【生存確率0%】S級ダンジョンのボス部屋で、唯一表示された「生存ルート」が『ボス(美少女)にプロポーズすること』だった件。

葉山 乃愛

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第30話 天界へのパスポートは「シーフード味」

「……天界へ来い、だってさ」

スイスからの帰国便(ファーストクラス)の中。
俺はジョーカーが残した招待状を読み上げた。

「場所は『世界の頂』……エベレスト山頂にある『天への階段』か」

隣でオレンジジュースを飲んでいたヴォルフガング皇子が、神妙な顔で頷く。

「伝説にある場所だ。神々が住まう『天界』と地上を繋ぐ唯一のゲート。……だが、そこは『神の門番』が守護しており、人間が通ることは許されない」

「じゃあ行かなくていいか」
俺は招待状をゴミ箱に捨てようとした。

「ダメよダーリン」
ルナが俺の腕を掴む。
「あのジョーカーって男、逃がしたら厄介よ。またダーリンの邪魔をするわ。……今のうちに根元から断ち切るべきね」

「私も同行します!」
「僕も!」

いつの間にか、俺の周りには「カズト親衛隊」が結成されていた。
魔王ルナ、聖女アリシア、皇帝ヴォルフ、勇者ユウヤ、そしてペットのフェンリル。
世界最強のドリームチームだ。
頼もしいが、俺はただの引率の先生みたいな気分だ。

   ◇ ◇ ◇

数時間後。俺たちはエベレスト山頂に立っていた。
そこには、雲を突き抜けて宇宙まで伸びる、巨大な光の柱があった。
『天への階段(エレベーター)』だ。

その入り口に、一人の男が立っていた。
背中から純白の翼を生やし、黄金の鎧をまとった美青年。

「……止まれ、人間ども」

男が槍を向ける。
その切っ先から放たれる神気だけで、空気がビリビリと震える。

「我は天界の門番、大天使ミカエル。この先は神聖不可侵の領域。薄汚れた下界の者が立ち入ることは許さん」

大天使。
文字通りの「神の使い」だ。
勇者ユウヤが聖剣を構えるが、手が震えている。
「くっ……! 格が違う……! 勝てる気がしない!」

ミカエルが冷ややかな目で見下ろす。

「立ち去れ。さもなくば、神罰を下す」

ゴゴゴゴ……!
上空に雷雲が発生する。
問答無用で消す気だ。
ルナが「翼をもぎ取って焼き鳥にする?」と囁くが、ここで戦闘になればエベレストが消滅する。

スキル発動!
この頑固な門番を退け、平和的にゲートを通過するルートは!?

【A:力ずくで突破する】
→ 生存確率:0.00%(神罰の雷で消し炭)

【B:土下座して頼む】
→ 生存確率:5.00%(「見苦しい」と蹴り落とされる)

【C:リュックから『カップヌードル(シーフード味)』を取り出し、お湯を入れて『……3分待てるか? 極上の供物だ』と差し出す】
→ 生存確率:100.00%

……は?
カップ麺?
大天使に?
しかもシーフード味?
神の使いが、ジャンクフードなんて食べるわけないだろ。
「馬鹿にしているのか!」と槍で刺される未来しか見えない。

だが、選択肢は「これしかない」と告げている。
俺は震える手でリュックを開け、非常食用のカップヌードルを取り出した。
魔法水筒のお湯を注ぐ。

「……おい、天使」

俺は湯気が立ち上るカップを掲げた。

「貴様、何をしている? 命乞いか?」

「……3分待て」

俺はフタをして、割り箸を置いた。

「これは、下界における『極上の供物』だ。……神に捧げるに相応しい」

「ハッ、笑わせるな。下界の食べ物など、泥のような……」

ミカエルが鼻で笑おうとした、その時。

フワァ~……。
カップの隙間から、魚介とポークエキスの濃厚な香りが漏れ出した。

「――ッ!?」

ミカエルの動きが止まった。
彼の鼻がピクピクと動く。

(な、なんだこの香りは……!? 天界で食べる『霞(カスミ)』や『神酒(ネクタル)』とは全く異なる、暴力的かつ背徳的な……食欲を中枢神経ごと刺激する匂いは!)

「……あと1分」

俺は腕時計を見ながらカウントダウンする。
香りが強くなる。
ミカエルの喉がゴクリと鳴った。
聖なる槍を持つ手が下がっていく。

「……3、2、1。完成だ」

俺はフタをペリッと剥がした。
湯気と共に、カニカマやイカ、卵の彩りが現れる。

「……食ってみろ」

俺が差し出すと、ミカエルは抗えない力に引かれるように箸を取った。
そして、恐る恐る麺を啜った。

ズルズルッ。

「――ッ!!!!!!」

カッッッ!!!
ミカエルの背中の翼が、バサァァァッ!!と大きく広がった。

「う、美味ァァァァァァァァァイッ!!!」

大天使の絶叫がエベレストに響き渡った。

「なんだこれは!? 濃厚なスープが縮れ麺に絡みつき、口の中で海のオーケストラが奏でられている! これは……これは『生命のスープ』だ!」

ミカエルが一心不乱に麺を啜る。
「うまい! うまい!」と涙を流しながら完食し、スープまで飲み干した。

「……ご馳走様でした」

ミカエルは恍惚とした表情で、空のカップを宝物のように抱きしめた。

「相川カズト……。貴様、これほどの『神の食べ物』を精製できる錬金術師だったとは……」

「いや、お湯入れただけだし」

「通れ! 貴様らなら、天界を救えるかもしれん!」

ミカエルが槍を引き、ゲートを開けた。

「ただし、条件がある! ……帰りに『カレー味』を持ってきてくれ!」

「……わかったよ」

こうして、俺たちはカップ麺一つで天界への侵入に成功した。
後ろでヴォルフたちが「カップ麺……あれこそが神を堕とす禁断の果実……!」とメモを取っている。

光のエレベーターに乗り込み、上昇していく。
目指すは天界の最奥。
そこに待つのは、全ての黒幕・ジョーカーと、まだ見ぬ神々だ。
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