博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十三章 卒業

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「馬子にも衣装とは、お前たちのことだな」
黒のパーティードレスに着替えてメイクを仕上げている3人娘と、会場の受付で会った。
卒業式は全員スーツだったが、謝恩パーティーは学生主催だからオシャレは自由だ。

「香山さんは、スーツのままですね」

「俺は君たちの添え物でいい」

「じゃあ一緒に入りましょう」
今日の謝恩会はカフェ専科だけで行われる。
入学時に50人いた学生は、今日卒業した42人になっていた。
午後5時から始まる謝恩会は、卒業生が経営する大名のカフェレストランで開催される。
貸し切りの店内には、オシャレなフードが並んでいた。

今日の幹事は、俺と学校祭でチームを組んだ沢村美優と松村玲亜だ。
二人が司会をして、お世話になった担任の春田先生、実技指導講師の皆さんに感謝の言葉と花束、記念品が贈られる。
式典が終わり、全員で乾杯してから歓談となった。

「ここでカフェ専科恒例の打ち上げインタビューを行います。
呼ばれたメンバーは壇上の椅子にお座りください。
今日、特別賞を受賞した香山さん、壇上にどうぞ」
司会の玲亜が俺を呼び出した。

「何で俺だけ?武内さんも受賞しただろ?」

「みんなが香山さんに聞きたいことが有るんです。
では最初の質問は、いつもオシャレな香山さんですが、今日のスーツはどこのメーカーでいくらでしたか?」

「これはオーダーメイドで、東京/渋谷のテーラーで仕立てました。
総額で30万くらいだったと思います。
社長時代に大手企業と付き合うための必要経費で、別にオシャレがしたかった訳じゃないです」
今日が最後だ、本当の事を話す。
会場からため息が漏れて、俺の周りは当然という顔だ。

「みんなが知りたいと思うんですが、お金持ちになる方法は有りますか?」

「仕事を好きになれば、勝手にお金はついてきます。
俺は20歳で会社を作って、最初の3年間は1日も休まず働きました。
誰かに強制されるでもなく、必要に迫られたわけじゃない。ただただ、楽しかったんです」

「香山さんのプライベートがほとんど知られてないんですが、お休みは何をしてますか?」

「ジムでトレーニング、ネットで評判のカフェ巡り、気が向いたら誰かを誘って昼呑みですね」
《ええ、おじさん》との声があがる。

「趣味は何ですか?」

「全くの無趣味ですね、つまらん男ですよ」

「香山さんが考える、結婚の条件は?」

「仕事中毒なので、家事と育児は任せっきりになると思います。
お金は俺が稼ぐので、奥さんはキャリアを諦めてください」
また、え~という声があがる。知ったことじゃない。

「じゃあ、最後の質問です。
香山さんの会社が成功したら、私たちも雇ってもらえますか?」

「もちろん、大歓迎です。
ただし、私はビジネスになったら人が変わると言われています。
支払う賃金に見合う働きをして頂ければ、歓迎しますよ」

淡々と答えて、壇上を降りる。
みんなが拍手をしてくれるのが嬉しかった。

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