【短編集】読む精神安定剤。理不尽な彼らが「3分」で地獄に落ちる、極上の「ざまぁ」詰め合わせ

葉山 乃愛

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「呪いの装備で寿命が縮む」と追放されたが、俺が肩代わりしていただけだ。解除した瞬間、君がミイラになる番だが覚悟はいいか?

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「おい、カイン。お前みたいな陰気な呪術師は、やっぱりパーティーに要らねぇわ」

Sランクダンジョンで手に入れた『魔神の黒鎧』に身を包んだ戦士バルガスが、兜越しにこもった声で言った。

「……理由を聞いても?」

「お前がいると空気が淀むんだよ。それに比べてみろ、この最強の鎧を! これを装備してから、俺にはどんな攻撃も通じねぇ。お前のジメジメした結界なんざ、もう必要ねぇんだよ!」

バルガスは胸板をドンと叩いた。
確かにその鎧は強力だ。だが、それには『装備者の生命力を毎秒吸い尽くす』という致死の呪いがかかっている。

「バルガス。君がその呪いの鎧を着て平気な顔をしていられるのは、私が『呪詛転移』の術式で、君が受けるべきダメージを全て私の身代わり人形に流しているからだ」

「はっ! またその恩着せがましい嘘か。俺の生命力が強靭だから耐えられてるに決まってんだろ! 俺のタフさに嫉妬すんな、見苦しい!」

バルガスは聞く耳を持たない。
後ろにいる僧侶も、私を蔑んだ目で見ている。
「そうですね。カインさんの呪術なんて、気休め程度でしょう。バルガス様の強靭な肉体があってこそですわ」

私は懐から、真っ黒に染まった身代わり人形を取り出した。
もう限界だ。これ以上は私の命が危ない。

「分かりました。では、お望み通り追放されます。……転移の術式も解除しますね」

「おう、さっさと消えろ! 二度とそのツラ見せるな!」

私は人形を握りつぶし、術式を破棄した。
私とバルガスを繋いでいた、どす黒い呪いのパスが切断される。

その直後だった。

シュゥゥゥゥ……。

バルガスの鎧の隙間から、白い煙のようなものが立ち上り始めた。

「あ? なんだこれ、煙……? それに、なんか急に体がだるく……」

「バルガス様? 顔色が……ひっ!?」

僧侶が悲鳴を上げた。
兜の下から覗くバルガスの肌が、急速に水分を失い、土気色に変色していく。
パンパンに張っていた筋肉が萎み、頬がこけ、目が窪んでいく。

「な、なんだ!? 力が……抜ける……! 腕が上がらねぇ……!」

「呪いが本来の持ち主に戻ったんですよ。その鎧は、1分で健康な成人男性をミイラに変える。君の強靭な肉体なら、2分くらいは持つかもしれませんね」

私は荷物をまとめた。

「う、嘘だろ!? カイン! 助けろ! なんだこれ、皮膚が、干からびて……!」

「いやぁぁぁ! バルガス様がお爺ちゃんみたいに! シワシワになってるぅぅ!!」

「ヒ、ヒール! ヒールをかけろぉぉ! 間に合わねぇ! 死ぬ、吸われるぅぅぅ!!」

バルガスが枯れ木のような腕を伸ばしてくるが、足元がおぼつかず、その場に崩れ落ちた。
鎧の中で体が縮んでいく音がする。

「私の呪術は『気休め』なんでしょう? 自分たちでなんとかしてください」

私は彼らが急速に乾燥していく様を横目に、ダンジョンの出口へと歩き出した。
外の空気は、さぞ瑞々しくて美味しいことだろう。
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