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第30話 運営のトップが「一般客」として潜入調査にきた。粗探しするつもりが、サウナと飯で秒で堕ちる
「いらっしゃいませ! アヴァロン・リゾートへようこそ!」
グランドオープン初日。
かつて星喰いのバグが蠢いていた未開の次元は、多元宇宙で最も華やかな超高級リゾートへと変貌を遂げていた。
エントランスには、地球のダンジョン都市から派遣されたエルフや獣人のメイドたちが並び、眩しい笑顔で客を出迎えている。
ミオが多元宇宙のネットワークに勝手に広告を流した結果、ゲートを通って現れるのはとんでもないVIPばかりだった。
「おお……ここが噂の、世界樹を独り占めできるというリゾートか。我ら炎の精霊界にはない潤いだ」
「一泊一千万DPだと? 安いものだ。百年分の予約を入れておけ」
他の次元を統べる精霊王や、異世界の魔王、さらには神話の神々までもが、バカンスを求めて押し寄せている。
俺は司令室のモニターから、順調に増えていく売上(DP)のカウンターを眺めてニヤリと笑った。
「大繁盛だな。……お、あの水上レストラン、結構人気じゃないか」
俺がインベントリでパクった運営の超巨大戦艦『ジャッジメント』。
それをそのまま海に浮かべ、内装を改造した特設レストランは、神々にとって「運営の戦艦で飯を食う」という最高の背徳感を味わえると大好評だった。
「お兄ちゃん、客層が濃すぎて地球の富豪たちがビビってるよ」
ミオが笑いながらタブレットを操作する。
「でもね、一人だけちょっと『怪しい客』が混ざってるんだ」
ミオが防犯カメラの映像を一つ拡大した。
そこに映っていたのは、エントランスの隅で深々とフードを被り、周囲を鋭い目で睨みつけている男だった。
その体からは、隠しきれない高次元の魔力が漏れ出している。
「……誰だ、こいつ」
「多元宇宙管理機構の最高監査官、『ゼノン』だよ。武力介入に失敗したから、今度は一般客を装って潜入調査に来たみたい」
なるほど。
軍隊がダメなら、法律とルールの粗探しで営業停止に追い込もうという魂胆か。
食品衛生法違反だの、違法建築だのと難癖をつける気満々なのだろう。
「面白い。……最高の『おもてなし』をしてやろうぜ」
俺はリリアーヌとエルルフたちに、インカムで特別な指示を出した。
「ふん。下等な次元の成り上がりが作ったホテルなど、少し調べればボロが出るはずだ」
最高監査官ゼノンは、あてがわれた最高級のスイートルームを鋭い目つきで検分していた。
だが、部屋の隅々まで見ても、チリ一つ落ちていない。
それどころか、家具は神話級の素材で設えられ、窓からは世界樹の絶景が見える。
天界の神殿よりも遥かに豪華だった。
「くっ……内装だけは一丁前か。だが、サービスや設備には必ず綻びがある!」
ゼノンが鼻息を荒くして向かったのは、大浴場だった。
「温泉だと? 我々神族は、不浄な湯などには浸からん。……まずはあの『サウナ』とやらを視察して、低俗な娯楽だと報告書にまとめてやる」
ゼノンはバスタオル一枚になり、ヒノキの香りが漂うサウナ室の扉を開けた。
ムワッ。
強烈な熱気と、世界樹のマナが混ざり合った濃密な空気が、彼を包み込む。
「な、なんだこの異常な熱さは! こんな密室に客を閉じ込めるなど、拷問ではないか! よし、これを理由に営業停止を……」
ゼノンがメモ帳を取り出そうとした、その時。
『チリリリリ!』
サウナストーンに自動で水が注がれ、強烈な蒸気(ロウリュ)が発生した。
「あつっ!? ひぃぃぃ! だが……この蒸気、世界樹の純粋なマナか!? 毛穴から神力が満たされていく……!」
ゼノンは文句を言いながらも、その圧倒的な心地よさに足を止めてしまった。
十分後。
限界まで温まったゼノンは、フラフラとサウナ室を出て、目の前にある『絶対零度の氷水風呂(魔王の氷結魔法仕込み)』へと飛び込んだ。
「冷たっ! 心臓が止ま……いや、違う!」
急激な温度変化により、神族の強靭な肉体に『究極の弛緩』が訪れる。
ゼノンは水風呂から這い出し、露天風呂の横にある外気浴用のリクライニングチェアに倒れ込んだ。
エメラルドの空を眺めながら、彼の脳内に雷のような快感が突き抜ける。
「あ、あぁぁぁ……世界が……宇宙が回る……これが……『整う』ということか……」
最高監査官の目は完全に虚ろになり、だらしない笑みを浮かべていた。
もはや監査のことなど、脳の片隅にも残っていない。
「お客様、湯上がりの一杯はいかがですか?」
そこへ、メイド服姿のリリアーヌが、キンキンに冷えた『ダンジョン特製・フルーツ牛乳』をお盆に乗せて現れた。
「牛乳だと? 神である私に、牛の乳など……」
ゼノンは文句を言いかけたが、喉の渇きに耐えきれず、腰に手を当てて一気にそれを飲み干した。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!!
「な、なんだこれはぁぁぁっ!?」
ゼノンが叫んだ。
「濃厚なミルクの甘味と、未知の果実の酸味! それが、サウナで乾ききった神の細胞一つ一つに染み渡っていく……! 天界のアムリタ(神酒)すら泥水に思えるほどの美味!」
「お気に召して幸いです。……追加で、神話級和牛のステーキ串もございますが?」
リリアーヌが悪魔の微笑みで、ジュージューと音を立てる肉の塊を差し出す。
「食う! 食うに決まっているだろう! いくらだ!? 金(DP)ならいくらでも払う!」
ゼノンは監査用の経費カード(無制限)をリリアーヌに叩きつけ、猛然と肉に噛み付いた。
「うまい! うまいぞおおおお! こんな素晴らしい施設を違法建築などと呼ぶ奴は、私が消し飛ばしてやる!」
《監査官、チョロすぎwww》
《サウナとフルーツ牛乳のコンボは神にも効く》
《経費で豪遊し始めてて草》
《営業停止どころか常連客ゲットだな》
《運営のトップが堕ちた瞬間である》
司令室でその様子を配信していた俺たちは、腹を抱えて笑っていた。
「お兄ちゃん、あの人、経費カードで『スイートルーム1年分』の延長申請してきたよ」
「いいぞ。限界まで絞り取ってやれ」
一方その頃、多元宇宙管理機構の本部では。
「き、緊急事態です! ゼノン最高監査官が、敵のリゾートで超VIP会員になり、機構の国家予算レベルのDPを使い込んでいます!」
オペレーターの悲痛な報告に、残された幹部たちは泡を吹いて次々と気絶していくのだった。
武力でも経済でも、もはや俺のダンジョン(リゾート)を止められる者は、この宇宙のどこにも存在しなかった。
グランドオープン初日。
かつて星喰いのバグが蠢いていた未開の次元は、多元宇宙で最も華やかな超高級リゾートへと変貌を遂げていた。
エントランスには、地球のダンジョン都市から派遣されたエルフや獣人のメイドたちが並び、眩しい笑顔で客を出迎えている。
ミオが多元宇宙のネットワークに勝手に広告を流した結果、ゲートを通って現れるのはとんでもないVIPばかりだった。
「おお……ここが噂の、世界樹を独り占めできるというリゾートか。我ら炎の精霊界にはない潤いだ」
「一泊一千万DPだと? 安いものだ。百年分の予約を入れておけ」
他の次元を統べる精霊王や、異世界の魔王、さらには神話の神々までもが、バカンスを求めて押し寄せている。
俺は司令室のモニターから、順調に増えていく売上(DP)のカウンターを眺めてニヤリと笑った。
「大繁盛だな。……お、あの水上レストラン、結構人気じゃないか」
俺がインベントリでパクった運営の超巨大戦艦『ジャッジメント』。
それをそのまま海に浮かべ、内装を改造した特設レストランは、神々にとって「運営の戦艦で飯を食う」という最高の背徳感を味わえると大好評だった。
「お兄ちゃん、客層が濃すぎて地球の富豪たちがビビってるよ」
ミオが笑いながらタブレットを操作する。
「でもね、一人だけちょっと『怪しい客』が混ざってるんだ」
ミオが防犯カメラの映像を一つ拡大した。
そこに映っていたのは、エントランスの隅で深々とフードを被り、周囲を鋭い目で睨みつけている男だった。
その体からは、隠しきれない高次元の魔力が漏れ出している。
「……誰だ、こいつ」
「多元宇宙管理機構の最高監査官、『ゼノン』だよ。武力介入に失敗したから、今度は一般客を装って潜入調査に来たみたい」
なるほど。
軍隊がダメなら、法律とルールの粗探しで営業停止に追い込もうという魂胆か。
食品衛生法違反だの、違法建築だのと難癖をつける気満々なのだろう。
「面白い。……最高の『おもてなし』をしてやろうぜ」
俺はリリアーヌとエルルフたちに、インカムで特別な指示を出した。
「ふん。下等な次元の成り上がりが作ったホテルなど、少し調べればボロが出るはずだ」
最高監査官ゼノンは、あてがわれた最高級のスイートルームを鋭い目つきで検分していた。
だが、部屋の隅々まで見ても、チリ一つ落ちていない。
それどころか、家具は神話級の素材で設えられ、窓からは世界樹の絶景が見える。
天界の神殿よりも遥かに豪華だった。
「くっ……内装だけは一丁前か。だが、サービスや設備には必ず綻びがある!」
ゼノンが鼻息を荒くして向かったのは、大浴場だった。
「温泉だと? 我々神族は、不浄な湯などには浸からん。……まずはあの『サウナ』とやらを視察して、低俗な娯楽だと報告書にまとめてやる」
ゼノンはバスタオル一枚になり、ヒノキの香りが漂うサウナ室の扉を開けた。
ムワッ。
強烈な熱気と、世界樹のマナが混ざり合った濃密な空気が、彼を包み込む。
「な、なんだこの異常な熱さは! こんな密室に客を閉じ込めるなど、拷問ではないか! よし、これを理由に営業停止を……」
ゼノンがメモ帳を取り出そうとした、その時。
『チリリリリ!』
サウナストーンに自動で水が注がれ、強烈な蒸気(ロウリュ)が発生した。
「あつっ!? ひぃぃぃ! だが……この蒸気、世界樹の純粋なマナか!? 毛穴から神力が満たされていく……!」
ゼノンは文句を言いながらも、その圧倒的な心地よさに足を止めてしまった。
十分後。
限界まで温まったゼノンは、フラフラとサウナ室を出て、目の前にある『絶対零度の氷水風呂(魔王の氷結魔法仕込み)』へと飛び込んだ。
「冷たっ! 心臓が止ま……いや、違う!」
急激な温度変化により、神族の強靭な肉体に『究極の弛緩』が訪れる。
ゼノンは水風呂から這い出し、露天風呂の横にある外気浴用のリクライニングチェアに倒れ込んだ。
エメラルドの空を眺めながら、彼の脳内に雷のような快感が突き抜ける。
「あ、あぁぁぁ……世界が……宇宙が回る……これが……『整う』ということか……」
最高監査官の目は完全に虚ろになり、だらしない笑みを浮かべていた。
もはや監査のことなど、脳の片隅にも残っていない。
「お客様、湯上がりの一杯はいかがですか?」
そこへ、メイド服姿のリリアーヌが、キンキンに冷えた『ダンジョン特製・フルーツ牛乳』をお盆に乗せて現れた。
「牛乳だと? 神である私に、牛の乳など……」
ゼノンは文句を言いかけたが、喉の渇きに耐えきれず、腰に手を当てて一気にそれを飲み干した。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!!
「な、なんだこれはぁぁぁっ!?」
ゼノンが叫んだ。
「濃厚なミルクの甘味と、未知の果実の酸味! それが、サウナで乾ききった神の細胞一つ一つに染み渡っていく……! 天界のアムリタ(神酒)すら泥水に思えるほどの美味!」
「お気に召して幸いです。……追加で、神話級和牛のステーキ串もございますが?」
リリアーヌが悪魔の微笑みで、ジュージューと音を立てる肉の塊を差し出す。
「食う! 食うに決まっているだろう! いくらだ!? 金(DP)ならいくらでも払う!」
ゼノンは監査用の経費カード(無制限)をリリアーヌに叩きつけ、猛然と肉に噛み付いた。
「うまい! うまいぞおおおお! こんな素晴らしい施設を違法建築などと呼ぶ奴は、私が消し飛ばしてやる!」
《監査官、チョロすぎwww》
《サウナとフルーツ牛乳のコンボは神にも効く》
《経費で豪遊し始めてて草》
《営業停止どころか常連客ゲットだな》
《運営のトップが堕ちた瞬間である》
司令室でその様子を配信していた俺たちは、腹を抱えて笑っていた。
「お兄ちゃん、あの人、経費カードで『スイートルーム1年分』の延長申請してきたよ」
「いいぞ。限界まで絞り取ってやれ」
一方その頃、多元宇宙管理機構の本部では。
「き、緊急事態です! ゼノン最高監査官が、敵のリゾートで超VIP会員になり、機構の国家予算レベルのDPを使い込んでいます!」
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