博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十四章 始動

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「何があった?」

「分かりません、でも朝から満員だったんです」
5月4日、連休の中日に本店へ出勤すると満席だった。
櫂が慌てるほど店内はごった返している。

「毅君、姪浜店にカレーパンとババロアを追加発注しているから、取ってきてくれ」
マスターが俺に指示をする。
直ぐにクルマを出して、姪浜店に向かった。

「多分、アイドルのせいです。
SNSに本店でカレーパンとイチゴのババロアを食べて美味しかったと、UPしてますよ」
絵美里が教えてくれたが、地元のアイドルとはいえフォロワーが1万人以上いる。
昨夜にUPされているから、今朝からファンが押し寄せたんだろう。
ありがたいが、迷惑な話だ。
急いでパンを焼き上げてくれた貴大とババロアを仕上げてくれた健太に礼を言って本店へ急いだ。

「毅君、悪かったな」
マスターから礼を言われるが、これも仕事のうちだ。

「明日までは来店客が続くかもしれないので、多めに作るように指示しておきました」

「まあ、一時的なもんだろう。それでいいよ」

俺がスマホで確認すると、焼きカレーパン、いちごのババロア、スワンが描かれたラテと一緒に笑顔のアイドルが映っている。
揚げてないのでヘルシーだし、ただ辛いだけじゃない美味しさとカレーパンを激賞だ。
これを見たら、貴大も嬉しいだろう。
ババロアをスプーンに乗せて頬張るアイドルは、なかなか可愛かった。

連休明けに車に乗って、高橋健司さんの家を訪ねた。
今日は、武内社長も一緒だ。

「お久しぶりです、お家の改装が終わったんですね」

「呼び出してすまない、まずは中にどうぞ」
玄関はお店の入り口に改造されて、ガラスがはめ込まれたドアになっている。
店内に入ると、ダイニングだった部屋が客席になり、カウンターも新設されていた。
ダイニングの外がテラス席になって、遠くに海が見える。

「素晴らしい景色のお店ですね」
「ホント、何度見ても素敵」

「今日は、二人にビジネスの話をする為に来てもらった。
オープンする私の店を、珈琲加藤のグループに入れてもらえないだろうか?」

「チェーン店、フランチャイズ店、色々と選択肢はあります。
ですが、思い切りましたね」

「今後は、個人の店は生き残りが難しい。
珈琲豆の仕入れも、将来的に値上がりする一方だろう。
うちで使う豆や食材は全て加藤グループから買うし、メニューも共通化したい。
いくら払えばグループ入り出来るか、考えて欲しい」

話を聞いて、俺たちには損になることが少ない。
珈琲豆は、仕入れる量が多ければ多いほど価格交渉は有利になる。
店舗が多いほど、金融機関や取引先から、うちのグループを見る目は変わってくるはずだ。
この話は、将来的に店舗を増やすための試金石になるかもしれない。

「至急、条件面を詰めます。
相談する必要もあるので、返事を待っていただけますか?」

「もちろんだ、こっちから持ち掛けた話だから、開店を遅らせてもいい。
いい返事を待っている」

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