『パンツの色』を視るだけで最強になった俺、聖女様の『白』で無敵の守護騎士と崇められる ~七色のヒロインに挟まれて理性が限界突破~

葉山 乃愛

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第1章

第6話 灰色の侵食と、復活の「真紅(Tバック)」

「……消えろ、不純物」

灰色のスライムのような影――『ピュリティ』の尖兵が、無機質な声を上げて腕を振り上げた。
その腕が伸び、灰色の触手となって俺たちに襲いかかる。
触手が触れた草木は瞬時に色彩を失い、枯れ落ちて灰になっていく。

「チッ、触れるだけでアウトか! 面倒な!」

炎堂カグラが舌打ちし、俺の襟首を掴んでバックステップした。
彼女の身体能力は人間離れしている。
だが、その表情には焦りが見えた。

「おい変態! 貴様の『眼』で奴の弱点は見えないのか!」

「無理です! あいつ、そもそも『パンツ』を履いてません!」

俺は叫んだ。
これが一番の恐怖だ。
俺の『煩悩眼』は下着の色をステータスに変える。
だが、全裸(というか不定形)の怪物相手には、何のバフも発動しない。
ただのFランクの肉体に戻ってしまうのだ。

「使えん奴だ! ……ならば私が物理で押し切る!」

カグラが竹刀を構え、赤いオーラを爆発させた。

「『炎堂流・風紀粛正剣』!!」

轟音と共に、カグラが突撃する。
彼女の竹刀が影のボディを捉え、強烈な衝撃波が森を揺らす。
普通ならこれで消滅しているはずだ。
だが。

ブヨォン……。

「なっ……!?」

カグラの竹刀が、影の中にずぶずぶと飲み込まれていく。
手応えがない。
それどころか、接触した竹刀の先から、鮮やかな赤色が灰色に侵食されていく。

『……暴力。……野蛮。……不要な情熱です』

影がノイズ交じりの声を上げ、カグラの竹刀ごと腕を絡め取った。

「くっ、離せ! ……力が、抜ける……!?」

カグラの顔色が青ざめる。
彼女の全身を覆っていた燃えるような「赤」のオーラが、急速に吸い取られていく。
【闘志】の消失。
それは、戦士であるカグラにとって、死よりも恐ろしいことだった。

「委員長!!」

俺が駆け出そうとした瞬間、レオの声がイヤホンから響いた。

『待てカナタ! 近づくな! 奴は「精神エネルギー(色)」を喰らう捕食者だ! 今の君が触れれば、煩悩ごと魂を吸われて廃人になるぞ!』

「じゃあどうしろってんだよ! このままじゃカグラが!」

カグラが膝をつく。
あれほど強気だった瞳から光が消え、虚ろな表情になっていく。
竹刀が手から滑り落ちる。

「……あ……私……なんで戦って……」

「委員長!?」

「……風紀とか……どうでもいい……。疲れた……眠りたい……」

カグラがその場にへたり込んだ。
最強の風紀委員長が、ただの無気力な少女に成り下がってしまった。
影の触手が、勝利を確信したように鎌首をもたげ、カグラの全身を覆い尽くそうとする。

『……カナタ。奴の狙いは「強い色」だ。カグラの赤を喰らい尽くせば、次は君だ』

レオの声が焦りを帯びる。

『勝機は一つ。……奴が消化しきれないほどの「強烈な色」を、外部から注入して爆発させるしかない』

「強烈な色……?」

『カグラだ。……彼女の中にはまだ、消えきっていない「赤」の核(コア)があるはずだ。……カナタ、君の「煩悩眼」でそれを見つけ出し、君の「妄想力」で増幅して彼女に叩き込め!』

俺はカグラを見た。
彼女は灰色の地面に横たわり、ジャージも乱れている。
絶望的な状況。
だが、俺の目は死んでいなかった。

灰色の世界の中で、一点だけ。
彼女の乱れたジャージの隙間から、奇跡的に色が残っている場所があった。

ヒップライン。
そこに食い込む、情熱の残り火。
Tバックの紐だ。

《視認成功(強制フォーカス)》
《対象:炎堂カグラ(瀕死)》
《属性:【消えかけの真紅(ダイイング・レッド)】》
《状態:風前の灯火》

「……まだだ。まだ消えてねぇ!」

俺は叫んだ。
恐怖をねじ伏せ、俺はカグラに向かってダッシュした。

『無駄です。……貴方ごときFランクに何ができると』

影が触手を俺に向ける。
だが、俺は止まらない。
俺の脳内で、カグラのTバックから受け取ったわずかな赤色が、俺の変態的な想像力によって何万倍にも増幅される。

「委員長! 思い出せぇぇぇッ!!」

俺はカグラの肩を掴み、至近距離で叫んだ。

「アンタは風紀委員長だろ! こんなスライムごときに負けて、恥ずかしい格好晒していいのかよ!」

「……うるさい……ほっといて……」

「ほっとけるか! アンタのそのTバックは……! 動きやすさを追求した機能美じゃなかったのかよ! 戦うための『赤』じゃなかったのかよォォォッ!!」

俺の叫びが、森に響き渡る。
「Tバック」という単語が出た瞬間、カグラの虚ろな瞳がピクリと反応した。

「……T……バック……?」

「そうだ! アンタのケツは、学園最強のケツだろ! こんなところで灰色に染まっていいわけがねぇ!」

俺は自分の全煩悩エネルギーを右目に集約し、カグラの瞳を見つめ返した。
視線による魔力転送。
俺の変態性が、彼女の消えかけた闘志に引火する。

《スキル発動:【煩悩注入(パッション・イグニッション)】》
《対象へ強制的に「やる気」と「恥じらい」を注入します》

ドクンッ!!

カグラの顔が、一気に沸騰したように赤くなった。

「き……きさ……貴様ァァァァッ!!」

カグラが跳ね起きた。
羞恥心という名の爆発的なエネルギーが、灰色を消し飛ばし、彼女の全身から紅蓮のオーラとなって噴き上がる。

「私の……私の純情(パンツ)を……また大声で叫びおってぇぇぇッ!!」

『な、何です、この熱量は!? 解析不能! あ、熱い!?』

影が悲鳴を上げて後退する。
カグラの「赤」が、影の許容量を超えて逆流したのだ。

「復活したか、暴君!」

「黙れ変態! 後で殺す!」

カグラが落ちていた竹刀を足で跳ね上げ、空中で掴んだ。
その動きには、先ほどまでの迷いがない。
いや、羞恥心でキレている分、以前よりも鋭さと破壊力が増している。

「よくも私に……無様な姿を晒させたな、汚物め!」

カグラが構える。
その背後には、不動明王のような怒りの炎が見える。

「カナタ! 今だ! 君の『バフ』を乗せろ!」

レオの指示。
俺は頷き、カグラの背中(と透けるジャージのライン)を凝視した。

《視認:【復活の真紅(フェニックス・レッド)】》
《効果:攻撃力2倍・理不尽さ3倍》

「いっけぇぇぇぇッ! 委員長ォォォッ!!」

「言われなくてもぉぉぉッ!!」

カグラが地面を砕いて突撃した。
影が触手で迎撃しようとするが、今のカグラのオーラは触れただけで触手を蒸発させる。

「消え失せろ! 『炎堂流奥義・羞恥・赤面・大爆発(レッド・バースト)』!!」

ズドォォォォォォォォン!!

カグラの一撃が、影の核を貫いた。
凄まじい熱波が森を駆け抜け、灰色の結界がガラスのように砕け散る。
影は断末魔を上げることもできず、赤い粒となって空へ霧散していった。

静寂が戻る。
残されたのは、荒い息を吐くカグラと、へたり込んだ俺だけ。
世界に色が戻っていた。

「……はぁ、はぁ……」

カグラが竹刀を下ろし、乱れた髪をかき上げる。
そして、ゆっくりと俺の方を振り返った。
その顔はまだ赤い。

「……おい」

「は、はい! すみません、調子に乗りました!」

俺は再び土下座の構えを取ろうとした。
だが、カグラは俺の胸ぐらを掴んで引き寄せた。

「……助かった」

「え?」

「……勘違いするな。借りができたままなのが嫌なだけだ」

カグラがそっぽを向く。
だが、俺は見逃さなかった。
彼女の耳まで真っ赤になっていることを。

「……それと」

カグラが小さな声で付け加える。

「……ケツを見るな。……減る」

「減りませんよ」

俺がツッコむと、カグラはフッと小さく笑った。
初めて見る、年相応の少女の笑顔だった。

《炎堂カグラ:好感度上昇》
《状態:【デレの兆し】》
《報酬:地獄の特訓・延長確定》

その時。
空からエンジン音が聞こえてきた。

「カナタくーん!!」

上空から、生徒会のヘリコプターが降下してくる。
身を乗り出しているのは、涙目のセイラ会長と、面白そうに笑うリリス。
そして操縦席には、ドヤ顔のレオ。

「……チッ。邪魔が入ったな」

カグラがいつもの仏頂面に戻る。
だが、その距離感は、以前よりもほんの数センチだけ、近くなっている気がした。

こうして、俺と「赤」の暴君との共闘は幕を閉じた。
だが、これはピュリティとの長い戦いの、ほんの小競り合いに過ぎないことを、俺たちはまだ知らなかった。
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