博多に移住して人生をやり直す

yamajuu

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第六章 1年生 3学期

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「香山さん、すみませんでした」

3学期初日、俺が登校すると入り口で加藤貴大が待っていて俺に謝った。
一緒に吉田健太も頭を下げている。

「何のことだ?」

「香山さんが失恋した話です。
健太が彩音さんにフラれたので、慰めようと香山さんの話をしたら、皆に広がってしまって」

「別にいいよ、本当に隠したいなら話してない」
ロッカールームまで歩きながら話す。エプロンを着けたらカフェ実習室に入った。
エスプレッソマシンを使って、ラテアートを描いて二人に渡す。

「健太、ダメだったか」

「彩音さんには、友達以上には考えられないって言われました」

「製菓には健太が好きな女子もいるだろう。
東京土産をやるから元気を出せ」
俺はかっぱ橋で買ったパレットナイフとホイッパーを渡す。

「おお、カッコいい。もらっていいんですか?」

「涼介とお揃いだ、大事に使え」

「貴大にはクープナイフだ。俺と花蓮とお揃いだ」
羨ましそうに見ていた貴大にも、お土産を渡しておく。

「みんなにお土産買って、大丈夫ですか?」

「かっぱ橋道具街に行くと、つい買ってしまう」

「いつか連れて行ってください」

「ああ、俺が案内してやるよ」

「また男だけで悪だくみしてる」
遅れて来た花蓮が実習室に入ってくる。
すぐにお土産のクープナイフを渡すと、笑顔になった。

「シンプルで、よく切れそうです。香山さん、ありがとう」

3学期は2年生が卒業制作に入る為に、
2月初旬まで1年生は放課後の実習室が使えない。
その間を利用してインターンシップをしたいが、どこの企業を選ぶか迷う。

「香山君、君の事を話したら某企業の幹部からインターンとして受け入れてもいいと返事があった」
事前に担任と話をしていたら、向こうからインターンの話が来た。

「先生の紹介なら断れません。是非行きたいのでお願いします」
学校が用意した書類を持って、地元不動産開発会社に向かう。
面接を受けたら、その場でインターンが決まった。
配属は天神の店舗で、放課後の午後5時から8時までと告げられる。
担当者と一緒に国体道路沿いの店舗に行くと、店長に出迎えられた。

「インターンをお願いしている香山です、よろしくお願いします」

「歓迎します、明日からお願いしますね」
制服のサイズ合わせをして、ロッカーを用意してくれた。
ブラックのシャツ・パンツにブラウンのエプロンがクールだ。
オーストラリアのメルボルン本店と同じスタイルで、日本流にアレンジはしていない。
一番の売り物、FlatフラットWhiteホワイトを頂く。

「どうです?」

「ミルクがきめ細かく泡立っていて、最初からエスプレッソが味わえますね」

「これが南半球スタイルです」

「色々と勉強させて下さい、頑張ります」

店長の笑顔で、挨拶は成功したんだろう。
翌日から、放課後の3時間を働くことになった。

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