博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第六章 1年生 3学期

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「香山君、インターンお疲れ様でした」
俺がインターンシップの参加レポートを担任に渡すと声を掛けられた。
レポートを読みながら、担任がニヤニヤしている。

「向こうの役員が、香山君が就職希望なら欲しいと言ってきてる」

「ありがたいお話ですが、俺は開業希望なので難しいです」

「分かってる。どうだった、大手のやり方は?」

「色々と興味深かったですね。割り切りと強みの押し出しが凄いです」

「大手はマーケティングが強みだからな、個人の店とは真逆だろう」

「大手の中でも個性的な店で、面白かったです」

「みんなが香山君のように目的意識を持ってインターンに行ってくれればなあ」
確かに、無給インターンをタダ働きさせられると思ってる学生が多い。
自分が店を経営する時に相手がただで手の内を見せてくれるんだから、ありがたいと考えられない。
結局は意識の持ち方次第なのだ。

2月の第1週、土曜日にエイジア製菓学校の合格者ミーティングが行われる。
俺たちは朝から学内カフェの準備に余念がない。
うちの班は、ラテアート専従に回されている。

「去年、俺がラテアートを頼んだら女子学生がリーフを描いてくれた。
彼女が一生懸命だったのを覚えてる」

「美人でした?」

「真剣な表情に見惚みとれたよ」

「ええ、嫌だあ」

「お前たちは、今日の客が見惚れるほどのテクニックを披露しろ」
俺が実習班のメンバーに喝を入れておく。

石川結奈委員長を見たら、彼女の目が釣り上がっている。
今は冷静に現場を見て、手を打つべき時に動ける準備をすることだ。
一言だけ、アドバイスをする。

「イライラする気持ちは分かる、でも君一人で全ては出来ない。
みんなを信頼して任せておけ。君がやる事は人手が足りないところを見極めることだ」

「香山さん、ありがとうございます。ちょっと焦っていました」

「客の立場で全体を見れば、どこがうまくいってないかが分かる。不満の種を潰すんだ」

「はい、頑張ってみます」
彼女の明るさなら、みんなも協力して成功するだろう。

午前10時、開会式の後に卒業制作の内覧が行われた。
作品の見学が終わったカフェ専科の合格者と保護者が、続々と学内カフェに入って来た。
俺たちは、お客様の席まで行って、目の前でラテアートを披露する。
俺は班の先頭を切って、テーブルに向かった。
最近、重点的に練習していたロゼッタをカップの中に描く。
何とか、うまく仕上がった。

「ロゼッタというラテアートの基本形です」
俺が男子高校生の前に置いた。

「きれいに出来てます。先生、すごいですね」

「私は先生ではありません。カフェ専科の1年生ですよ」
俺が言うと男の子はぽかんとした顔だ。

「この学校には、社会人や外国から入学する人もいるんです。
色々な人が居て、面白いですよ」
俺の説明に、本人も保護者も納得した顔をしていた。
実習班の3人も練習の成果を発揮している様子。
学校祭の時より皆の動きがよい、今日も問題なく終わるだろう。

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