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「罠にかからないから盗賊は不要」と追放されたが、俺が全自動で解除していただけだ。一歩歩けば矢が飛ぶし床は抜けるが、ダンスでも踊るか?
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「おい、キース。お前、明日から来なくていいぜ」
Sランクダンジョン『処刑人の迷宮』の攻略中、リーダーの戦士ボルトが鼻をほじりながら言った。
「……クビってことか? この罠だらけのダンジョンで、盗賊の俺を?」
「罠だらけ? ハッ、何を寝ぼけたこと言ってんだ。俺たちがここに入ってから3日間、一度だって罠にかかってねぇぞ? 落とし穴も毒矢もガスもない。ただの散歩道だ」
ボルトは床をバンバンと足で踏み鳴らした。
後ろの僧侶も、呆れたようにため息をつく。
「そうですね。キースさんが『罠がある』って言う場所を調べても、結局何も作動しないですし。……もしかして、自分が活躍したフリをするために、適当に嘘ついてませんか?」
「正直、お前がいると警戒して歩くのが馬鹿らしくなるんだよ。報酬泥棒は消えてくれ」
私はこめかみを揉んだ。
このダンジョンは、別名『1歩で10回死ぬ迷宮』。
床のタイルの9割が感圧式の地雷で、壁には無数の毒針発射口、天井には圧死用の鉄塊が仕込まれている。
「ボルト。君たちが罠にかからないのは、私が半径50メートル以内の罠を、君たちが踏む0.1秒前に『超速解除』し続けているからだ」
「はぁ? 0.1秒前? 人間業じゃねぇよそんなの。漫画の読みすぎだろ」
「君が今踏んでいるその石畳も、踏むと溶解液が噴き出す仕掛けだった。私が裏の配管を魔法で詰まらせて無効化したんだ」
「あーはいはい。すごいすごい。……もういいから消えろよ。俺の『直感』スキルがあれば、本当の罠くらい避けられるんだよ」
ボルトは聞く耳を持たず、私を追い払うように手を振った。
僧侶も冷たい目で見ている。
「分かりました。では、解除魔法も解いていきますね。……帰り道、足元には気をつけて」
「うるせぇ! 二度と面見せんな!」
私は肩をすくめ、転移スクロールを取り出した。
そして、維持していた『領域無効化』の結界をパチンと切った。
「じゃあ、お元気で」
私が光に包まれて消えた、その直後だった。
カチッ。
ボルトが何気なく一歩を踏み出した足元から、乾いた音が響いた。
「ん?」
シュパパパパパッ!!
「うおっ!? な、なんだ!? 壁から矢が!?」
左右の壁から、無数のクロスボウが一斉に発射された。
ボルトは慌てて飛び退くが、着地した場所でまた――カチッ。
ドォォォン!!
「ぎゃあああっ!? 爆発!? 床が爆発したぁぁ!!」
「キャアアアッ!? ボルト、天井! 天井が落ちてくるわ!!」
「嘘だろ!? 俺の直感は!? なんで全部反応するんだぁぁ!?」
ボルトが逃げようと走るたびに、カチッ、カチッ、カチッと軽快な音が鳴り響く。
その度に、火炎放射が浴びせられ、槍が飛び出し、床が抜けていく。
「い、痛い! 矢が! 全身に刺さって……!」
「動けない! 動くと罠が! でも天井がぁぁぁ!!」
「キース! キースぅぅぅ! 嘘だろ!? 戻ってくれぇぇぇ!!」
『処刑人の迷宮』が、本来の牙を剥いたのだ。
そこは一歩歩くだけで死が待っている、ダンスフロアのような地獄。
盗賊なしで足を踏み入れていい場所ではなかったのだ。
私は転移の光の中で、彼らが無数の罠の連鎖(コンボ)に飲み込まれていく様を見届けた。
……さて、次のパーティーでは「罠がある」という証拠を見せるために、あえて一つくらい作動させてみようかな。
Sランクダンジョン『処刑人の迷宮』の攻略中、リーダーの戦士ボルトが鼻をほじりながら言った。
「……クビってことか? この罠だらけのダンジョンで、盗賊の俺を?」
「罠だらけ? ハッ、何を寝ぼけたこと言ってんだ。俺たちがここに入ってから3日間、一度だって罠にかかってねぇぞ? 落とし穴も毒矢もガスもない。ただの散歩道だ」
ボルトは床をバンバンと足で踏み鳴らした。
後ろの僧侶も、呆れたようにため息をつく。
「そうですね。キースさんが『罠がある』って言う場所を調べても、結局何も作動しないですし。……もしかして、自分が活躍したフリをするために、適当に嘘ついてませんか?」
「正直、お前がいると警戒して歩くのが馬鹿らしくなるんだよ。報酬泥棒は消えてくれ」
私はこめかみを揉んだ。
このダンジョンは、別名『1歩で10回死ぬ迷宮』。
床のタイルの9割が感圧式の地雷で、壁には無数の毒針発射口、天井には圧死用の鉄塊が仕込まれている。
「ボルト。君たちが罠にかからないのは、私が半径50メートル以内の罠を、君たちが踏む0.1秒前に『超速解除』し続けているからだ」
「はぁ? 0.1秒前? 人間業じゃねぇよそんなの。漫画の読みすぎだろ」
「君が今踏んでいるその石畳も、踏むと溶解液が噴き出す仕掛けだった。私が裏の配管を魔法で詰まらせて無効化したんだ」
「あーはいはい。すごいすごい。……もういいから消えろよ。俺の『直感』スキルがあれば、本当の罠くらい避けられるんだよ」
ボルトは聞く耳を持たず、私を追い払うように手を振った。
僧侶も冷たい目で見ている。
「分かりました。では、解除魔法も解いていきますね。……帰り道、足元には気をつけて」
「うるせぇ! 二度と面見せんな!」
私は肩をすくめ、転移スクロールを取り出した。
そして、維持していた『領域無効化』の結界をパチンと切った。
「じゃあ、お元気で」
私が光に包まれて消えた、その直後だった。
カチッ。
ボルトが何気なく一歩を踏み出した足元から、乾いた音が響いた。
「ん?」
シュパパパパパッ!!
「うおっ!? な、なんだ!? 壁から矢が!?」
左右の壁から、無数のクロスボウが一斉に発射された。
ボルトは慌てて飛び退くが、着地した場所でまた――カチッ。
ドォォォン!!
「ぎゃあああっ!? 爆発!? 床が爆発したぁぁ!!」
「キャアアアッ!? ボルト、天井! 天井が落ちてくるわ!!」
「嘘だろ!? 俺の直感は!? なんで全部反応するんだぁぁ!?」
ボルトが逃げようと走るたびに、カチッ、カチッ、カチッと軽快な音が鳴り響く。
その度に、火炎放射が浴びせられ、槍が飛び出し、床が抜けていく。
「い、痛い! 矢が! 全身に刺さって……!」
「動けない! 動くと罠が! でも天井がぁぁぁ!!」
「キース! キースぅぅぅ! 嘘だろ!? 戻ってくれぇぇぇ!!」
『処刑人の迷宮』が、本来の牙を剥いたのだ。
そこは一歩歩くだけで死が待っている、ダンスフロアのような地獄。
盗賊なしで足を踏み入れていい場所ではなかったのだ。
私は転移の光の中で、彼らが無数の罠の連鎖(コンボ)に飲み込まれていく様を見届けた。
……さて、次のパーティーでは「罠がある」という証拠を見せるために、あえて一つくらい作動させてみようかな。
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