博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第四章 1年生 2学期

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9月1日、エイジア製菓学校の2学期が始まった。
登校すると、カフェ専科の教室の後ろに色々と学生のお土産が並んでいる。
俺も東京で買った有名店のチョコレートを持ち込んだ。

「班のみんなで分けて食べてください」
4個入りチョコレートの箱を、班の代表者に配っていく。

「これって、いい値段だよね?」
武内凜花が俺に言っている。

「どうせなら、みんなに食べてもらったほうが良いだろ。
金の問題じゃないよ」
お土産を配れってお前らが言い出したことだろ、って思ったが言葉を飲み込んだ。

2学期から俺はカフェ専科と選択科目は製パンに決まっている。
実習班の3人は、絵美里と彩音が製菓、紗彩が製パンを選んだ。
最初の1週間は落ち着いて始まり、実習の後に自習するのも当たり前の行動になっている。

土曜日の昼間、久しぶりに今泉にランチを食べに来た。
今泉は、博多で一番好きな街だ。
中心部の天神と道路を一本挟んだだけで、ラブホテル街にパチンコ店、飲食店、ワンルームマンションが混在している。
お行儀が良い大名より、ごちゃまぜ感が面白い。
都心には珍しい古い民家を改造したカフェの2階で、カレーランチを食べていた。

「佐藤さんですか?」
全然知らない女性から声を掛けられた。
口に食べ物が入っていたので返事が出来ないうちに、近くの席からおっさんがやって来た。

みおちゃんだよね、待ち合わせていた佐藤です」

「あっ、違います」
女の子が戸惑って否定した。

「ええ、そんなはずがないだろ!」
おっさんが声を荒げた。

「俺の連れに何をするんだ。文句があるなら相手をするけど」
椅子から立ち上がったら、女は俺の後ろに隠れる。
男は睨みつけてきたが、小柄な奴を見下すように俺が目を合わせると店を出て行った。

「まあ、座れ。奴が外で見張ってるかもしれない」

「すいません、巻き込んだみたいで」

「事情はあるんだろうけど、あえて聞かない。ただ乗りかかった船だ、家まで送ろう」

さっさとランチを終わらせて、店を出てからパーキングに向かう。
彼女を車に乗せたら、大橋方面に向かって走り出した。
土曜日の午後、天神は車が渋滞している。車内は静かだったが彼女が泣き出した。
ひとしきり泣いたら、急に話し出す。

「お金が無くて、風俗の面接に来たんです。
でも急に怖くなって断ろうと思ったら、あの男性が出てきてパニックになりました」

「どうせ、そんな話だと思った。
同情はしないが、その程度の覚悟では風俗で働いている女性に失礼だ」

「働いてる女性を知ってるんですか?」

「時々、風俗には行くからな。お気に入りの女性がいる」

「そんな風には見えません」

「男の見た目に騙されるな、君に風俗は無理だ。
コンビニでバイトしてろ」

「無理って決めつけないで下さい」

「じゃあ、いくら欲しい?」

「すぐに欲しいのは、30万ですけど」

「じゃあ、今すぐ払ってやるよ。
その代わり、明日一日俺のものになれ。出来るんだろう?」

俺は、銀行に向かって車を走らせた。
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