15 / 88
第15話:銀水晶の皇后、その愛は永遠を刻む
帝国始まって以来の、最も輝かしい一日がやってきた。
ルミナス王国は正式に消滅し、その領土はヴァルグリーズ帝国の「シエラ直轄領」となった。
かつて私を虐げた大地は、今や私の魔力によって常春の楽園へと生まれ変わろうとしている。
そして今日。
私は帝国の、そしてゼノス様の「唯一無二の伴侶」として、正式に戴冠の儀を迎える。
「……シエラ。準備はいいか」
控えの間に現れたゼノス様を見て、私は息を呑んだ。
黒と金の重厚な正装を纏った彼は、神話の軍神のような雄々しさと、
私だけに向ける蕩けるような甘い眼差しを同時に湛えている。
「陛下……。私、上手く歩けるでしょうか」
震える私の手に、ゼノス様は力強く指を絡めた。
そして、私のために新調された、銀水晶を惜しみなくあしらった純白のドレス――
その胸元に、彼自身の「黒狼」の紋章が刻まれたブローチを留める。
「お前が躓くなら、俺が抱き上げて歩く。
お前が怯えるなら、俺がこの手で世界を黙らせる。
……さあ、俺の女神よ。民に、その光を見せてやれ」
大聖堂の扉が開かれた瞬間。
数万人の民衆と、各国から集まった王侯貴族たちが、地鳴りのような歓声を上げた。
かつての私は、誰にも見向きもされず、冷たい地下室で泥を啜っていた。
けれど今、私が歩む真紅の絨毯の左右には、
大陸最強の騎士たちが剣を掲げ、跪き、最大級の敬意を表している。
その中心で、私はゼノス様の手を握り、ゆっくりと階段を上った。
玉座の前で、ゼノス様が私に膝をつく。
彼は、教国から献上された伝説の王冠――
「世界の守護者」の象徴を手に取り、私の銀髪の上に静かに載せた。
「今日この時、シエラ・ルナ・ヴァルグリーズを帝国の皇后と認め、
その魔力に帝国の全土を預けることを誓おう」
ゼノス様が立ち上がり、私の腰を引き寄せて、会場全体へ宣言する。
「もし、この女の髪一房でも傷つけようとする者がいれば、
俺が、その国の種の一つまで焼き尽くすと約束しよう」
あまりにも過保護で、狂気的なまでの宣戦布告。
けれど、会場を埋め尽くした民衆は、恐怖ではなく熱狂的な歓喜でそれに応えた。
彼らにとって、私は大地を癒やし、呪いを解いた「救いの光」なのだから。
祝宴が終わり、二人きりになった深夜の寝室。
窓の外では、祝祭の花火が絶え間なく夜空を彩っている。
私は、ようやく重い王冠を脱ぎ、ゼノス様の腕の中に体を預けた。
「……お疲れ様、俺の皇后」
「陛下……。私、本当に幸せですわ。
十年前のあの日、あなたに救われた時から、ずっと……」
「救われたのは、俺の方だ」
ゼノス様は、私の銀髪を熱っぽく撫で、耳元で低く囁いた。
「これからは、誰も邪魔させない。
公務も、民も、神もだ。
……明日の朝まで、いや、一生かけて、お前が俺のものだと体に刻み込んでやる」
「陛下……っ」
彼の熱い唇が、私の首筋から鎖骨へと這い上がる。
その瞳に宿っているのは、皇帝としての誇りではなく、
最愛の女をようやく完全に手に入れた一人の男の、剥き出しの執着。
私は彼の背中に腕を回し、深い、深い愛の海へと沈んでいった。
かつて「生贄」と呼ばれた少女は、
今、世界で最も強く、最も愛される「最上の幸福」を手に入れた。
物語はここで幕を閉じるのではない。
二人で紡ぐ、永遠に続く溺愛の歴史が、今ここから始まるのだ。
ルミナス王国は正式に消滅し、その領土はヴァルグリーズ帝国の「シエラ直轄領」となった。
かつて私を虐げた大地は、今や私の魔力によって常春の楽園へと生まれ変わろうとしている。
そして今日。
私は帝国の、そしてゼノス様の「唯一無二の伴侶」として、正式に戴冠の儀を迎える。
「……シエラ。準備はいいか」
控えの間に現れたゼノス様を見て、私は息を呑んだ。
黒と金の重厚な正装を纏った彼は、神話の軍神のような雄々しさと、
私だけに向ける蕩けるような甘い眼差しを同時に湛えている。
「陛下……。私、上手く歩けるでしょうか」
震える私の手に、ゼノス様は力強く指を絡めた。
そして、私のために新調された、銀水晶を惜しみなくあしらった純白のドレス――
その胸元に、彼自身の「黒狼」の紋章が刻まれたブローチを留める。
「お前が躓くなら、俺が抱き上げて歩く。
お前が怯えるなら、俺がこの手で世界を黙らせる。
……さあ、俺の女神よ。民に、その光を見せてやれ」
大聖堂の扉が開かれた瞬間。
数万人の民衆と、各国から集まった王侯貴族たちが、地鳴りのような歓声を上げた。
かつての私は、誰にも見向きもされず、冷たい地下室で泥を啜っていた。
けれど今、私が歩む真紅の絨毯の左右には、
大陸最強の騎士たちが剣を掲げ、跪き、最大級の敬意を表している。
その中心で、私はゼノス様の手を握り、ゆっくりと階段を上った。
玉座の前で、ゼノス様が私に膝をつく。
彼は、教国から献上された伝説の王冠――
「世界の守護者」の象徴を手に取り、私の銀髪の上に静かに載せた。
「今日この時、シエラ・ルナ・ヴァルグリーズを帝国の皇后と認め、
その魔力に帝国の全土を預けることを誓おう」
ゼノス様が立ち上がり、私の腰を引き寄せて、会場全体へ宣言する。
「もし、この女の髪一房でも傷つけようとする者がいれば、
俺が、その国の種の一つまで焼き尽くすと約束しよう」
あまりにも過保護で、狂気的なまでの宣戦布告。
けれど、会場を埋め尽くした民衆は、恐怖ではなく熱狂的な歓喜でそれに応えた。
彼らにとって、私は大地を癒やし、呪いを解いた「救いの光」なのだから。
祝宴が終わり、二人きりになった深夜の寝室。
窓の外では、祝祭の花火が絶え間なく夜空を彩っている。
私は、ようやく重い王冠を脱ぎ、ゼノス様の腕の中に体を預けた。
「……お疲れ様、俺の皇后」
「陛下……。私、本当に幸せですわ。
十年前のあの日、あなたに救われた時から、ずっと……」
「救われたのは、俺の方だ」
ゼノス様は、私の銀髪を熱っぽく撫で、耳元で低く囁いた。
「これからは、誰も邪魔させない。
公務も、民も、神もだ。
……明日の朝まで、いや、一生かけて、お前が俺のものだと体に刻み込んでやる」
「陛下……っ」
彼の熱い唇が、私の首筋から鎖骨へと這い上がる。
その瞳に宿っているのは、皇帝としての誇りではなく、
最愛の女をようやく完全に手に入れた一人の男の、剥き出しの執着。
私は彼の背中に腕を回し、深い、深い愛の海へと沈んでいった。
かつて「生贄」と呼ばれた少女は、
今、世界で最も強く、最も愛される「最上の幸福」を手に入れた。
物語はここで幕を閉じるのではない。
二人で紡ぐ、永遠に続く溺愛の歴史が、今ここから始まるのだ。
あなたにおすすめの小説
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
死ぬ瞬間にだけ、愛してほしい
しょくぱん
恋愛
「代わって。死なない程度に、ね?」
異母姉リリアーヌの言葉一つで、エルゼの体は今日もボロボロに削られていく。
エルゼの魔法は、相手の傷と寿命を自らに引き受ける「禁忌の治癒」。
その力で救い続けてきたのは、初恋の人であり、姉の婚約者となった王太子アルベルトだった。
自分が傷つくほど、彼は姉を愛し、自分には冷ややかな視線を向ける。
それでもいい。彼の剣が折れぬなら、この命、一滴残らず捧げよう。
だが、エルゼの寿命は残りわずか。
せめて、この灯火が消える瞬間だけは。
偽りの聖女ではなく、醜く焼けた私を、愛してほしい。