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「裏方のくせに」と追放されたが、貴方の美貌もトークも全部僕の編集(加工)だ。無修正の生配信、放送事故が楽しみだな
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「ねえ、ケンタ。もうアンタいらないわ」
登録者100万人を超える人気美容系インフルエンサー『美神(びしん)キララ』が、撮影終わりの楽屋で言い放った。
「……いらないって、僕が編集しないと動画出せないだろ?」
「それがウザいのよ! コメント欄で『編集が神』とか『構成が面白い』とか、アンタばっかり褒められて。主役は私なの! 私自身のカリスマ性で売れてるのに、アンタが手柄を横取りしてるみたいで不快なのよ!」
キララはスマホで自分の顔を確認しながら、ファンデーションを塗り直している。
「それに、最近付き合いだしたIT社長の彼がね、『編集なんてAIで一発だよ』って言ってたし。アンタみたいな暗い裏方より、彼にお願いすることにしたから」
僕は呆れた。
彼女の実物は、肌は荒れ放題、トークは支離滅裂、性格は最悪。
それを僕が『超絶技巧の補正フィルター』と『音声の切り貼り』で、聖女のようなキャラクターに作り上げていたのだ。
「キララ。君のその『透き通るような白肌』も『知的で優しい喋り』も、僕がフレーム単位で修正しているから成立しているんだぞ? AIの自動補正じゃ、君の『素材』は隠しきれない」
「はぁ!? 私がブスだって言うの!? 名誉毀損で訴えるわよ! さっさと出て行って! パスワードも機材も全部置いてってよね!」
「分かったよ。……じゃあ、今日予定している『100万人記念・完全ノータッチ生配信』、頑張ってね」
僕は機材を置いて部屋を出た。
もちろん、僕が設定していた『リアルタイム美肌補正』と『暴言フィルター』のプラグインは、全てOFFにして。
その夜。
僕は自宅でビールを開けながら、彼女の生配信を視聴した。
『みなさ~ん♡ キララで~す!』
画面に映し出されたのは、厚化粧でも隠しきれない肌荒れと、目の下のクマがくっきり見える、ただの疲れたおばさんだった。
《え? 誰これ?》
《画質悪くない? てか顔違くね?》
《肌汚っ! 美のカリスマじゃなかったの?》
コメント欄がざわつく。キララは焦り始めた。
『ちょ、ちょっと! 照明がおかしいんじゃない!? ……あ? なにこのコメント! 肌汚いとか言ってんじゃねーよクソアンチ! 死ね!』
彼女はいつもの癖で、フィルターが弾いてくれるはずの暴言を吐いた。
だが、今日は僕がいない。その汚い言葉は、クリアな音声で全世界に配信された。
《うわ、性格悪っ》
《今の聞いた? 死ねって言ったぞ》
《幻滅しました。登録解除します》
「あ、やべっ……い、今の無し! 編集! ケンタ! カットして!」
彼女は叫ぶが、これは生配信だ。カットなどできない。
『うそ、なんで……? 画面が……コメントが……いやぁぁぁぁ!! 見ないでぇぇぇ!!』
登録者数がリアルタイムで数万人単位で減っていくカウンターを見ながら、彼女は発狂してカメラを叩き壊した。
これが、加工という魔法が解けた現実だ。
登録者100万人を超える人気美容系インフルエンサー『美神(びしん)キララ』が、撮影終わりの楽屋で言い放った。
「……いらないって、僕が編集しないと動画出せないだろ?」
「それがウザいのよ! コメント欄で『編集が神』とか『構成が面白い』とか、アンタばっかり褒められて。主役は私なの! 私自身のカリスマ性で売れてるのに、アンタが手柄を横取りしてるみたいで不快なのよ!」
キララはスマホで自分の顔を確認しながら、ファンデーションを塗り直している。
「それに、最近付き合いだしたIT社長の彼がね、『編集なんてAIで一発だよ』って言ってたし。アンタみたいな暗い裏方より、彼にお願いすることにしたから」
僕は呆れた。
彼女の実物は、肌は荒れ放題、トークは支離滅裂、性格は最悪。
それを僕が『超絶技巧の補正フィルター』と『音声の切り貼り』で、聖女のようなキャラクターに作り上げていたのだ。
「キララ。君のその『透き通るような白肌』も『知的で優しい喋り』も、僕がフレーム単位で修正しているから成立しているんだぞ? AIの自動補正じゃ、君の『素材』は隠しきれない」
「はぁ!? 私がブスだって言うの!? 名誉毀損で訴えるわよ! さっさと出て行って! パスワードも機材も全部置いてってよね!」
「分かったよ。……じゃあ、今日予定している『100万人記念・完全ノータッチ生配信』、頑張ってね」
僕は機材を置いて部屋を出た。
もちろん、僕が設定していた『リアルタイム美肌補正』と『暴言フィルター』のプラグインは、全てOFFにして。
その夜。
僕は自宅でビールを開けながら、彼女の生配信を視聴した。
『みなさ~ん♡ キララで~す!』
画面に映し出されたのは、厚化粧でも隠しきれない肌荒れと、目の下のクマがくっきり見える、ただの疲れたおばさんだった。
《え? 誰これ?》
《画質悪くない? てか顔違くね?》
《肌汚っ! 美のカリスマじゃなかったの?》
コメント欄がざわつく。キララは焦り始めた。
『ちょ、ちょっと! 照明がおかしいんじゃない!? ……あ? なにこのコメント! 肌汚いとか言ってんじゃねーよクソアンチ! 死ね!』
彼女はいつもの癖で、フィルターが弾いてくれるはずの暴言を吐いた。
だが、今日は僕がいない。その汚い言葉は、クリアな音声で全世界に配信された。
《うわ、性格悪っ》
《今の聞いた? 死ねって言ったぞ》
《幻滅しました。登録解除します》
「あ、やべっ……い、今の無し! 編集! ケンタ! カットして!」
彼女は叫ぶが、これは生配信だ。カットなどできない。
『うそ、なんで……? 画面が……コメントが……いやぁぁぁぁ!! 見ないでぇぇぇ!!』
登録者数がリアルタイムで数万人単位で減っていくカウンターを見ながら、彼女は発狂してカメラを叩き壊した。
これが、加工という魔法が解けた現実だ。
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