博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十三章 卒業

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3月に入り、1月初めから調査と買収交渉に時間がかかっていた博多区奈良屋町の隣接地を取得する取引がやっとまとまった。
交渉の全てを資産管理会社と不動産会社に任せていたので、俺は最終調印式だけに参加していた。

「これで店舗の設計に入れます。
香山さんの希望は承っているので、すぐに地盤調査を始めます」
建設会社の担当者の声が弾んでいる。

「今回は、ずいぶんとお世話になりました」
俺は、わざわざ東京から調印式に来てくれた資産管理会社の佐藤氏にお礼を言った。

「いえいえ、交渉は楽しい仕事でした。
当初の試算より随分と費用を抑えることが出来たので満足な結果です」

「ありがとうございます。やっとスタートラインに立てました」

「あとは香山さんの出番です、会社の運営を頑張ってください」
エールを送られて、ますますやる気になった。

3月7日、福岡市内大手ホテルでエイジア製菓学校の卒業式が開催されます。
俺はスーツ姿で母と一緒に会場に入っていく。
受付を済ませて会場に入ると学生は学科ごとに席が用意され、保護者は後ろに席が設けられていた。

「香山さん、今日も素敵ですね」
俺が学科の席まで歩いて行くと、花蓮に声をかけられた。
普段はほとんど化粧気がない彼女が、今日はしっかりメイクをして大人の顔だ。

「花蓮もメイクをすると可愛いな」

「元から可愛いんです、せっかくピアスをしてきたのに」

「ああ、よく似合ってる」
ブルーオパールのピアスが彼女の耳を飾っていた。
会場に入って来た担任の指示によって、みんなが席に着く。

「これより、エイジア製菓学校第15期生の卒業証書授与式を行います」
司会者が卒業式の開会を宣言した。
ここから式次第に沿って、粛々と式が進んでいく。
学生一人一人に卒業証書が渡された後、優秀学生の表彰が始まった。

「製菓学科銀賞、山田涼介」
たぶん1年次の学校祭が評価されたんだろう、普段からコツコツやる奴だから正当な評価だ。

「製パン学科学長賞、江口花蓮」
2年間、奨学生を守り抜いた成績と実習態度は、誰も文句が言えないだろう。

「製パン科銅賞、加藤貴大」
絵美里から叱咤激励されて、何とか受賞まで頑張った。

「カフェ専科学長賞、田辺春樹」
伊崎櫂のような天才は賞レースには馴染まない、まあ妥当な人選だ。

「カフェ専科金賞、高橋健司」
カフェ専科の重鎮が金賞を受けたのは、俺も嬉しい。
全ての学科表彰が終わった時に、武内凜花と俺が壇上に呼ばれた。
戸惑いながら壇上に上がると、司会者が表彰を読み上げる。

「エイジア製菓学校特別賞、香山毅、武内凜花。
二人はカフェ専科だけではなく、学校全体に多大な貢献と知見をもたらしました。
ここに特別賞を贈り、表彰します」
学長から表彰状を授与される。
こういう経験が過去に一度も無かったので、背中に冷や汗をかいた。
式典が終わり、記念写真の撮影が学科ごとに行われる。
カフェ専科の撮影が終わると、母が俺のところに駆け寄った。

「毅が表彰されるなんて、聞いてなかったからびっくりしたよ」

「俺も知らなかったんだ」

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