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第17話 準備運動で「ラジオ体操」をしたら、神を降ろす「召喚の舞」だと恐れられました
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「それじゃあ、水泳の授業を始めるぞ。まずは各自、念入りに準備運動をしろ!」
雲ひとつない快晴の下、プールサイドに松田先生の怒号が響いた。
この世界の準備運動は適当だ。
手首をぶらぶらさせたり、ただ屈伸するだけ。
だが、俺は日本人だ。水に入る前の準備運動をおろそかにはできない。
心臓麻痺でも起こしたら大変だ。
(……やるか)
俺はプールサイドの最前列に立ち、脳内で「あの音楽」を再生した。
チャン、チャ、チャ、チャン……♪
国民的準備運動、ラジオ体操第一。
俺はスッ、と背筋を伸ばした。
その自然体な立ち姿に、背後の剛田が息を飲んだ。
「……ッ!? アニキの雰囲気が変わった……!」
「なんだ? あの隙だらけの構えは……。いや、隙がありすぎて逆に攻め込めない!」
俺は構わず、第一の運動に入った。
『腕を前から上げて、背伸びの運動~』
俺はゆっくりと両腕を頭上へ伸ばし、大きく空を仰いだ。
指先まで神経を行き渡らせた、完璧な伸び。
ザワッ……!!
クラスメイトたちが一斉に後ずさった。
「見ろ……! 平沢が天に向かって両手を掲げたぞ!」
「太陽のエネルギーを……一身に集めているのか!?」
「ただの背伸びじゃない……。あれは天界への『交信(アクセス)』だ! 彼は今、神と直接対話しているんだ!」
(ただ背骨を伸ばしてるだけだよ)
続いて、第二の運動。
『腕と脚の運動~』
膝を曲げ伸ばししながら、腕をリズミカルに振る。
ブンッ! ブンッ!
「ひぃぃっ!? なんだあの衝撃波は!!」
剛田が悲鳴を上げた。
「腕を振るたびに、真空の刃が生まれている! 見えない鎌いたちが俺の肌を切り裂こうとしてるぞ!」
「膝の屈伸に合わせて、大地のマナが吸い上げられているわ……!」
ミアが録画メガネをズレさせながら叫ぶ。
「これは『天の力』と『地の力』を体内で循環させる、永久機関の動き……! なんて高度な……人類が到達できるレベルを超えていますわ!」
そして、ラジオ体操の見せ場(?)。
『体を横に曲げる運動~』
右手を上げ、体を左に倒す。脇腹をしっかりと伸ばす。
「ッ!!? 空間が……歪んだ!?」
シャルロット王女が、その場に膝をついて祈り始めた。
「見てください、あの美しい曲線……! 直線的な世界に、あえて『歪み』を与えることで、次元の裂け目を作ろうとしているのです!」
「まさか、ここから『異界の魔神』を召喚する気か!?」
「拓海様、ダメです! その扉を開いたら、学園が消し飛びます!」
(脇腹を伸ばしてるだけだって)
俺は周りのパニックを無視して、次なる動きへ移行した。
『体をねじる運動~』
遠心力を使って、上半身を左右に大きく回す。
ブォン、ブォン!
「うわああああっ!! 結界だ!!」
「全方位防御(オールレンジ・ディフェンス)だ!」
男子生徒たちが頭を抱えて伏せた。
「あの回転……死角がねぇ! 矢も魔法も、あの旋風に巻き込まれて消滅するぞ!」
「拓海くん……! 私の視線すらも弾き返すなんて……! どこまでガードが堅いの!」
陽菜が悔しそうに唇を噛む。
そして、ついにアレがやってきた。
『両脚で跳ぶ運動~』
体をリラックスさせ、軽やかにジャンプ。
タッタッ、タッタッ。
ズンッ! ズンッ! ズンッ!
俺にとっては軽いジャンプだが、彼らの脳内補正では違ったらしい。
「じ、地震だぁぁぁぁッ!!」
剛田が絶叫した。
「アニキが跳ぶたびに、地殻プレートがズレている! このままじゃマグニチュード10が来るぞ!」
「これが伝説の『大陸砕き(アース・シェイカー)』……! 足裏に重力を収束させて、地球そのものを揺さぶっているのね!」
「きゃああっ♡ 拓海様の振動……! 地面を通して私の子宮にまで響いてきますわ……!」
シャルロットが恍惚の表情で地面に這いつくばっている。
俺は最後に、深呼吸の運動を行った。
『腕を前から上げて、大きく深呼吸~』
両腕を広げ、胸いっぱいに空気を吸い込む。
スゥゥゥゥ…………。
その瞬間、プールサイドの風が止まった(気がした)。
「……消えた」
ミアが呆然と呟いた。
「大気中の『魔素』が……全て拓海様の体内に吸い込まれた……?」
「嘘でしょ……? この一帯の空気が、浄化されて『聖域』に変わったというの……?」
俺はゆっくりと息を吐き出した。
ハァァァ…………。
「神の吐息(ブレス)だ……」
「浴びろ! 拓海様が体内で精製した聖なる酸素を浴びるんだ!」
「うおおおおっ! 体の古傷が治っていく!」
「長年の肩こりが消えたわ!」
「私、なんだか妊娠した気がしますわ!」(シャルロット)
準備運動を終えた俺が目を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
クラスメイト全員が、プールサイドで正座し、涙を流して俺を拝んでいるのだ。
「……え、お前ら泳がないの?」
「泳ぐ!? 滅相もございません!」
松田先生が震えながら進み出た。
「平沢くん……いや、平沢様。あなたが行ったのは、古の文献にある『神降ろしの舞』そのもの……。この神聖なプールに、私ごときが足を入れるなど許されません!」
「アニキ! 感動しました! 俺もその舞を覚えたいっす! 世界を救うために!」
「拓海様、その動き……夜のベッドの上でも応用できますわよね? 特にあの『腰を回す運動』……♡」
結局、その日の水泳の授業は中止になった。
代わりに、俺が教壇に立ち、全校生徒に「ラジオ体操第一」を指導するという謎の集会が開かれることになった。
校庭に響き渡る千人の「イチ、ニ、サン、シ!」という掛け声は、隣国に「軍事演習が始まった」と勘違いさせ、一時、国際問題にまで発展したという。
雲ひとつない快晴の下、プールサイドに松田先生の怒号が響いた。
この世界の準備運動は適当だ。
手首をぶらぶらさせたり、ただ屈伸するだけ。
だが、俺は日本人だ。水に入る前の準備運動をおろそかにはできない。
心臓麻痺でも起こしたら大変だ。
(……やるか)
俺はプールサイドの最前列に立ち、脳内で「あの音楽」を再生した。
チャン、チャ、チャ、チャン……♪
国民的準備運動、ラジオ体操第一。
俺はスッ、と背筋を伸ばした。
その自然体な立ち姿に、背後の剛田が息を飲んだ。
「……ッ!? アニキの雰囲気が変わった……!」
「なんだ? あの隙だらけの構えは……。いや、隙がありすぎて逆に攻め込めない!」
俺は構わず、第一の運動に入った。
『腕を前から上げて、背伸びの運動~』
俺はゆっくりと両腕を頭上へ伸ばし、大きく空を仰いだ。
指先まで神経を行き渡らせた、完璧な伸び。
ザワッ……!!
クラスメイトたちが一斉に後ずさった。
「見ろ……! 平沢が天に向かって両手を掲げたぞ!」
「太陽のエネルギーを……一身に集めているのか!?」
「ただの背伸びじゃない……。あれは天界への『交信(アクセス)』だ! 彼は今、神と直接対話しているんだ!」
(ただ背骨を伸ばしてるだけだよ)
続いて、第二の運動。
『腕と脚の運動~』
膝を曲げ伸ばししながら、腕をリズミカルに振る。
ブンッ! ブンッ!
「ひぃぃっ!? なんだあの衝撃波は!!」
剛田が悲鳴を上げた。
「腕を振るたびに、真空の刃が生まれている! 見えない鎌いたちが俺の肌を切り裂こうとしてるぞ!」
「膝の屈伸に合わせて、大地のマナが吸い上げられているわ……!」
ミアが録画メガネをズレさせながら叫ぶ。
「これは『天の力』と『地の力』を体内で循環させる、永久機関の動き……! なんて高度な……人類が到達できるレベルを超えていますわ!」
そして、ラジオ体操の見せ場(?)。
『体を横に曲げる運動~』
右手を上げ、体を左に倒す。脇腹をしっかりと伸ばす。
「ッ!!? 空間が……歪んだ!?」
シャルロット王女が、その場に膝をついて祈り始めた。
「見てください、あの美しい曲線……! 直線的な世界に、あえて『歪み』を与えることで、次元の裂け目を作ろうとしているのです!」
「まさか、ここから『異界の魔神』を召喚する気か!?」
「拓海様、ダメです! その扉を開いたら、学園が消し飛びます!」
(脇腹を伸ばしてるだけだって)
俺は周りのパニックを無視して、次なる動きへ移行した。
『体をねじる運動~』
遠心力を使って、上半身を左右に大きく回す。
ブォン、ブォン!
「うわああああっ!! 結界だ!!」
「全方位防御(オールレンジ・ディフェンス)だ!」
男子生徒たちが頭を抱えて伏せた。
「あの回転……死角がねぇ! 矢も魔法も、あの旋風に巻き込まれて消滅するぞ!」
「拓海くん……! 私の視線すらも弾き返すなんて……! どこまでガードが堅いの!」
陽菜が悔しそうに唇を噛む。
そして、ついにアレがやってきた。
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体をリラックスさせ、軽やかにジャンプ。
タッタッ、タッタッ。
ズンッ! ズンッ! ズンッ!
俺にとっては軽いジャンプだが、彼らの脳内補正では違ったらしい。
「じ、地震だぁぁぁぁッ!!」
剛田が絶叫した。
「アニキが跳ぶたびに、地殻プレートがズレている! このままじゃマグニチュード10が来るぞ!」
「これが伝説の『大陸砕き(アース・シェイカー)』……! 足裏に重力を収束させて、地球そのものを揺さぶっているのね!」
「きゃああっ♡ 拓海様の振動……! 地面を通して私の子宮にまで響いてきますわ……!」
シャルロットが恍惚の表情で地面に這いつくばっている。
俺は最後に、深呼吸の運動を行った。
『腕を前から上げて、大きく深呼吸~』
両腕を広げ、胸いっぱいに空気を吸い込む。
スゥゥゥゥ…………。
その瞬間、プールサイドの風が止まった(気がした)。
「……消えた」
ミアが呆然と呟いた。
「大気中の『魔素』が……全て拓海様の体内に吸い込まれた……?」
「嘘でしょ……? この一帯の空気が、浄化されて『聖域』に変わったというの……?」
俺はゆっくりと息を吐き出した。
ハァァァ…………。
「神の吐息(ブレス)だ……」
「浴びろ! 拓海様が体内で精製した聖なる酸素を浴びるんだ!」
「うおおおおっ! 体の古傷が治っていく!」
「長年の肩こりが消えたわ!」
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クラスメイト全員が、プールサイドで正座し、涙を流して俺を拝んでいるのだ。
「……え、お前ら泳がないの?」
「泳ぐ!? 滅相もございません!」
松田先生が震えながら進み出た。
「平沢くん……いや、平沢様。あなたが行ったのは、古の文献にある『神降ろしの舞』そのもの……。この神聖なプールに、私ごときが足を入れるなど許されません!」
「アニキ! 感動しました! 俺もその舞を覚えたいっす! 世界を救うために!」
「拓海様、その動き……夜のベッドの上でも応用できますわよね? 特にあの『腰を回す運動』……♡」
結局、その日の水泳の授業は中止になった。
代わりに、俺が教壇に立ち、全校生徒に「ラジオ体操第一」を指導するという謎の集会が開かれることになった。
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