【短編集】読む精神安定剤。理不尽な彼らが「3分」で地獄に落ちる、極上の「ざまぁ」詰め合わせ

葉山 乃愛

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「クリックするだけの仕事」と解雇されたが、それは僕が組んだ『全自動マクロ』だ。PC初期化したから明日から手入力で頑張れ

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「おい、佐藤。お前、明日から来なくていいよ」

月末の繁忙期、オフィスの自席で部長に呼び出された。
部長は缶コーヒーを飲みながら、面倒くさそうに解雇通知を突きつけてきた。

「……解雇ですか? 理由を聞いても?」

「お前さ、一日中パソコンの前でクリックしてるだけじゃん。他の社員は電話したり営業行ったり汗水垂らしてるのに、お前だけ涼しい顔して『終わりました』って。楽してる奴に給料払いたくないんだわ」

周りの社員たちも、クスクスと笑っている。
「佐藤さん、いつも定時帰りですもんね」
「僕たちが残業してるのに、空気読んでほしいよなー」

僕はため息をついた。
この会社のアナログな経理・発注システムを、僕が独自に組んだVBA(マクロ)とPythonで全自動化していたことを、彼らは理解していない。

「部長。僕がワンクリックで終わらせている仕事は、本来なら10人で3日かかる量のデータ処理です。それを『自動化プログラム』が瞬時にやってくれているだけです」

「はぁ? プログラム? 言い訳すんなよ。パソコンなんて誰でも使えるだろ。お前が辞めたら、新人の田中あたりにそのボタン押させるから問題ねぇよ」

部長は鼻で笑い、新人の田中君も「僕、スマホ得意なんで余裕っす!」と親指を立てた。

「そうですか。では、私物のノートPCと、僕が開発したプログラムは全て削除して帰りますね。会社のPCには『初期状態』のExcelしか残っていませんが」

「おう、ゴミは持って帰れ。せいぜいハローワークで頑張りな!」

「分かりました。……明日からの『手入力』、腱鞘炎にならないよう気をつけて」

僕はPCをカバンに入れ、退社した。

翌日のお昼過ぎ。僕のスマホが狂ったように鳴り始めた。
部長からだ。

「もしもし?」

『さ、佐藤! おい! どうなってんだ! ボタンがない! いつもの画面が出ないぞ!』

「ああ、言ったじゃないですか。僕のプログラムは持ち帰ったって」

『ふざけんな! 今日中に1万件の請求書発行しなきゃいけないんだぞ! 手入力でやってたら1週間かかる!』

電話の向こうで、社員たちの悲鳴が聞こえる。
「部長! 計算が合いません!」
「桁間違えました! 最初からやり直しです!」
「終わりません! 今日帰れませんよぉぉぉ!!」

「新人の田中君がいるじゃないですか。スマホが得意なら、電卓くらい叩けるでしょ?」

『頼む! 戻ってきてくれ! 給料倍にするから! いや3倍で……!』

「お断りです。今、他社から『CTO(最高技術責任者)』としてスカウトが来てるんで。じゃあ、クリック頑張ってください」

僕は通話を切り、着信拒否に設定した。
ブラック企業が、アナログ作業の海に沈んでいくのを想像すると、どんな高級ランチより飯が美味かった。
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