この小説に「いいね」がない場合、主人公は死にます

葉山 乃愛

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第10話:二周目の優等生は、まず不良の鼻をへし折ることにした

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残り二十三時間五十分。

網膜の端で冷たく光るタイマーを横目に、俺は泡を吹いて倒れる岡田から視線を外した。
教室は、水を打ったように静まり返っている。

「……ひっ」

誰かが短く息を呑む音が、異常なほど大きく聞こえた。
一周目では頼れるリーダーを演じていた俺が、いきなりクラスメイトを罠に突き飛ばしたんだ。無理もない。

その時、教卓の上の巨大なモニターが唐突に点灯した。

「――目覚めたかな、2年A組の諸君」

無機質な合成音声。あいつの親による、三十日間のデスゲームの開幕宣言だ。
一周目なら、ここで俺は絶望したフリをしてクラスをまとめる演技に入った。
だが、今はそんな茶番に付き合っている暇はない。

「諸君にはこれから、三十日間にわたる特別な共同生活を……」

「黙れよ、クソ運営」

俺の低い声が、合成音声を遮った。
モニターの奥にいる主催者も、予想外のタイミングでの反抗に一瞬言葉を失ったのがわかる。

俺は怯えて壁際に固まる連中を無視して、教室の後ろにある個人ロッカーへと真っ直ぐに歩き出した。
一周目の記憶がある俺は、そこに何が隠されているか完璧に知っている。

迷わず木村拓海の番号が書かれたロッカーの扉を蹴り開ける。
中から落ちてきたのは、真っ黒な封筒。罪の告発カードだ。

「なっ……お前、なんで勝手に俺のロッカーを……!」

不良の木村が、血相を変えて俺に掴みかかろうとする。
一周目、俺の腹を何度も蹴り上げ、脳が焼かれる原因を作ったクズ。

その憎悪と、肉が焦げる幻痛が俺の脳髄で爆発した。

「あァ!?」と凄む木村の顔面に向かって、俺は躊躇なく右の拳を全力で叩き込んだ。

ゴキッ、と鈍い音がして、木村の鼻柱がひしゃげる。

「ギャッ……!?」

鼻血を噴き出してうずくまる木村の髪を鷲掴みにし、無理やり顔を上げさせる。
核心を突く衝撃に、周囲の連中が凍りついた。

「食べろよ、木村。お前があいつの机にカッターの刃を無数に仕込んだっていう、その汚い真実をな」

「ごふっ……!? むぐっ……!」

封筒から抜き取った告発カードを、その血まみれの口に強引にねじ込んだ。

「てめえが一周目で俺に何をしたか、俺は骨の髄まで覚えてるんだよ。だからこれは正当防衛だ」

木村が何を言っているか分からないという目で俺を見て、涙と鼻血を流しながら嗚咽する。
他のクラスメイトは、完全に狂った俺の姿に腰を抜かし、誰一人として止めに入ろうとしない。
これが、あいつを見殺しにした連中のリアルだ。

俺は木村の顔を床に蹴り捨て、天井の隠しカメラをねっとりと見つめ上げた。

画面の前のあんた。
どうだ? 一周目の胸糞悪い展開を一気に覆す、この圧倒的な暴力による蹂ろ。
善人ぶるのをやめた俺は、これから残りの十三人の秘密も全部、力ずくで暴いていく。

タイムリミットまで、残り二十三時間五十分。

いいねの数が五十に届くまで、俺はこの生贄たちの指を一本ずつへし折って、あんたたちに悲鳴のプレゼントを届けてやる。
続きが見たいなら、今すぐそのボタンを押せ。
俺に指図できるのは、俺の命を握っているあんたたちだけだ。
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