博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第三章 1年生 夏休み

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地下鉄で博多駅に向かい、JR鹿児島本線に乗り換える。
普通列車で30分程度で福間駅に到着、改札を抜けると高橋さんと武内凛花、古賀陽妃はるひの3人が待っていた。
皆で一緒に駐車場まで歩くと、ワンボックス車に乗って高橋さんの家に向かう。

「家内が香山さん1人じゃ緊張するって言うので、2人も呼んだんだ」

「ひどい、私たちはおまけですか」

「いやいや、立派なゲストだよ」

「俺の方が緊張しますよ」
話しているうちに高橋邸に到着、敷地が広い高台の1軒家だった。

「皆さん、いらっしゃい」
ふくよかな女性がお出迎えに出てきた、高橋さんの奥様だろう。
皆で一通りの挨拶を済ませると、家の中へ案内された。
通されたリビングルームから、遠くに海が見える。

「おお、素晴らしい景色ですね」

「我が家の自慢だ。不便はいっぱいあるけどな」

「それでも最高に贅沢です」
俺たちが話していると、奥様からランチの用意が出来たと声がかかった。
ダイニングの椅子に座ると、テーブルには色とりどりの料理が並んでいる。
フルートグラスにスパークリングワインが注がれて、高橋さんの挨拶で始まった。

「今日は、皆が来てくれた事がとても嬉しいです。
大いに飲んで、食べて下さい。乾杯!」

「 「カンパ~イ」 」

オードブルに出されている真鯛のカルパッチョが美味しい。
一緒に出された九州産の白ワインとの組み合わせが最高だ。

「このカルパッチョは美味しいですね」

「香山さんに褒められると嬉しいです。
美味しいものは、たくさん召し上がってるんでしょう?」

「ほとんどが仕事関係でした。
家でこの料理が食べられるなんて、高橋さんが羨ましいです」
高橋さんは、俺の事を奥様に話していた。
夫婦仲がとても良好だと分かる。

「東京に行ってたんでしょう?」
武内凛花が聞いてくる。

「ええ、母の奢りで回転寿司に行きました」

「おかあさまが払ったんですか?」

「母は、私の援助を受け取らないんです」

「それは立派なおかあさまですね」
奥様は賛同してくれた。

「自慢の母です。
これは東京に行った際に手に入れました。
是非、高橋さんに使って欲しいんです」
俺はプレゼントを渡した。
すぐに箱を開けると、高橋さんが目を輝かせる。

「これは、素晴らしい」

「燕三条※のミルクピッチャーです。
かっぱ橋道具街で見つけた時、高橋さんの顔が浮かびました」

「せっかくいただいたから、大事に使います」

「え~、いいなあ。
私たちの分は、ないんですか?」

「今日、会うって知らなかった。
約束していたチョコレートは買ってあるよ」

「まさか、班の女子には何か買ったとか?」

「お揃いのミルクピッチャーを買った」

「そうやって甘やかすから、女子は皆、次は香山さんの班に行きたいって言うんです」

「俺は聞いて無いけど」

「あの3人が班替えに反対してるんです」

「あちこちで、香山さんはモテますね」

高橋さんが締めてくれたので、話題が変わって助かった。
次々と出された奥様の料理は、今のままでもカフェで仕事が出来るレベルだ。
あとは、高橋さんがバリスタになれば店は運営出来る。
ちょっと、羨ましいと思ってしまった。

※燕三条 新潟県にある「燕市」と「三条市」を合わせた地域の呼称で、特に金属加工のまちとして世界的に知られています。

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