【短編集】読む精神安定剤。理不尽な彼らが「3分」で地獄に落ちる、極上の「ざまぁ」詰め合わせ

葉山 乃愛

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「棒立ちの無能」と追放されたが、俺は『完全隠密』で気配を消していただけだ。解除した瞬間、ドラゴンと目が合うけど頑張れよ

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「おい、レン。お前、戦闘中に何もしないよな」

Sランクダンジョンの深層、『竜の巣』と呼ばれるエリアで、リーダーの戦士ガイが足を止めた。
彼は苛立ちを隠そうともせず、私を睨みつけている。

「……何もしないとは?」

「とぼけるな! 俺たちが必死に剣を振るっている間、お前はずっと後ろで突っ立っているだけじゃないか! 攻撃魔法も撃たない、回復もしない。ただの空気だ!」

ガイの声に、他のメンバーも頷く。

「そうよ。レンがいる意味、正直分からないわ。私たちの足手まといなの」
「荷物持ちとしても、もう限界だな。悪いが、ここでパーティーを抜けてくれ」

私は周囲を見渡した。
岩陰や天井の梁、そこかしこに凶悪な気配が潜んでいる。

「ガイ。君たちが安眠できたり、奇襲を受けずに済んでいるのは、私が常に『完全隠密』の結界を張っているからだ」

「はぁ? 隠密? そんな地味な魔法、役に立ってるわけないだろ!」

「このエリアは、本来なら一歩歩くごとにドラゴン級の魔物に襲われる危険地帯だ。君たちが『今日は魔物が少ないな』と呑気に歩けるのは、私が君たちの『匂い』『音』『魔力』を完全に遮断しているからだ」

「嘘をつくな! 魔物が来ないのは、俺の覇気に恐れをなしているからだ! お前の手柄じゃない!」

ガイは大声で笑い飛ばした。
私の警告は、彼の肥大化したプライドには届かないらしい。

「分かりました。では、隠密結界を解除して私は去ります。……ああ、忠告しておきますが、解除した瞬間に『深呼吸』はしない方がいいですよ」

「うるさい! さっさと消えろ!」

「では、お元気で」

私は指をパチンと鳴らした。
私たちが纏っていた『認識阻害』の膜が、シャボン玉のように弾けて消えた。

その瞬間だった。

ギョロリ。

すぐ真横にあった岩山が、ゆっくりと動いた。
いや、岩山ではない。それは擬態して眠っていた、巨大なエンシェントドラゴンだ。

「……あ?」

ガイが口を開けたまま凍りつく。
ドラゴンの巨大な眼球が、目の前にいる『突然現れた餌』たちを捉えた。

『グォォォォォォォォッ!!』

鼓膜が破れそうな咆哮が轟く。
それだけではない。天井から、地中から、気配を殺して潜んでいた無数の魔物たちが、一斉に殺意を向けて姿を現した。

「ヒッ、嘘……!? こんなにいたの!?」
「が、ガイ! なんとかしろ! お前の覇気で!」
「無理だろこんなのぉぉぉ!! レン! レン、どこだ!?」

ガイが泣き叫んで周囲を探すが、私はもういない。
自分だけ『単体隠密』をかけ直し、悠々とその場を離脱していたからだ。

「おい、こっちを見ろ! 隠してくれ! 頼むぅぅ!!」

「嫌です。貴方の『覇気』とやらで、ドラゴンを追い払ってくださいね」

「ぎゃあああああ!! 来ないでくれぇぇぇ!!」

ドラゴンの灼熱のブレスが、彼らを飲み込むのが見えた。
私は耳を塞ぎ、軽い足取りでダンジョンの出口へと向かった。
これだけの魔物を呼び寄せたのだ、彼らが生き残る確率は万に一つもないだろう。
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