31 / 82
第三章 1年生 夏休み
6
しおりを挟む
「香山さん、江口花蓮にブレッドナイフをプレゼントしたって本当ですか?」
「絵美里、誰に聞いた?」
「加藤君が言ってました」
「俺がプレゼントしたのは本当だ。
自習で世話になったし、これからも教えてもらうからお礼だよ」
8月後半のオープンキャンパスは、俺たちの実習班も参加する。
前日ミーティングに出た後、俺は3人から責められた。
「あれって、相当高額ですよね」
今度は紗彩が言ってきた。
「お前たちにも奢ったし、お土産もやっただろう」
「でも、羨ましいです」
彩音まで恨めしそうに話してる。
「じゃあ、班で同じ物を使おうとミルクピッチャーを買ってきたけど、いらないんだな?」
「えっ、ホント?」
「買ってきてくれたんですか?」
「欲しいです」
3人が一斉に声をあげる。
俺はバッグから3つの箱を出した。
「形は一緒だが、色が違う。
俺は黒を使うから、3人で好きなのを選べ」
話し合いでは決まらずに、結局はジャンケンで絵美里が赤、彩音が白、紗彩がピンクに決まった。
実習室でラテアートの練習をする。
さっそく新しいピッチャーを使ってみるが、まだ慣れない。
明日は参加者の前で披露するので、使い慣れたピッチャーを使うことにした。
エイジア製菓学校オープンキャンパスの当日、朝のランニングから猛烈に暑い。
朝6時なのに、もう30℃近くまで上がっている。
天気予報では最高気温38℃まで上がるので、ラテよりアイスコーヒーとかソフトドリンクが出そうだ。
少し早めに登校すると、先生たちが準備に大わらわだった。
「香山君、良いところに来た。手伝って」
「了解です」
製氷所から届いたばかりの純氷を台車に乗せて実習室まで運ぶ。
冷凍庫に純氷を収納したら、担任から声を掛けられた。
「今日は猛暑だから、保護者はアイスコーヒーが主役になると思う」
「そうですね」
「香山君の班は実習に参加しないでいいから、保護者のコーヒーを任せる」
「分かりました」
「忙しくて手が足りなかったら、応援を出すから」
「出来るところまで、頑張りますよ」
午前10時になり、今日の参加者と保護者が会場入りしてくる。
カフェ専科の参加者は20名ほどで、参加者2人に1人の学生がサポートにつく。
講師の指導でBLTサンドとラテアートを体験してもらう手筈になっていた。
講師の説明から、体験実習が始まる。
柔らかい食パンをサンドイッチ用に薄く切るのが意外に難しい。
サポートの学生と参加者が真剣に取り組んでいるのが微笑ましい。
その間に俺の班はコーヒースタンドで準備を進める。
保護者が少しずつ、コーヒーのチケットを持って来た。
絵美里がハンドドリップで1杯ずつ淹れて、氷を入れた容器で手渡す。
ラテアートを希望する保護者は俺が担当して、ハート、チューリップ、ロゼッタを描いて渡していた。
「どれくらい練習すれば、描けるようになるんですか?」
ラテを受け取った保護者が聞いてきた。
「私は全くの初心者で入学しましたが、4ヶ月で基本の形は出来るようになりました」
「貴方、先生じゃないんですか?」
「社会人から入学した1年生ですよ」
「絵美里、誰に聞いた?」
「加藤君が言ってました」
「俺がプレゼントしたのは本当だ。
自習で世話になったし、これからも教えてもらうからお礼だよ」
8月後半のオープンキャンパスは、俺たちの実習班も参加する。
前日ミーティングに出た後、俺は3人から責められた。
「あれって、相当高額ですよね」
今度は紗彩が言ってきた。
「お前たちにも奢ったし、お土産もやっただろう」
「でも、羨ましいです」
彩音まで恨めしそうに話してる。
「じゃあ、班で同じ物を使おうとミルクピッチャーを買ってきたけど、いらないんだな?」
「えっ、ホント?」
「買ってきてくれたんですか?」
「欲しいです」
3人が一斉に声をあげる。
俺はバッグから3つの箱を出した。
「形は一緒だが、色が違う。
俺は黒を使うから、3人で好きなのを選べ」
話し合いでは決まらずに、結局はジャンケンで絵美里が赤、彩音が白、紗彩がピンクに決まった。
実習室でラテアートの練習をする。
さっそく新しいピッチャーを使ってみるが、まだ慣れない。
明日は参加者の前で披露するので、使い慣れたピッチャーを使うことにした。
エイジア製菓学校オープンキャンパスの当日、朝のランニングから猛烈に暑い。
朝6時なのに、もう30℃近くまで上がっている。
天気予報では最高気温38℃まで上がるので、ラテよりアイスコーヒーとかソフトドリンクが出そうだ。
少し早めに登校すると、先生たちが準備に大わらわだった。
「香山君、良いところに来た。手伝って」
「了解です」
製氷所から届いたばかりの純氷を台車に乗せて実習室まで運ぶ。
冷凍庫に純氷を収納したら、担任から声を掛けられた。
「今日は猛暑だから、保護者はアイスコーヒーが主役になると思う」
「そうですね」
「香山君の班は実習に参加しないでいいから、保護者のコーヒーを任せる」
「分かりました」
「忙しくて手が足りなかったら、応援を出すから」
「出来るところまで、頑張りますよ」
午前10時になり、今日の参加者と保護者が会場入りしてくる。
カフェ専科の参加者は20名ほどで、参加者2人に1人の学生がサポートにつく。
講師の指導でBLTサンドとラテアートを体験してもらう手筈になっていた。
講師の説明から、体験実習が始まる。
柔らかい食パンをサンドイッチ用に薄く切るのが意外に難しい。
サポートの学生と参加者が真剣に取り組んでいるのが微笑ましい。
その間に俺の班はコーヒースタンドで準備を進める。
保護者が少しずつ、コーヒーのチケットを持って来た。
絵美里がハンドドリップで1杯ずつ淹れて、氷を入れた容器で手渡す。
ラテアートを希望する保護者は俺が担当して、ハート、チューリップ、ロゼッタを描いて渡していた。
「どれくらい練習すれば、描けるようになるんですか?」
ラテを受け取った保護者が聞いてきた。
「私は全くの初心者で入学しましたが、4ヶ月で基本の形は出来るようになりました」
「貴方、先生じゃないんですか?」
「社会人から入学した1年生ですよ」
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる