日本でモブだった俺、レベルの低すぎる異世界では「顔面国宝」兼「全知の賢者」らしい

葉山 乃愛

文字の大きさ
17 / 42

第17話 準備運動で「ラジオ体操」をしたら、神を降ろす「召喚の舞」だと恐れられました

しおりを挟む
「それじゃあ、水泳の授業を始めるぞ。まずは各自、念入りに準備運動をしろ!」

雲ひとつない快晴の下、プールサイドに松田先生の怒号が響いた。
この世界の準備運動は適当だ。
手首をぶらぶらさせたり、ただ屈伸するだけ。
だが、俺は日本人だ。水に入る前の準備運動をおろそかにはできない。
心臓麻痺でも起こしたら大変だ。

(……やるか)

俺はプールサイドの最前列に立ち、脳内で「あの音楽」を再生した。
チャン、チャ、チャ、チャン……♪
国民的準備運動、ラジオ体操第一。

俺はスッ、と背筋を伸ばした。
その自然体な立ち姿に、背後の剛田が息を飲んだ。

「……ッ!? アニキの雰囲気が変わった……!」
「なんだ? あの隙だらけの構えは……。いや、隙がありすぎて逆に攻め込めない!」

俺は構わず、第一の運動に入った。
『腕を前から上げて、背伸びの運動~』

俺はゆっくりと両腕を頭上へ伸ばし、大きく空を仰いだ。
指先まで神経を行き渡らせた、完璧な伸び。

ザワッ……!!

クラスメイトたちが一斉に後ずさった。

「見ろ……! 平沢が天に向かって両手を掲げたぞ!」
「太陽のエネルギーを……一身に集めているのか!?」
「ただの背伸びじゃない……。あれは天界への『交信(アクセス)』だ! 彼は今、神と直接対話しているんだ!」

(ただ背骨を伸ばしてるだけだよ)

続いて、第二の運動。
『腕と脚の運動~』
膝を曲げ伸ばししながら、腕をリズミカルに振る。

ブンッ! ブンッ!

「ひぃぃっ!? なんだあの衝撃波は!!」

剛田が悲鳴を上げた。

「腕を振るたびに、真空の刃が生まれている! 見えない鎌いたちが俺の肌を切り裂こうとしてるぞ!」
「膝の屈伸に合わせて、大地のマナが吸い上げられているわ……!」

ミアが録画メガネをズレさせながら叫ぶ。

「これは『天の力』と『地の力』を体内で循環させる、永久機関の動き……! なんて高度な……人類が到達できるレベルを超えていますわ!」

そして、ラジオ体操の見せ場(?)。
『体を横に曲げる運動~』
右手を上げ、体を左に倒す。脇腹をしっかりと伸ばす。

「ッ!!? 空間が……歪んだ!?」

シャルロット王女が、その場に膝をついて祈り始めた。

「見てください、あの美しい曲線……! 直線的な世界に、あえて『歪み』を与えることで、次元の裂け目を作ろうとしているのです!」
「まさか、ここから『異界の魔神』を召喚する気か!?」
「拓海様、ダメです! その扉を開いたら、学園が消し飛びます!」

(脇腹を伸ばしてるだけだって)

俺は周りのパニックを無視して、次なる動きへ移行した。
『体をねじる運動~』
遠心力を使って、上半身を左右に大きく回す。
ブォン、ブォン!

「うわああああっ!! 結界だ!!」
「全方位防御(オールレンジ・ディフェンス)だ!」

男子生徒たちが頭を抱えて伏せた。

「あの回転……死角がねぇ! 矢も魔法も、あの旋風に巻き込まれて消滅するぞ!」
「拓海くん……! 私の視線すらも弾き返すなんて……! どこまでガードが堅いの!」

陽菜が悔しそうに唇を噛む。

そして、ついにアレがやってきた。
『両脚で跳ぶ運動~』
体をリラックスさせ、軽やかにジャンプ。
タッタッ、タッタッ。

ズンッ! ズンッ! ズンッ!

俺にとっては軽いジャンプだが、彼らの脳内補正では違ったらしい。

「じ、地震だぁぁぁぁッ!!」

剛田が絶叫した。

「アニキが跳ぶたびに、地殻プレートがズレている! このままじゃマグニチュード10が来るぞ!」
「これが伝説の『大陸砕き(アース・シェイカー)』……! 足裏に重力を収束させて、地球そのものを揺さぶっているのね!」
「きゃああっ♡ 拓海様の振動……! 地面を通して私の子宮にまで響いてきますわ……!」

シャルロットが恍惚の表情で地面に這いつくばっている。

俺は最後に、深呼吸の運動を行った。
『腕を前から上げて、大きく深呼吸~』
両腕を広げ、胸いっぱいに空気を吸い込む。

スゥゥゥゥ…………。

その瞬間、プールサイドの風が止まった(気がした)。

「……消えた」

ミアが呆然と呟いた。

「大気中の『魔素』が……全て拓海様の体内に吸い込まれた……?」
「嘘でしょ……? この一帯の空気が、浄化されて『聖域』に変わったというの……?」

俺はゆっくりと息を吐き出した。
ハァァァ…………。

「神の吐息(ブレス)だ……」
「浴びろ! 拓海様が体内で精製した聖なる酸素を浴びるんだ!」
「うおおおおっ! 体の古傷が治っていく!」
「長年の肩こりが消えたわ!」
「私、なんだか妊娠した気がしますわ!」(シャルロット)

準備運動を終えた俺が目を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
クラスメイト全員が、プールサイドで正座し、涙を流して俺を拝んでいるのだ。

「……え、お前ら泳がないの?」

「泳ぐ!? 滅相もございません!」

松田先生が震えながら進み出た。

「平沢くん……いや、平沢様。あなたが行ったのは、古の文献にある『神降ろしの舞』そのもの……。この神聖なプールに、私ごときが足を入れるなど許されません!」

「アニキ! 感動しました! 俺もその舞を覚えたいっす! 世界を救うために!」

「拓海様、その動き……夜のベッドの上でも応用できますわよね? 特にあの『腰を回す運動』……♡」

結局、その日の水泳の授業は中止になった。
代わりに、俺が教壇に立ち、全校生徒に「ラジオ体操第一」を指導するという謎の集会が開かれることになった。
校庭に響き渡る千人の「イチ、ニ、サン、シ!」という掛け声は、隣国に「軍事演習が始まった」と勘違いさせ、一時、国際問題にまで発展したという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...