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第9話 魔王様との遊戯(デスゲーム)は、修羅場の味がする
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「それでは、ゲームスタートです♡」
深夜の王城庭園。
月明かりの下、魔王アリス(幼女ver.)が無邪気に宣言した。
俺、黒瀬カイトは、額から冷や汗をダラダラ流しながら、目の前の「死」と対峙していた。
夜逃げは失敗。
遭遇したのはラスボス。
始まったのは、負ければ四肢切断&ペットコース確定のデスゲームだ。
「ルールは簡単です。『私を楽しませること』。それだけです」
アリスが優雅にティーカップを傾ける。
「私が『飽きた』『つまらない』と思った瞬間、あなたの負け。手足をいただいて、ホルマリン漬けにしますね」
理不尽すぎる。
採点基準が「魔王の気分次第」って、どんなクソゲーだよ。
「さあ、カイトお兄さん。どんな芸を見せてくれるんですか? 踊ります? それとも、命乞いの歌でも歌います?」
アリスの瞳が、嗜虐的な色を帯びて輝く。
俺が恐怖で引きつる顔を見るのが、今の彼女にとって最高のエンターテイメントらしい。
(落ち着け、俺。相手は『退屈』している最強種だ。力で勝つ必要はない。興味を引き続ければいいんだ……!)
俺は深呼吸を一つ。
震える膝を、マントの下で必死に隠す。
そして、詐欺師の営業スマイル(ロイヤル・ストレート・フラッシュ級の作り笑顔)を浮かべた。
「芸? 馬鹿を言うな。俺は道化師(ピエロ)じゃない」
俺はあえて、アリスの提案を一蹴した。
「……ほう?」
アリスの眉がピクリと動く。
「俺とお前がやるのは『対等のゲーム』だと言ったはずだ。一方的に俺が媚びるような真似はごめんだね」
俺はポケットから、先ほどの金貨を取り出した。
チンッ、と親指で弾き、空中でキャッチする。
「俺が提案するのは『コイン当て』だ。ただし、ただのコイン当てじゃない」
「……どういう意味ですか?」
食いついた。
俺はニヤリと笑う。
「このコインの表と裏。俺がどちらに賭けたか、お前が当てる。……ただし、俺は『魔法で結果を操作する』かもしれないし、『しない』かもしれない」
嘘だ。俺は魔力1だ。魔法なんて使えない。
だが、相手は俺を「得体の知れない強者」だと(半信半疑だが)思っている。
「お前は、俺の『嘘(ブラフ)』を見抜いて、正しい面を当てられるか? ――どうだ、魔王サマ。退屈しのぎにはなるだろう?」
俺は挑発的にアリスを見下ろした。
心臓は破裂しそうだ。もし「面倒くさい、死ね」と言われたら即終了の綱渡り。
アリスが沈黙する。
赤い瞳が、俺の深淵を覗き込むように細められる。
数秒の静寂が、永遠のように感じられた。
「……ククッ。アハハハハッ!!」
突然、アリスが爆笑した。
「面白い! 人間風情が、魔王である私に『心理戦』を挑むとは! いいでしょう、その度胸に免じて乗ってあげます!」
通じた。
首の皮一枚で繋がった。
「では、始めましょうか。コインを投げなさい」
アリスが楽しそうに椅子に座り直す。
俺は震える指で、金貨を構えた。
(勝負は一瞬。コインを投げた瞬間、奴の全神経がコインに向く。その隙に……!)
俺の狙いは、ゲームに勝つことじゃない。
ゲームに熱中させて、その隙に「逃げる」ことだ。
「いくぞ。――表か、裏か!」
俺は金貨を高く弾き上げた。
月光を反射して、金貨が回転しながら落下してくる。
アリスの赤い瞳が、獲物を追う猫のようにコインの動きを追う。
今だッ!!
俺は全速力で、その場からダッシュし――
ドォォォォォンッ!!!
「きゃあああああっ!?」
「なっ、なんですの!?」
突如、庭園の壁が爆発した。
俺の逃走ルートが、粉塵と瓦礫で埋め尽くされる。
「……は?」
俺とアリスが、同時に爆心地を振り返る。
土煙の中から現れたのは、パジャマ姿の二人の美女。
仁王立ちするルビィ(元ドラゴン)と、聖典を構えたエリス(聖女)だった。
「まあ! マスターったら! 夜中にこっそり抜け出して、こんな所で『逢引』ですの!?」
「信じられませんカイト様! 私という聖女がいながら、こんな……こんな幼女(ロリ)に手を出すなんて!!」
二人の視線が、俺とアリスに突き刺さる。
最悪だ。
夜逃げがバレた。
しかも、一番最悪なタイミングで、一番厄介な連中に。
「……あーあ。邪魔が入っちゃいましたね」
アリスが、つまらなそうにため息をついた。
落ちてきた金貨を、見向きもせずに指先で弾き飛ばす。
彼女の瞳から、「興味」の光が消えていく。
「……冷めました。やっぱり、あなたもただの人間ですね」
アリスの全身から、再びどす黒い殺気が膨れ上がる。
ゲームオーバーの合図だ。
「約束通り、手足をもらいますね? ――死になさい」
アリスが手をかざす。
回避不能の、死の魔法が放たれようとしたその時。
ブォォォォンッ!!
パァァァァンッ!!
二つの影が、俺の前に飛び出した。
「マスターに手出しはさせませんわ! このチビッ子!!」
「幼女趣味(ロリコン)の罪は重いですが……カイト様を裁くのは神(わたし)です!」
ルビィの灼熱のブレスと、エリスの神聖な光の障壁が、同時に展開された。
ドォォォォォンッ……!!!
三つの強大な力が衝突し、王城の庭園が光と爆風に包まれた。
「……嘘だろ」
俺は爆風で吹き飛ばされ、植え込みの中に頭から突っ込んだ。
(助かった……のか?)
いや、違う。
地獄の蓋が開いただけだ。
「へえ……。トカゲと、教会の犬ですか。少しは楽しめそうですね?」
土煙の向こうで、魔王アリスが嬉しそうに笑っていた。
その背後には、夜空を覆い尽くすほどの巨大な「闇の翼」が出現している。
「いいでしょう。まとめて相手をしてあげます。――『魔王』の力、見せてあげますよ!!」
物理最強(ルビィ) vs 精神最強(エリス) vs ラスボス最強(アリス)。
世界を滅ぼしかねない三つ巴の怪獣大決戦が、俺の庭先で始まろうとしていた。
俺、黒瀬カイト。
ただ夜逃げをしたかっただけなのに、なぜか「世界最終戦争(ラグナロク)」の引き金を引いてしまったようです。
深夜の王城庭園。
月明かりの下、魔王アリス(幼女ver.)が無邪気に宣言した。
俺、黒瀬カイトは、額から冷や汗をダラダラ流しながら、目の前の「死」と対峙していた。
夜逃げは失敗。
遭遇したのはラスボス。
始まったのは、負ければ四肢切断&ペットコース確定のデスゲームだ。
「ルールは簡単です。『私を楽しませること』。それだけです」
アリスが優雅にティーカップを傾ける。
「私が『飽きた』『つまらない』と思った瞬間、あなたの負け。手足をいただいて、ホルマリン漬けにしますね」
理不尽すぎる。
採点基準が「魔王の気分次第」って、どんなクソゲーだよ。
「さあ、カイトお兄さん。どんな芸を見せてくれるんですか? 踊ります? それとも、命乞いの歌でも歌います?」
アリスの瞳が、嗜虐的な色を帯びて輝く。
俺が恐怖で引きつる顔を見るのが、今の彼女にとって最高のエンターテイメントらしい。
(落ち着け、俺。相手は『退屈』している最強種だ。力で勝つ必要はない。興味を引き続ければいいんだ……!)
俺は深呼吸を一つ。
震える膝を、マントの下で必死に隠す。
そして、詐欺師の営業スマイル(ロイヤル・ストレート・フラッシュ級の作り笑顔)を浮かべた。
「芸? 馬鹿を言うな。俺は道化師(ピエロ)じゃない」
俺はあえて、アリスの提案を一蹴した。
「……ほう?」
アリスの眉がピクリと動く。
「俺とお前がやるのは『対等のゲーム』だと言ったはずだ。一方的に俺が媚びるような真似はごめんだね」
俺はポケットから、先ほどの金貨を取り出した。
チンッ、と親指で弾き、空中でキャッチする。
「俺が提案するのは『コイン当て』だ。ただし、ただのコイン当てじゃない」
「……どういう意味ですか?」
食いついた。
俺はニヤリと笑う。
「このコインの表と裏。俺がどちらに賭けたか、お前が当てる。……ただし、俺は『魔法で結果を操作する』かもしれないし、『しない』かもしれない」
嘘だ。俺は魔力1だ。魔法なんて使えない。
だが、相手は俺を「得体の知れない強者」だと(半信半疑だが)思っている。
「お前は、俺の『嘘(ブラフ)』を見抜いて、正しい面を当てられるか? ――どうだ、魔王サマ。退屈しのぎにはなるだろう?」
俺は挑発的にアリスを見下ろした。
心臓は破裂しそうだ。もし「面倒くさい、死ね」と言われたら即終了の綱渡り。
アリスが沈黙する。
赤い瞳が、俺の深淵を覗き込むように細められる。
数秒の静寂が、永遠のように感じられた。
「……ククッ。アハハハハッ!!」
突然、アリスが爆笑した。
「面白い! 人間風情が、魔王である私に『心理戦』を挑むとは! いいでしょう、その度胸に免じて乗ってあげます!」
通じた。
首の皮一枚で繋がった。
「では、始めましょうか。コインを投げなさい」
アリスが楽しそうに椅子に座り直す。
俺は震える指で、金貨を構えた。
(勝負は一瞬。コインを投げた瞬間、奴の全神経がコインに向く。その隙に……!)
俺の狙いは、ゲームに勝つことじゃない。
ゲームに熱中させて、その隙に「逃げる」ことだ。
「いくぞ。――表か、裏か!」
俺は金貨を高く弾き上げた。
月光を反射して、金貨が回転しながら落下してくる。
アリスの赤い瞳が、獲物を追う猫のようにコインの動きを追う。
今だッ!!
俺は全速力で、その場からダッシュし――
ドォォォォォンッ!!!
「きゃあああああっ!?」
「なっ、なんですの!?」
突如、庭園の壁が爆発した。
俺の逃走ルートが、粉塵と瓦礫で埋め尽くされる。
「……は?」
俺とアリスが、同時に爆心地を振り返る。
土煙の中から現れたのは、パジャマ姿の二人の美女。
仁王立ちするルビィ(元ドラゴン)と、聖典を構えたエリス(聖女)だった。
「まあ! マスターったら! 夜中にこっそり抜け出して、こんな所で『逢引』ですの!?」
「信じられませんカイト様! 私という聖女がいながら、こんな……こんな幼女(ロリ)に手を出すなんて!!」
二人の視線が、俺とアリスに突き刺さる。
最悪だ。
夜逃げがバレた。
しかも、一番最悪なタイミングで、一番厄介な連中に。
「……あーあ。邪魔が入っちゃいましたね」
アリスが、つまらなそうにため息をついた。
落ちてきた金貨を、見向きもせずに指先で弾き飛ばす。
彼女の瞳から、「興味」の光が消えていく。
「……冷めました。やっぱり、あなたもただの人間ですね」
アリスの全身から、再びどす黒い殺気が膨れ上がる。
ゲームオーバーの合図だ。
「約束通り、手足をもらいますね? ――死になさい」
アリスが手をかざす。
回避不能の、死の魔法が放たれようとしたその時。
ブォォォォンッ!!
パァァァァンッ!!
二つの影が、俺の前に飛び出した。
「マスターに手出しはさせませんわ! このチビッ子!!」
「幼女趣味(ロリコン)の罪は重いですが……カイト様を裁くのは神(わたし)です!」
ルビィの灼熱のブレスと、エリスの神聖な光の障壁が、同時に展開された。
ドォォォォォンッ……!!!
三つの強大な力が衝突し、王城の庭園が光と爆風に包まれた。
「……嘘だろ」
俺は爆風で吹き飛ばされ、植え込みの中に頭から突っ込んだ。
(助かった……のか?)
いや、違う。
地獄の蓋が開いただけだ。
「へえ……。トカゲと、教会の犬ですか。少しは楽しめそうですね?」
土煙の向こうで、魔王アリスが嬉しそうに笑っていた。
その背後には、夜空を覆い尽くすほどの巨大な「闇の翼」が出現している。
「いいでしょう。まとめて相手をしてあげます。――『魔王』の力、見せてあげますよ!!」
物理最強(ルビィ) vs 精神最強(エリス) vs ラスボス最強(アリス)。
世界を滅ぼしかねない三つ巴の怪獣大決戦が、俺の庭先で始まろうとしていた。
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