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「足が遅い」と追放されたが、俺は君の『超重装鎧』を無重力にしていただけだ。解除したら2トンの鉄塊にプレスされるけど、自力で立てるか?
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「おい、レオン。お前、歩くのが遅すぎるんだよ」
Sランクダンジョンの長い回廊を移動中、全身を漆黒のフルプレートアーマーで固めた戦士ガドが、イライラした様子で振り返った。
「……遅い? これでも精一杯ついていってるつもりだが」
「言い訳するな! 俺を見てみろ。この伝説の金属『オリハルコン』の鎧を装備しても、羽のように軽やかに動ける。これが一流の肉体ってやつだ。お前みたいな貧弱な付与術師が近くにいると、ペースが乱れるんだよ」
ガドはその場で軽くジャンプしてみせた。
金属の塊を着ているとは思えないほど、軽快な動きだ。
後ろにいる盗賊も、クスクスと笑っている。
「そうだな。ガドのスピードについてこれない奴は、このパーティーにはいらないな。レオン、お前はここでクビだ」
「……本気か? このダンジョンはまだ中間地点だぞ」
「ああ、本気だ。お前の分の食料も浮くし、ちょうどいい。さっさと国に帰って、農作業でもしてろ」
私は溜息をついた。
ガドが着ているその鎧、そして背負っている大剣。
全て合わせれば総重量は『2トン』を超える。
「ガド。君がその重装備で飛び跳ねられるのは、君の筋力があるからじゃない。私が『重力キャンセル』と『質量無視』の魔法を、君の装備一式にかけているからだ」
「はぁ? またそれか。お前、俺の鍛え上げた筋肉を否定したいだけだろ? 見苦しいんだよ!」
「普通の人間が2トンの鉄塊を着て動けるわけがないだろう。私が魔法を解除すれば、君はその場から一歩も動けなくなるぞ」
「ハッ! やってみろよ! 俺のパワーなら、こんな鎧くらい着てないも同然だ! ほら、さっさと消えろ!」
ガドは私を追い払うようにシッシッと手を振った。
盗賊も「早く行ってよ、ノロマ」と石を投げてくる。
「分かった。じゃあ、重力制御を解除する。……君の背骨が、その重さに耐えられるといいな」
「うるせぇ! 二度と面見せんな!」
私は肩をすくめ、転移スクロールを取り出した。
そして、ガドの装備にかけていた『魔力フック』をパチンと外した。
「じゃあ、さようなら」
転移の光が私を包み込んだ、その瞬間だった。
ズガンッ!!!
「ぐえっ……!?」
ものすごい地響きと共に、ガドの体が地面にめり込んだ。
いや、めり込んだのではない。
2トンの重量が本来の重さを取り戻し、ガドを上から押し潰したのだ。
「が、ぁ……!? お、重い……! 動け……な……」
「えっ!? ガド!? どうしたの!?」
盗賊が慌てて駆け寄るが、ガドは地面に磔にされたようにピクリとも動かない。
鎧の継ぎ目から、ミシミシと骨が軋む音が聞こえる。
「た、助け……鎧が……脱げな……」
「ちょっと、ガド! 立ってよ! モンスターが来るわよ!」
「む、無理だ……! 指一本……動かせねぇ……! 潰れ……る……!」
「言っただろう。それは2トンの鉄塊だと」
私の姿はもう半分消えかけている。
「レオン! レオン待って! 軽くして! 死ぬ! 圧死するぅぅ!!」
「君の『一流の肉体』でなんとかしたまえ。ああ、それと」
私は最後に言い残した。
「この床、強度が低いから、2トンの一点集中荷重には耐えられないと思うよ」
バキバキバキッ!
私の言葉が終わるより早く、ガドの足元の床が崩壊した。
「ぎゃああああああ!! 落ちるぅぅぅぅ!!」
「嘘でしょぉぉぉ!? 私も巻き添えぇぇぇ!?」
奈落の底へと落下していく彼らの絶叫が、ダンジョンに木霊した。
2トンの重りをつけての落下だ。
着地の衝撃がどうなるか、想像するだけで痛々しい。
私は静かに目を閉じ、自分の軽い体で安らかな帰路についた。
Sランクダンジョンの長い回廊を移動中、全身を漆黒のフルプレートアーマーで固めた戦士ガドが、イライラした様子で振り返った。
「……遅い? これでも精一杯ついていってるつもりだが」
「言い訳するな! 俺を見てみろ。この伝説の金属『オリハルコン』の鎧を装備しても、羽のように軽やかに動ける。これが一流の肉体ってやつだ。お前みたいな貧弱な付与術師が近くにいると、ペースが乱れるんだよ」
ガドはその場で軽くジャンプしてみせた。
金属の塊を着ているとは思えないほど、軽快な動きだ。
後ろにいる盗賊も、クスクスと笑っている。
「そうだな。ガドのスピードについてこれない奴は、このパーティーにはいらないな。レオン、お前はここでクビだ」
「……本気か? このダンジョンはまだ中間地点だぞ」
「ああ、本気だ。お前の分の食料も浮くし、ちょうどいい。さっさと国に帰って、農作業でもしてろ」
私は溜息をついた。
ガドが着ているその鎧、そして背負っている大剣。
全て合わせれば総重量は『2トン』を超える。
「ガド。君がその重装備で飛び跳ねられるのは、君の筋力があるからじゃない。私が『重力キャンセル』と『質量無視』の魔法を、君の装備一式にかけているからだ」
「はぁ? またそれか。お前、俺の鍛え上げた筋肉を否定したいだけだろ? 見苦しいんだよ!」
「普通の人間が2トンの鉄塊を着て動けるわけがないだろう。私が魔法を解除すれば、君はその場から一歩も動けなくなるぞ」
「ハッ! やってみろよ! 俺のパワーなら、こんな鎧くらい着てないも同然だ! ほら、さっさと消えろ!」
ガドは私を追い払うようにシッシッと手を振った。
盗賊も「早く行ってよ、ノロマ」と石を投げてくる。
「分かった。じゃあ、重力制御を解除する。……君の背骨が、その重さに耐えられるといいな」
「うるせぇ! 二度と面見せんな!」
私は肩をすくめ、転移スクロールを取り出した。
そして、ガドの装備にかけていた『魔力フック』をパチンと外した。
「じゃあ、さようなら」
転移の光が私を包み込んだ、その瞬間だった。
ズガンッ!!!
「ぐえっ……!?」
ものすごい地響きと共に、ガドの体が地面にめり込んだ。
いや、めり込んだのではない。
2トンの重量が本来の重さを取り戻し、ガドを上から押し潰したのだ。
「が、ぁ……!? お、重い……! 動け……な……」
「えっ!? ガド!? どうしたの!?」
盗賊が慌てて駆け寄るが、ガドは地面に磔にされたようにピクリとも動かない。
鎧の継ぎ目から、ミシミシと骨が軋む音が聞こえる。
「た、助け……鎧が……脱げな……」
「ちょっと、ガド! 立ってよ! モンスターが来るわよ!」
「む、無理だ……! 指一本……動かせねぇ……! 潰れ……る……!」
「言っただろう。それは2トンの鉄塊だと」
私の姿はもう半分消えかけている。
「レオン! レオン待って! 軽くして! 死ぬ! 圧死するぅぅ!!」
「君の『一流の肉体』でなんとかしたまえ。ああ、それと」
私は最後に言い残した。
「この床、強度が低いから、2トンの一点集中荷重には耐えられないと思うよ」
バキバキバキッ!
私の言葉が終わるより早く、ガドの足元の床が崩壊した。
「ぎゃああああああ!! 落ちるぅぅぅぅ!!」
「嘘でしょぉぉぉ!? 私も巻き添えぇぇぇ!?」
奈落の底へと落下していく彼らの絶叫が、ダンジョンに木霊した。
2トンの重りをつけての落下だ。
着地の衝撃がどうなるか、想像するだけで痛々しい。
私は静かに目を閉じ、自分の軽い体で安らかな帰路についた。
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