。」
「だとしたらわからない。嶋田の味方である私を襲う理由がどこにある。」
「スタチューよ。神と名のような存在は、昔から邪悪な思惑を持っている。今のうちに裁断しなければ大事に繋がる。」
水掛け論になるとスタチューは少しの間を置いて、また言葉を紡いだ。
「お前がそこまで嶋田達を考えるのなら、早く行った方がいい。」
「……どういう事だ。」
「私とお前の目的は同じ。私の力では乗り越えられない領域に嶋田とラピスはいる。」
ポルカンは剣を下げた。
「やっと話を聞いてくれるんだな。」
「御託はいい。猛者たちはどこにいる。」
「水辺の王の領域、この下だ。」
「……なるほど。」
ここにきて、やっとポルカンは察しがついた。
「この世界を侵食しているのだな。お前の権能が通じない領域を作っている。」
「理解が早くて助かる。厳密には穴を開けるだがな。」
「どちらにせよ、我の目的は変わらん。気に食わないがうまく利用されてやる。」
「だったらさっさと行くがいい。私の力はあの領域では行使できない。」
「それを先に言え!!!!」
幸いにも靭帯は切れていない。まるで風のように通り抜けていくラピスのナイフには、俺の血が乗っていた。
「あんた、本当にしぶといわね。」
目の前でナイフを構える彼女に対して、俺は無防備で、避けることすらできない。肩で息をして、身体と呼吸が整うことすら出来ずにいた。
やれる事はただ1つ。腕を構えて、ガードを上げ続ける事だけだ。
「いい加減、見飽きたぞ。」
天からヴォジャノーイの言葉が降り注いだ。
「いいから黙ってみてなさい!!」
「この場、その戦いは我への贄。長引けば質は落ちていくぞ。」
「そんな事わかってるわよ!こっからが良いところじゃない!」
ラピスは必死に答えていた。その様子から、俺は少しだけ察しがついてしまった。
「ならばせめて味付けはさせてもらう。」
「よ___」
するとヴォジャノーイは俺とラピスの間に姿を表した。カエルの王様はいつ見ても醜悪で、心のうちから憎悪が湧いてくる。
「ラピスはお前が嶋田だと知っていた。」
「…。」
「ほう。察しはついていたと。」
「マイケルから聞いてる。この領域に現れるのは死人ばかりだと。どうせ俺を殺せばラピスの夫を蘇らせるとかなんとか____」
突然に殺気が忍んできた。湿り気のある空気の中に紛れて、心を刺すような気配が言葉を切った。
そんなものを出せるのはこの場においてラピス以外あり得ない。
「……申し訳ないけどそういう事よ。」
「偽物だってわかっててもか?」
「わかっててもよ。わかっててやってんの。これはどうしようもない女を仲間にしたあんたの責任よ。」
ラピスの翡翠の瞳には濁りがなく、まっすぐ俺を見据えている。
「まぁ……そうだよな。」
打つ手がないと値踏みし、俺は腕を下ろした。どうみても降参の立ち姿にラピスは驚いた。
「何のつもりよ。」
「降参だ。好きにしろ。」
「はぁ?」
「スタチューの能力が使えないし、丸腰だし、もう打つ手がねぇ。」
何度も腕を切り裂かれ、貧血気味だ。ふらつく足を支えているのは単に気概だけ。脱出不能のこの空間で俺ができることはなにもない。なくなった。
「殺したきゃ殺せ。でもお前が生き残るのなら、責任も持っていけ。」
「責任…?」
「この村を救うこと。そして人類をコイツラみたいな怪物から守る事だ。」
語り部とは言わないが、せめて救うことだけは止めないでくれ。そう願うばかりだ。
俺の気持ちを言葉にして送ると、ラピスはナイフを前にした。
「いいわよ。交換条件よね。貴方を殺し、夫ともう一度会話ができたなら、必ずそうするわ。」
それでいい。俺はもう疲れちまったんだ。
「いくよっ____」
真っ直ぐ突き進んでくるラピスを見ても尚、心臓の鼓動が跳ねる事がない。
なぜならいつ終わってもいいと思っていたからだ。人の役に立ってさえいれば、自分はいつ死んでもいいと。だから此処で死ぬとなっても、引き継いでくれる人がいるのなら…
「____ごめん。」
不思議と心は平穏だったのに、ナイフが身体に入ってくる感覚が痛みと一緒に脳みそを直撃した。
冷たくて熱い。刃が抜かれた途端に気が遠くなる程の虚脱感と死の実感。スキルによってもたらされた安心感が今はなくて、確実な体の変化が死を連想させた。
視線を下げるとラピスのナイフは血に濡れていて、俺の腹は破られて血を流している。
「あ……まじか…。」
力が抜けていく。足腰が折れて地面に倒れ込む。フラットな地面の冷たさを、今では頬で感じている。
「相当に愉快だな嶋田よ。お前は死を怖がっていないふりをしていたに過ぎない。」
「……。」
「世界の守り人から力を受け、過信していた凡人だ。ナイフ一本刺されただけでこのざまなのは、そういう事なのだ。どうだ?どうだ死は怖かろう。」
ヴォジャノーイの嘲る声が耳に入ってくる。否が応でも突きつけられる結末に、俺は死力尽くした。少しづつ固くなる首を上げ、虚ろになる視界でヴォジャノーイを睨み、言う事を聞かない中指を立てる。
「なんだそれは?」
「ザマァみろって意味だ。ボンクラ。」
その瞬間、ガラスが割れたような凄まじい音が空間いっぱいに響き渡る。
「半神半馬めッ!!お前のような半ぱな存在が、我が領域に____」
カエルが見上げると、言葉を言い切る暇もなく、長い鉄の剣がカエルの眉間を突き抜け、股下から切っ先が飛び出した。
静かになった事で彼が即死したのは明らかだった。
「言っただろうが…。」
「嶋田よ。大丈夫か。」
「見た目ほど…わるかないよ…。」
ポルカンの馬蹄が見える。さすが半神、やっぱり着てくれた。
彼を見た途端に安心感が湧き上がってきたのか、痛みが少しづつ消えていくのを感じている。
「貴様の神と会ったぞ。」
「そう…なのか…。」
「あぁ。彼が居場所を教えてくれたのだ。奴を仕留めた事で領域も閉じるだろう。外の世界と繋がったことで、その……スキルだったか。それが使えるようになるだろう。さ、ここにいる理由もない。ラピスも連れて外に出るぞ。」
ポルカンは俺達の反応を見ることなく二人を抱えて、遠く高い天井の穴へと飛び上がった。
「控え室じゃないのか。」
話の上ではロッカールームに出るはずが、いきなりルールを変えられた。ヴォジャノーイもかなり窮地に立っていると考えてもいいんだろうな。
「おーい。主賓。どういう風の吹き回しだー!!」
声は暗闇に溶けていく。
「まいったな…どうするか。」
殺気。スキルによるものではなく、俺自身が持っている常識人としての予感が背筋を凍らせた。
いくらスタチューの恩恵がないとはいえ、経験が無駄になることはない。俺は予感に従って、その場から退いた。
すると目の前に現れたのはナイフを振りかぶった人影だ。
「…気取られた!」
「マヂで趣味がワリィ。」
視界を覆うほど赤い髪。襲いかかってきたのはラピスだ。
(同士討ちさせるとは思ってたけど、こっからどうするか…。)
あのカエルは自分が窮地に陥ると卑怯な戦法を取るとわかっていたが、実際に実行されるとどうしようもない。
ナイフが一閃。空気ごと切り分けて、ラピスは横目で俺を確認した。
「ラピス!落ち着け!」
「モンスター風情が!なぜ名前を知っている?!」
追い打ちが走る。軽やかなステップに合わせた斬撃が、どこまで追いかけてくる。
「まずいな。俺の事モンスターに見えてるっぽいぞ。」
執念深いナイフの切っ先がどこまでもついてくる。
「ルールの説明もなんもないのかよ!!ヴォジャノーイ!答えやがれ!!!!」
どうあがいても声は誰にも届かないようだ。俺が切り刻まれる前に、どうにか動きを止めないと。
ポルカンは村の至る所を駆け回ったが、二人の人間の姿が無いことに気がついた。
「……ふむ。」
彼は魔力を感知する能力を会得していた。それ故に、二人の魔力が消えた事は即座にわかっていた。なのにすぐにうごかなかったのは、ヴォジャノーイの気配があちこちで突然現れた為だ。
「丁度このあたりか…」
馬の脚によって目的地に近づくと、ポルカンの意表は突かれた。
「……石像?どうせアラの手下であろう。」
像を模した石像が道の中央で浮いていたのだ。石像からは魔力とも言えない何かを感じ取ったポルカンは、大きくて長い鉄の剣を構え、切っ先を石像に向ける。
「我が剣が貫くのは異形の怪物。」
言葉の力が剣に乗る。自身の動きに合わせて揺れていた筈が、自然と力身を纏って殺意が籠もった。
そして剣は石像の顔を捉えた。
「君は……異訪者か。」
「届かない。」
剣先が石像にたどり着けない。寸での所で動きを止めて、先に進めずにいた。それはなぜか。ポルカン自身の動きを何かしらの力が羽交い締めにして、歩みどころかまばたきすらも行う事ができない。
「私はスタチュー。」
「ふんぬぅ!」
「嶋田から聞いていないかもだが、私はってやめておけ。どうせ動けない。」
ポルカンは動けぬ身体を力づくで動かそうと躍起になっていた。
「私はこの世界を守る存在だ。【世界の破片】ではなく、君のような【異邦者】には権能が働く。この世界を跨ぐことを許さない限り、そこから動く事は____」
「良いことを聞いた。」
「何?」
スタチューはこの世界を守る神のような存在だと、ポルカンは認識した。
だがそれはポルカンにとって有効に働く事をスタチューは知らない。
「我は世界を跨ぐ玉足を持つ者。お前が剪定した所で時間稼ぎだ。」
時間が動き出す。ポルカンの足は前へと進んだのだ。スタチューは物理的に避け、ポルカンはまるでイノシシのように突進を繰り出し、大袈裟にブレーキをかけた。
2人は距離を離し、お互いの出方を伺う。ポルカンは口撃にて先手を打った。
「知っているぞ。貴様がこの世界で直接手を出す事ができないと。かえって我が剣は神をも殺す。」
「だとしたらわからない。嶋田の味方である私を襲う理由がどこにある。」
「スタチューよ。神と名のような存在は、昔から邪悪な思惑を持っている。今のうちに裁断しなければ大事に繋がる。」
水掛け論になるとスタチューは少しの間を置いて、また言葉を紡いだ。
「お前がそこまで嶋田達を考えるのなら、早く行った方がいい。」
「……どういう事だ。」
「私とお前の目的は同じ。私の力では乗り越えられない領域に嶋田とラピスはいる。」
ポルカンは剣を下げた。
「やっと話を聞いてくれるんだな。」
「御託はいい。猛者たちはどこにいる。」
「水辺の王の領域、この下だ。」
「……なるほど。」
ここにきて、やっとポルカンは察しがついた。
「この世界を侵食しているのだな。お前の権能が通じない領域を作っている。」
「理解が早くて助かる。厳密には穴を開けるだがな。」
「どちらにせよ、我の目的は変わらん。気に食わないがうまく利用されてやる。」
「だったらさっさと行くがいい。私の力はあの領域では行使できない。」
「それを先に言え!!!!」
幸いにも靭帯は切れていない。まるで風のように通り抜けていくラピスのナイフには、俺の血が乗っていた。
「あんた、本当にしぶといわね。」
目の前でナイフを構える彼女に対して、俺は無防備で、避けることすらできない。肩で息をして、身体と呼吸が整うことすら出来ずにいた。
やれる事はただ1つ。腕を構えて、ガードを上げ続ける事だけだ。
「いい加減、見飽きたぞ。」
天からヴォジャノーイの言葉が降り注いだ。
「いいから黙ってみてなさい!!」
「この場、その戦いは我への贄。長引けば質は落ちていくぞ。」
「そんな事わかってるわよ!こっからが良いところじゃない!」
ラピスは必死に答えていた。その様子から、俺は少しだけ察しがついてしまった。
「ならばせめて味付けはさせてもらう。」
「よ___」
するとヴォジャノーイは俺とラピスの間に姿を表した。カエルの王様はいつ見ても醜悪で、心のうちから憎悪が湧いてくる。
「ラピスはお前が嶋田だと知っていた。」
「…。」
「ほう。察しはついていたと。」
「マイケルから聞いてる。この領域に現れるのは死人ばかりだと。どうせ俺を殺せばラピスの夫を蘇らせるとかなんとか____」
突然に殺気が忍んできた。湿り気のある空気の中に紛れて、心を刺すような気配が言葉を切った。
そんなものを出せるのはこの場においてラピス以外あり得ない。
「……申し訳ないけどそういう事よ。」
「偽物だってわかっててもか?」
「わかっててもよ。わかっててやってんの。これはどうしようもない女を仲間にしたあんたの責任よ。」
ラピスの翡翠の瞳には濁りがなく、まっすぐ俺を見据えている。
「まぁ……そうだよな。」
打つ手がないと値踏みし、俺は腕を下ろした。どうみても降参の立ち姿にラピスは驚いた。
「何のつもりよ。」
「降参だ。好きにしろ。」
「はぁ?」
「スタチューの能力が使えないし、丸腰だし、もう打つ手がねぇ。」
何度も腕を切り裂かれ、貧血気味だ。ふらつく足を支えているのは単に気概だけ。脱出不能のこの空間で俺ができることはなにもない。なくなった。
「殺したきゃ殺せ。でもお前が生き残るのなら、責任も持っていけ。」
「責任…?」
「この村を救うこと。そして人類をコイツラみたいな怪物から守る事だ。」
語り部とは言わないが、せめて救うことだけは止めないでくれ。そう願うばかりだ。
俺の気持ちを言葉にして送ると、ラピスはナイフを前にした。
「いいわよ。交換条件よね。貴方を殺し、夫ともう一度会話ができたなら、必ずそうするわ。」
それでいい。俺はもう疲れちまったんだ。
「いくよっ____」
真っ直ぐ突き進んでくるラピスを見ても尚、心臓の鼓動が跳ねる事がない。
なぜならいつ終わってもいいと思っていたからだ。人の役に立ってさえいれば、自分はいつ死んでもいいと。だから此処で死ぬとなっても、引き継いでくれる人がいるのなら…
「____ごめん。」
不思議と心は平穏だったのに、ナイフが身体に入ってくる感覚が痛みと一緒に脳みそを直撃した。
冷たくて熱い。刃が抜かれた途端に気が遠くなる程の虚脱感と死の実感。スキルによってもたらされた安心感が今はなくて、確実な体の変化が死を連想させた。
視線を下げるとラピスのナイフは血に濡れていて、俺の腹は破られて血を流している。
「あ……まじか…。」
力が抜けていく。足腰が折れて地面に倒れ込む。フラットな地面の冷たさを、今では頬で感じている。
「相当に愉快だな嶋田よ。お前は死を怖がっていないふりをしていたに過ぎない。」
「……。」
「世界の守り人から力を受け、過信していた凡人だ。ナイフ一本刺されただけでこのざまなのは、そういう事なのだ。どうだ?どうだ死は怖かろう。」
ヴォジャノーイの嘲る声が耳に入ってくる。否が応でも突きつけられる結末に、俺は死力尽くした。少しづつ固くなる首を上げ、虚ろになる視界でヴォジャノーイを睨み、言う事を聞かない中指を立てる。
「なんだそれは?」
「ザマァみろって意味だ。ボンクラ。」
その瞬間、ガラスが割れたような凄まじい音が空間いっぱいに響き渡る。
「半神半馬めッ!!お前のような半ぱな存在が、我が領域に____」
カエルが見上げると、言葉を言い切る暇もなく、長い鉄の剣がカエルの眉間を突き抜け、股下から切っ先が飛び出した。
静かになった事で彼が即死したのは明らかだった。
「言っただろうが…。」
「嶋田よ。大丈夫か。」
「見た目ほど…わるかないよ…。」
ポルカンの馬蹄が見える。さすが半神、やっぱり着てくれた。
彼を見た途端に安心感が湧き上がってきたのか、痛みが少しづつ消えていくのを感じている。
「貴様の神と会ったぞ。」
「そう…なのか…。」
「あぁ。彼が居場所を教えてくれたのだ。奴を仕留めた事で領域も閉じるだろう。外の世界と繋がったことで、その……スキルだったか。それが使えるようになるだろう。さ、ここにいる理由もない。ラピスも連れて外に出るぞ。」
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