博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十二章 2年生 3学期

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「どうです? やっと店らしくなったでしょう」

武内女史に案内されて、俺と貴大、絵美里は姪浜の店舗前にいた。
シャッターカバーには、縦画を太く横画を細くしたモダンなフォントで店名が描かれている。
最上部には、FUKUOKAと小さめのローマ字で書かれており、中央に珈琲 加藤 ベーカリー 姪浜店とデカデカと描かれていた。
最下部にsince 1982と小さく添えられている。

「凜花さんが選んでくれたロゴがカッコ良すぎます」

「なかなか良いな。今週中に厨房機器が搬入されるから機器に慣れる為、試作に取り掛かろう」

「試作ですか?」
二人が俺を見る。

「卒業式の後、入社メンバーの両親たちを連れてこの店を見学してもらう。
その時にランチを振る舞いたい」

「みんなの両親を招待するんですか」

「俺たちは、学費を払ってくれた両親に感謝を込めて目の前でラテアートを仕上げる。
貴大はパンを用意して、製菓の連中はイチゴのタルトでも作ってもらおう」

「感謝の気持ちを形にするんですね」

「一度に30人分を作る機会は早々ないだろう。
この店がオープンする時の練習台も兼ねているから頑張れ」
何をメニューにするかは二人に任せて、俺たちは次の会合に向かった。

「この新店舗設計図に対して、ご意見を頂きたいです」
移転先の図面を見せて、マスターの意見を聞く。

「焙煎機は、大型を選ばない方がいい。
小型の焙煎機にして、必要に応じて台数を増やす。
だから将来のスペース確保と、床の補強を頼む」
さらっと重要な提言を貰った。
俺は大は小を兼ねると考えていたが、違うようだ。
喫茶スペースは現在の店を踏襲しているので、大きな変更点は無い。
すぐに工事会社に指示を出して、工事開始を急ぐ。

武内女史は入社メンバーの両親に対して、招待状を発送していた。
一応みんなには口頭で説明しているが、会社としての礼儀だ。
卒業式当日は製菓学校式典の後、貸し切りバスで姪浜店まで移動してランチ。
その後、純喫茶加藤の移転先と博多区奈良屋町付近の新店予定地を巡る予定だ。

「香山さん、ミートパイの焼きたてを食べてもらいます」
卒業式の後、貴大はタクシーで店まで行きミートパイを焼くと言い出した。
家族が貸し切りバスで到着する頃には焼き上がるだろう。
前日の仕込みは大変だろうが、健太や涼介もタルトレット生地を前日に用意する。
気の合った3人なら問題はない。

「よし、それで行こう」
俺と武内女史がGoサインを出すと、翌日から試作を開始した。
パンもバゲット、食パンを試作して、純喫茶加藤に持ち込んでいる。
マスターに試食してもらい、OKが出たものからモーニングで使う。

「毅君、このパンは美味しいね」
トーストを口にしたヨーコさんが俺に声をかけた。

「分かりますか?」

「麦の香りがするし、噛み応えがあるもの」

「実は紹介されたテナントで作ってます」

「やっと、お店が出来たの?」

「オープンは3月中旬予定で、今は商品の試作中です」

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