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第六章 1年生 3学期
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エイジア製菓学校の教務課に、オーストラリア視察旅行の計画書を提出した。
担任が確認する様に書類を見ているが、ニヤニヤしているのが鬱陶しい。
「香山君、問題を起こすなよ。
うちは高校じゃないから、プライベートには関与しないが」
「彼女とは雇い主と通訳の関係です。仕事にプライベートは持ち込みません」
「君にとっては、視察は仕事か?」
「ええ、開業準備の視察です。
計画書には金額は書いていませんが、旅行社の書類を見てください」
俺が出した旅行の工程表には、ホテル代金や航空券の詳細が書いてある。
ファミリー向けワンボックス車が買えるほどの金額を見て、担任が俺を見上げた。
「往復二人でビジネスクラスとは、良い身分だな」
「仕事で出張ですから、当然です」
「二人の単位は認められるだろう、良い視察報告を待っている。
頑張って、仕事してくれ」
「もちろん自腹ですから、本気で視察してきますよ」
出発は3月20日、一旦東京に行き羽田からの直行便だ。
今は、出発前の準備で忙しい。
「絵美里、バレンタインデーのお返しはオーストラリア土産でいいか?」
「 「もちろん、お土産がいいです」 」
3人とも異論は無さそうだ、義理チョコの連中にも了解してもらった。
3月10日、終業式があり1年生が終わる。
春休みは、学生たちがインターンシップや就活で忙しいので長めになっていた。
カフェ専科の打ち上げが、終業式の後に行われる。
今回はカフェレストランでアフタヌーンティーが開催されたが、俺と武内女史は主役扱いだった。
結婚式のようにひな壇に座らされて、司会者の女子から質問の嵐を受ける。
「どうして二人で視察に行くんですか?」
「私が企画を持ち込んで、通訳に立候補しました」
「香山さん、武内さん以外に通訳が出来ればそちらを選ぶ事も有りましたか?」
「TOEICのスコアが良い方にします」
「武内さん、何点ですか?」
「850点は取りました」
会場からため息が漏れる、さすがに誰も太刀打ち出来ない。
「旅行中、ホテルは別の部屋だそうですが相手が訪ねてきたらドアを開けますか?
香山さん、どうです?」
「開けません」
「ホントかよ」「いやいや」「なわけないだろ」とヤジが飛ぶ。
「どうしてですか?」
「プライベートで、アポ無しは非常識です」
「では武内さんにも同じ質問です?」
「私も香山さんと同じ答えです」
「では旅行中何も起こらないんですね?」
「起きないでしょう、私と香山さんは仕事の関係です。
みんなが考えるより、お互いにプロフェッショナルですよ」
俺が言いたい事を彼女が代弁してくれた。
社会人組は理解しているようだが、高校生組は疑心暗鬼のようだ。
なんとかインタビューを切り抜けたが、顔から火が出そうだった。
過去に一度も経験した事が無いハプニングだ。
「どうせなら、一夜くらい何かがあるかもしれない、って言えば面白いのに」
絵美里は不満顔で言う。
「絶対無いって思わせて、あった方が面白いだろ」
「「あるんですか」」
3人が声を揃える。
「あるかもしれないし、ないかもしれない」
「もう、香山さんったら。花蓮に言いつけますよ」
担任が確認する様に書類を見ているが、ニヤニヤしているのが鬱陶しい。
「香山君、問題を起こすなよ。
うちは高校じゃないから、プライベートには関与しないが」
「彼女とは雇い主と通訳の関係です。仕事にプライベートは持ち込みません」
「君にとっては、視察は仕事か?」
「ええ、開業準備の視察です。
計画書には金額は書いていませんが、旅行社の書類を見てください」
俺が出した旅行の工程表には、ホテル代金や航空券の詳細が書いてある。
ファミリー向けワンボックス車が買えるほどの金額を見て、担任が俺を見上げた。
「往復二人でビジネスクラスとは、良い身分だな」
「仕事で出張ですから、当然です」
「二人の単位は認められるだろう、良い視察報告を待っている。
頑張って、仕事してくれ」
「もちろん自腹ですから、本気で視察してきますよ」
出発は3月20日、一旦東京に行き羽田からの直行便だ。
今は、出発前の準備で忙しい。
「絵美里、バレンタインデーのお返しはオーストラリア土産でいいか?」
「 「もちろん、お土産がいいです」 」
3人とも異論は無さそうだ、義理チョコの連中にも了解してもらった。
3月10日、終業式があり1年生が終わる。
春休みは、学生たちがインターンシップや就活で忙しいので長めになっていた。
カフェ専科の打ち上げが、終業式の後に行われる。
今回はカフェレストランでアフタヌーンティーが開催されたが、俺と武内女史は主役扱いだった。
結婚式のようにひな壇に座らされて、司会者の女子から質問の嵐を受ける。
「どうして二人で視察に行くんですか?」
「私が企画を持ち込んで、通訳に立候補しました」
「香山さん、武内さん以外に通訳が出来ればそちらを選ぶ事も有りましたか?」
「TOEICのスコアが良い方にします」
「武内さん、何点ですか?」
「850点は取りました」
会場からため息が漏れる、さすがに誰も太刀打ち出来ない。
「旅行中、ホテルは別の部屋だそうですが相手が訪ねてきたらドアを開けますか?
香山さん、どうです?」
「開けません」
「ホントかよ」「いやいや」「なわけないだろ」とヤジが飛ぶ。
「どうしてですか?」
「プライベートで、アポ無しは非常識です」
「では武内さんにも同じ質問です?」
「私も香山さんと同じ答えです」
「では旅行中何も起こらないんですね?」
「起きないでしょう、私と香山さんは仕事の関係です。
みんなが考えるより、お互いにプロフェッショナルですよ」
俺が言いたい事を彼女が代弁してくれた。
社会人組は理解しているようだが、高校生組は疑心暗鬼のようだ。
なんとかインタビューを切り抜けたが、顔から火が出そうだった。
過去に一度も経験した事が無いハプニングだ。
「どうせなら、一夜くらい何かがあるかもしれない、って言えば面白いのに」
絵美里は不満顔で言う。
「絶対無いって思わせて、あった方が面白いだろ」
「「あるんですか」」
3人が声を揃える。
「あるかもしれないし、ないかもしれない」
「もう、香山さんったら。花蓮に言いつけますよ」
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