博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

文字の大きさ
95 / 142
第十三章 卒業

しおりを挟む
「香山君、驚いたか?」
担任の春田先生が俺の所にやって来た。

「びっくりしましたよ。人生で初めて表彰されました」

「オーストラリアまで自費で視察に行き、成果を惜しみなくみんなに披露する奴は、お前くらいだ。
そのうえ在学中に起業して、事業継承を成し遂げた。
十分、表彰に値するよ」

「事業継承は先生の仲介でした」

「加藤の親父から信頼を勝ち取ったのは、君の実力だ。堂々と胸を張って良い」

「先生には、お世話になりました」

「香山君、これからが勝負だ。成功した経営者として学校に戻って来てくれ。
その時は経営学のゲストとして、講演を頼むぞ」

「期待に応えられるよう、頑張ります」
担任とのやり取りを隣で聞いていた母が涙ぐんでいた。

夕方の謝恩パーティーまでの空き時間に、ご両親たちを連れて姪浜の店まで見学ツアーに向かう。
会場のホテルに貸し切りバスを用意して、全員が乗り込んだ。

「今日は卒業式の後に参加いただき、ありがとうございます。
ここは我が社が初めて取り組んだ店で、3月15日に開店を予定しています。
今日はご両親に感謝を込めて、メンバーがおもてなし致します。
ぜひ、ランチをお楽しみください」

武内社長の挨拶の後、メンバーがテーブルに料理を運ぶ。

「今日のランチメニューはミートパイです。
これはカフェ実習で出した料理で、大好評でした。
加藤貴大君がタクシーでバスを先回りして、焼き上げてくれました」
皆さんが拍手で応えてくれる。
貴大がコック帽を脱いで、拍手に答えた。

絵美里を中心にメンバーが淹れたコーヒーが配られていく。
俺もフラットホワイトにハートを描いて、母に渡した。

「毅の淹れてくれるコーヒーが一番美味しい」
親バカだがストレートな表現に照れる。

「デザートはフルーツタルトです。
龍崎農園のあまおうを贅沢に使った作品は、山田涼介、吉田健太君が作ってくれました」
また皆さんが拍手をくれる、二人が前に出て応えた。
食後はメンバーとご両親たちとの歓談の時間になった。
次々と出る質問に答えながら、挨拶を交わしていく。

再びバスに乗って、純喫茶加藤に着いた。
定休日の店を開けて皆さんを迎え入れる。

「ここが創業43年になる純喫茶加藤です。
来月には近くに移転しますが、最後の時間に皆さんをお迎え出来て幸いでした。
我が社の相談役、加藤マスターから一言頂きます」
皆さんが静かに迎える。

「私の代で閉めるつもりの店を、彼らに引き継いでもらう事になりました。
これから引退までの時間は、私の経験を伝えていくつもりです」

現在工事中の移転先を通って、奈良屋地区の土地まで移動した。

「ここにケーキファクトリーを併設したカフェを建設します。
もう土地は買収済みで、ただいま設計に入っていて、今年10月中の完成を目指しています」

俺の話を聞いて、ご両親たちも安心したようだ。
大事な子供を預ける以上、親の気持ちも分からなくもない。
実際の店舗や工事中の現場などを、直接見せる機会を設けて正解だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...