博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第五章 1年生 冬休み

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新宿のホテルで目覚めたら、お目当てのカフェを訪れてエッグベネディクトプレート※とコーヒーで朝食を取る。
カフェ専科で作ったメニューだから、これを売り物にしたカフェで食べてみたかった。
なかなかのボリューム、モーニングで出すなら多少の改良の余地はあるが美味い。
食べ応えは最高だった。

着替えてから、日本橋にある資産運用会社のオフィスに金融manager/佐藤氏を訪ねる。
今年最後の面談で、年間の運用実績を確認していく。
言い古された言葉だが、《 金が金を生む 》という事を思い知らされる。
俺が社長時代に一生懸命稼いで手にした額を軽く超える金額が運用益として提示されていた。

「金が金を生むって、本当なんですね」

「当社の運用を評価された褒め言葉だと受け取っておきます」
その後は、来年以降の運用について説明を受ける。
俺は高いリターンより、安全性をリクエストした。

「持ち慣れないお金を手にしたせいで、結婚に臆病になっています。
どんな相手を選べばいいんでしょう?」

「一番簡単なのは香山さんと同等か、それ以上のお金持ちでしょう。
向こうだってお金を守りたいから、結婚前に夫婦財産契約をすればいいんです。
ハリウッド俳優同士の結婚は、ほとんどがこのやり方ですよ」
佐藤氏は事もなげに答えた。

「相手が普通の女性だったら、どうします?」

「香山さんの資産管理会社Enhanceエンハンスの株式を特有財産※に指定すれば、離婚時には分与の心配はありません。
多少の慰謝料と子供の養育費、共有財産の分与だけで済むでしょう。
ただし、結婚前に夫婦財産契約を結ぶことを相手に了解してもらう必要があります」
俺が考えていると、佐藤氏が提案してくる。

「江口花蓮さんの事ですね、こちらで彼女を調べましょうか?」

「調べても、問題は起きませんか?」

「調べるのはプロの仕事です、問題はありません。
ただし調べた結果を判断するのは香山さんです。私はアドバイスしか出来ません」

「何か、怖いですね」

「結婚した後に判るより、事前に知っておくだけの話です。
知らない方が怖くないですか?」

「そう言われれば、そうですけど」

「大変失礼だと分かってて言いますが、香山さんが死んでもお金を持っていくことは出来ません。
生きていれば母親、奥さん、子供に残すか、寄付でもするか。
香山さんがこれから先、どんな人生を選ぶかで決まります。よく考えて下さい」

年末に大きな宿題を出された気がした。
だが本気で考えるべきだという事は、自分でも分かっている。
年末の挨拶をしてオフィスを出る。外は北風が冷たかった。


※エッグベネディクト イングリッシュマフィンの上にベーコンやハム、ポーチドエッグを乗せ、その上からオランデーズソースをかけたアメリカ発祥の料理

※特有財産 夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産で、原則として財産分与の対象にはなりません

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