博多に移住して人生をやり直す

yamajuu

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第二章 1年生 1学期

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「香山さん、食事会もカラオケも行ってないのはうちの班だけです」

「お前たちが喧嘩ばかりするからだ」

「もう私たちは仲直り出来ました。
いつでもOKです」

「じゃあ、絵美里が幹事をするなら俺も出るよ。
3人で話をまとめてこい」
俺は、山本絵美里に幹事を押し付けた。
だが次の日、3人が一緒にやって来て俺に頼んできた。

「3人で話し合っても、香山さんが納得するような店が決まりません。
香山さんが決めた事に従いますから、幹事をお願いします」

「えらく素直だな?」

「江口花蓮に、香山さんを取られるわけにはいきません」

「何で花蓮の名前が出てくる?」

「香山さんのお気に入りなんでしょう?」

「一緒に自主練はするが、実習室以外では会った事もない。
それより、俺が決める店には文句言わないと誓えるか?」

「「誓います」」
3人が声を合わせたので、渋々引き受けることにした。

土曜日の午後、俺が西鉄天神駅の大画面前に行くと、3人は精一杯に着飾って待っていた。

「おう、みんなオシャレをしてきたな」

「一番良い服装で来いって言うから、頑張りました」
「私は、わざわざワンピースを買いましたよ」
「私も買いました」
十代の2人には、無理をさせたようだ。
文句を言う3人を引き連れて10分も歩くと、大名ガーデンシティに到着した。
エレベーターでザ•リッツ•カールトン福岡まで昇ると、カフェの予約席に案内される。
あれだけ騒々しかった3人は無口になった。

「シャンパンを2つと乾杯用のノンアルコールのドリンクを2つ頼む」

「かしこまりました、直ぐにご用意いたします」
ボーイが席から離れると、3人が小声で話し出す。

「ここ、いくらですか」
絵美里が不安そうな顔をした。

「心配するな、もうお前たちの分まで払ってある」

「「奢ってもらう訳にはいきません」」
3人が声を揃える。

「周りをよく見てみろ、男一人の客などいないだろ。
いくら俺が金を持ってても、女性同伴じゃないと恥ずかしくて、ここには入れない。
お前たちのお陰で、俺はここに来られたんだ。
だから遠慮はいらん。
堂々と奢ってもらえばいい」

そこにドリンクとアフタヌーンティーセットが運ばれてきた。

「俺たちの班に乾杯」
幹事の俺が乾杯の音頭を取る。

「 「カンパ~イ」 」
3人が周りに気遣って、小さな声でグラスを掲げた。
みんなはスマホで撮影を始める、俺は静かに飲み続けた。

「これ、全部食べていいんですか?」

「全部食べて、味を記憶するのも経験だ」

「香山さんのメールに、お腹を空かして来いと書いてあった意味がわかりました」

「いくらデザートは別腹と言っても、これを全部食べきるのは大変だからな」
ケーキスタンドには、セイボリー※が4種類にスコーンなど2種類、デザートが6種類が並んでいた。
俺たちは勉強に来ている、全部味見するのは最低条件だ。
薩摩甘えびのトルティーヤロールをつまみに、白ワインを合わせる。
絵美里がワインを欲しがるので、辛口のロゼワインを頼んでやった。

「香山さんとお酒が飲めて、うれしいです」

「24階のBarは、もっと大人の世界だぞ」

「連れて行ってくれるんですか?」

「学校を卒業出来たら、連れて行くよ」

「4人だけの約束ですよ」

何とか俺たちの班もまとまったようだ。


※セイボリー(Savory) スイーツと対比して使われ、甘くない軽食や惣菜を指します

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