追放されたFランク荷物持ち、ダンジョン管理人になり裏切り者を配信刑に処す。国家権力すら養分にする最強無双

葉山 乃愛

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第16話 勇者「姫を救いに来た!」 姫「ポテチうめぇ(バリボリ)」 ~感動の再会、3秒で放送事故~

「我こそは、聖なる光の守護者! 勇者アレクサンダーである!」


ダンジョン都市カイトの上空。

巨大な影が、作りたての街を覆い尽くしていた。


帝国の最新鋭魔導戦艦『グロリアス』。

全長300メートルを超える空の要塞だ。

その甲板に立ち、拡声魔法で名乗りを上げているのは、金髪碧眼、白銀の鎧に身を包んだ「いかにも」なイケメン勇者だった。


『魔王カイトよ! 貴様の暴虐もここまでだ!』

『直ちにエルゼ王国の占領を解き、囚われの悲劇のヒロイン、リリアーヌ姫を解放せよ!』


勇者の声が、正義の怒りに震えている。

背後には、帝国の精鋭魔導師団が杖を構え、いつでも攻撃魔法を放てる態勢だ。


地上の市民たちがざわつく。

「勇者アレクだ……」

「ドラゴンスレイヤーの英雄だぞ」

「さすがのカイト様でも、あんな巨大戦艦は……」


不安が広がる中。

俺は司令室のソファで、ポテトチップス(うすしお味)の袋を開けていた。


「……うるせえな、あの金ピカ」


「お兄ちゃん、撃ち落としていい? 今なら『対空レーザー』の実験ができるよ?」


ミオがウズウズしながら、発射ボタン(ドクロマーク)に指をかけている。


「待て待て。せっかくの『勇者』だ。……視聴率を稼いでからにしよう」


俺はニヤリと笑い、配信を開始した。


【タイトル】
【凸待ち】勇者パーティが「姫を返せ」と空からポイ捨て禁止区域に来た件について【姫の現状をご覧ください】


《勇者きたああああああ!》

《アレクじゃん! Sランク筆頭!》

《戦艦で乗り込んでくるとかガチだな》

《姫様が拷問されてると思ってるらしい》

《現状を知ったら発狂しそうw》


俺は空中に巨大モニターを投影し、甲板のアレクと通信を繋いだ。


『――よう、勇者くん』


「貴様が魔王カイトか! くっ、その邪悪なオーラ……画面越しでも伝わってくるぞ!」


アレクが剣を抜き、カメラに向かって突きつける。


「問答無用! リリアーヌ姫をどこへやった! 地下牢で辱め、奴隷として扱っているのだろう!」

「安心しろリリアーヌ! 今、この僕が助けに……!」


『ああ、リリアーヌならそこにいるぞ』


俺はカメラのアングルを切り替えた。


「……え?」


アレクの言葉が止まる。

全視聴者の視線が、画面の端に向けられた。


そこに映っていたのは。


「んぐ、んぐ……ぷはぁっ!」


最高級のゲーミングチェアに深く座り、ジャージ姿(俺のお古)でコーラをラッパ飲みしているリリアーヌだった。

右手にはポテチ。

左手にはゲームのコントローラー。

目の前のモニターには、人気格闘ゲームの勝利画面が表示されている。


「……あ、カイト様。すいません、この『ランクマッチ』が終わるまで待ってください。今、昇格戦なんです」


バリボリ。


リリアーヌが器用にポテチを口に放り込み、炭酸で流し込む。

その顔は、悲劇のヒロインどころか、完全に「休日のおっさん」だった。


「…………は?」


勇者アレクが凍りついた。

背後の魔導師たちも、杖を取り落としそうになっている。


「リ、リリアーヌ……? そ、その格好は……?」


『見ての通りだ。彼女は今、当ダンジョンの『ゲーム廃人枠』として活躍中だ』


俺が補足説明を入れる。


実はリリアーヌ、現代の娯楽を与えたところ、凄まじい適応力を見せたのだ。

特にポテチと炭酸、そして対戦ゲームへのハマり方は異常で、今や王族の気品はどこへやら、立派な干物妹(ひもうと)と化していた。


「嘘だ……! 洗脳されているんだな!? そうでなければ、あの高潔な姫が、あんな……あんな堕落した姿を晒すはずがない!」


アレクが絶叫する。

リリアーヌが面倒くさそうにヘッドホンをずらした。


「……あ? 誰ですか、私の昇格戦の邪魔をするのは」


リリアーヌの目が座っている。

ゲームに負けそうな時の、ガチの殺気だ。


「ぼ、僕だ! 婚約者のアレクだ! 助けに来たんだぞ!」


「アレク? ……ああ、国が乗っ取られた時、真っ先に逃げた腰抜けですか」


「ぐっ……!」


「帰ってください。今、忙しいので。……あ、クソッ! ラグった! コンボ繋がらない!」


リリアーヌは興味なさそうに視線を画面に戻し、再びポテチを貪り始めた。


バリボリ。ゲップ。


《姫様www》

《完全に堕ちてて草》

《コーラとポテチの悪魔的融合》

《婚約者<<<<ランクマッチ》

《勇者、振られたな》

《洗脳(物理的快楽)》


「お、おのれ魔王ォォォォォ!」


アレクの顔が真っ赤に染まる。

プライドをズタズタにされた勇者が、剣を振り上げた。


「許さん! よくも姫を……僕の姫をここまで汚したな!」

「総員、攻撃用意! このふざけた街を、地図から消し去ってやる!」


戦艦グロリアスの砲門が、一斉にダンジョン都市に向けられる。

数百門の魔導砲。

一斉射撃すれば、街は火の海になるだろう。


「……ちっ。空気読めない男は嫌われるぞ」


俺はため息をついた。

だが、俺が動くまでもなかった。


「――主(マスター)への不敬、万死に値する」


ヒュンッ!


風を切る音と共に、一本の矢が空を裂いた。


それは、地上のビル屋上から放たれたものだったが、物理法則を無視して加速し、赤い流星となって戦艦へ突き刺さった。


ドォォォォォォン!!


「な、なんだ!? エンジンが……!」

「被弾! 左舷機関部、大破しました!」

「たった一本の矢でだと!?」


戦艦が大きく傾く。

屋上に立っていたのは、身の丈ほどの大弓を構えたダークエルフ、セレンだった。


彼女の背後には、数百人のダークエルフ部隊が整列している。

全員が、俺から与えられたダンジョン製強化装備(SSR)を身につけていた。


『警告する。……次の一射は、その眉間を貫く』


セレンの冷徹な声が、魔法で増幅されて響き渡る。


「馬鹿な……! 下等なダークエルフごときが、帝国の最新鋭艦を……!」


アレクが狼狽える。


俺はマイクに向かって、最後通告をした。


『聞いたか、勇者くん』

『うちの警備員(ダークエルフ)は優秀でな。……あと3秒で、お前らの船はスクラップだ』


「く、くそっ……! 覚えてろ魔王! 次は必ず……!」


「総員、撤退! 撤退だぁぁぁ!」


勇者の号令(悲鳴)と共に、戦艦グロリアスは黒煙を上げながら、無様に回頭して逃げ出した。


その背中に、リリアーヌの冷たい一言が追い打ちをかける。


「あーあ。……うるさいハエがいなくなって、やっと静かになりましたね」


バリボリ。


《勇者(笑)》

《ポテチ姫最強》

《ダークエルフ強すぎワロタ》

《一矢で戦艦落とすとか、もう国じゃん》

《今日の配信も神回でした》


俺は逃げていく戦艦を見送りながら、リリアーヌの頭を撫でた。


「よく言った。……ご褒美に、課金アイテム買ってやるよ」


「本当ですか!? やったー! カイト様大好き!」


リリアーヌが満面の笑みで抱きついてくる。

ミオが後ろで「チッ」と舌打ちしたのが聞こえたが、まあいい。


勇者を撃退し、姫を堕落(?)させ、最強の防衛力を証明した。

ダンジョン都市カイトの威名は、これで不動のものとなったのだ。


だが、俺たちはまだ知らなかった。

逃げ帰った勇者が、「魔王は姫を洗脳して操っている」というあることないことを世界中に吹聴し、さらなる面倒事を引き連れてくることを。
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