【短編集】読む精神安定剤。理不尽な彼らが「3分」で地獄に落ちる、極上の「ざまぁ」詰め合わせ

葉山 乃愛

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「荷物持ちは戦力外だ」と追放されましたが、私のアイテムボックスは収納物の『時間を停止』しています。

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「おい、カズマ。今回の探索が終わったら、お前はクビだ」

Sランクダンジョン『古の腐海』の最深部、ドラゴン討伐を目前に控えた休憩中だった。
リーダーの剣士グレンが、拾ったばかりのレアアイテムを鑑定しながら、事も無げに言った。

「……クビ? ここまで来てか?」

「ああ。お前みたいな『アイテムボックス』しか能がない荷物持ちに、報酬を山分けするのが馬鹿らしくなったんだよ。見てみろ、この輝く魔剣を! 俺の実力があれば、回復薬なんていらないし、荷物持ちなんて雇わなくても全部自分で持って帰れる」

グレンは手に入れたばかりの魔剣を掲げてうっとりしている。
隣にいる盗賊の少女も、意地悪く笑って同意した。

「そうよねぇ。カズマのボックスって、出し入れする時に一瞬ラグがあるし、正直使い勝手悪いのよ。私たちが命がけで戦ってるのに、後ろで涼しい顔して荷物番してるだけなんて、ズルいと思わない?」

私は溜息をつき、周囲の壁にこびりついた苔を見た。
このダンジョンは、その名の通り『腐海』だ。
あらゆる物質を急速に風化させ、朽ちさせる強力な『経年劣化の呪い』が満ちている。

「グレン。君たちが装備している剣や鎧、そしてその新しい魔剣。なぜ、この湿気と呪いの中でピカピカのままだと思っているんだ?」

「はあ? 手入れが良いからに決まってんだろ。俺は道具を大事にする男だからな」

「違う。私がボックスの『亜空間領域』を拡張して、君たちの周囲だけ『時間停止』の結界を展開しているからだ」

「……は?」

「私のスキルは単なる収納じゃない。『時空間凍結』だ。収納した物、あるいは私の魔力が届く範囲にある物の時間を完全に止めることができる。だから、このダンジョンの『劣化呪い』を受けても、君たちの剣は錆びないし、ポーションも腐らないんだ」

グレンは鼻で笑った。

「またそれか。お前、自分が役に立ってるってアピールするために、すぐそうやって嘘をつくよな。時間停止? そんな神話級の魔法が使えるなら、お前が魔王を倒せるだろ」

「戦闘には使えないんだよ、対象が『無機物』限定だからね。……でも、クビにするなら好都合だ。この結界を維持するのは、かなりの魔力を消費するから疲れるんだ」

私は立ち上がり、背中のリュックを直した。

「じゃあ、ここで失礼するよ。帰り道は『転移石』を使うから心配しないでくれ」

「おう、勝手にしろ! その代わり、置いていくポーションと食料は全部置いてけよ! 俺たちの金で買ったもんだからな!」

「分かりました。全部置いていきます。……ただし、品質の保証はしませんよ」

私はボックスから大量のポーションと保存食を取り出し、地面に並べた。
そして、指をパチンと鳴らした。

『領域結界、解除』

私が彼らと物資にかけていた時間停止の魔法が解けた。
ダンジョンの『本来の時間』が、彼らに襲いかかる。

「ふん、やっと消えたか。……よし、じゃあ早速、この新しい魔剣の切れ味を試して……ん?」

グレンが魔剣を振ろうとした、その時だった。

バキッ。

乾いた音がして、魔剣の刀身が根元から折れた。
いや、折れたのではない。
刀身が茶色く変色し、ボロボロに崩れ落ちたのだ。

「えっ……? な、なんだこれ!? 錆び……!?」

「きゃあああっ!? グレン、私の短剣も! ボロボロになってる!」

盗賊の少女が悲鳴を上げる。彼女のミスリル製の短剣も、見る見るうちに赤錆に覆われ、ただの鉄屑へと変わっていく。
それだけではない。
グレンが着ている最高級のプレートメイルも、継ぎ目が腐食してバラバラと崩れ落ち始めた。

「な、ななな、なんだこれはぁぁぁ!? 俺の装備が! 国宝級の剣がぁぁぁ!!」

「ポ、ポーション! ポーション飲んで落ち着いて!」

少女が慌てて地面に置かれたポーションの瓶を掴む。
だが、その中の液体は鮮やかな赤色ではなく、ドロドロとした黒いヘドロに変質していた。

「うえっ!? なにこれ、臭い!」

「『急速劣化』だよ。私が魔法を解いた瞬間、数百年分の時間が経過したのと同じ状態になったんだ。ポーションは腐って猛毒になり、パンはカビの塊になり、鉄は土に還る」

私は転移石を握りしめながら、パニックになる彼らを冷ややかに見つめた。

「そ、そんな……嘘だろ!? カズマ、戻せ! 時間を戻せ!」

パンツ一丁に近い無様な姿になったグレンが、私の足元にすがりつこうとする。
だが、その手にはもう剣も権威もない。

「無理だよ。一度進んでしまった時間は、もう戻らない。……ああ、そうだ」

私は天井を指差した。

「ドラゴンが起きたみたいだね。装備も武器も回復薬もない状態で、どうやって戦うのか見ものだな」

『グルルルルル……!』

奥から巨大なドラゴンの咆哮が響く。
グレンと少女は顔を見合わせ、絶望に顔を歪めた。
腐った剣の柄を握りしめ、震えている。

「カズマぁぁぁ! 頼む、助けてくれぇぇぇ!!」
「いやぁぁぁ! 死にたくないぃぃぃ!!」

「君たちが言ったんだろ? 『自分たちだけで全部持って帰れる』って。その鉄屑、大事に持って帰ってね」

私は転移石を起動した。
視界が歪む中、ドラゴンブレスの閃光と、断末魔の叫びが混じり合うのが見えた。
最高の見世物だったが、長居すると私の服まで劣化しそうなので、さっさとオサラバするとしよう。
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