博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十四章 始動

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「高橋さん、福岡珈琲加藤のグループ入りを歓迎します」

武内社長と高橋さんが契約書にサインをして、グループ入りは決まった。
俺たちが加藤の事業継承をした時に利用した仲介会社を間に入れて、契約条件をまとめている。
仲介企業を入れたことでチェーン店のひな型を利用出来たので、次のケースにも使えるだろう。

「店名、どうします?」

「福岡珈琲加藤福津店にする。青鈍色に店の外壁を塗り直して統一感を出すつもりだ」
俺の話に、高橋さんは積極的だった。
すぐにデザイン工房に手配をして、外壁の塗装と店名ロゴ看板を発注する。

「2週間ほど、ご夫婦で研修を受けてもらいます」

「大いに勉強するよ」
高橋さんは本店でバリスタ修行、奥様は姪浜店で製パンの実習をしてもらう。
2週間の実習中に外装工事も完成して、6月15日にオープンが決まった。
福岡珈琲加藤のHPに福津店のオープンが告知されて、店のSNSにリンクも完了している。

「実習、楽しかったよ。
マスターとは、心が通じ合うほど話し合った」

「絶対、話が合うと思ってました」

「香山君との出会いは、私にとって幸運だったよ」

「最初は、高橋さんが俺を誘ってくれたんですよ。
幸運は俺の方です」
オープンの準備を手伝いながら、休憩時間に話すのが楽しい。
奥様も貴大たちとパン作りをする事が新鮮だったようだ。

「焼きカレーパンは、合格点をもらったのよ」
嬉しそうに話す奥様は、業務用オーブンで試作の毎日だ。
試作のパンを味見したが、店で出しても問題は無い。

オープン当日、高橋さんのご家族、武内社長と俺、他来賓を招いて式典が行われた。

「私の第二の人生を賭けた店が、ようやく開店の日を迎えました。
尽力して頂いた全ての関係者の方々に、報いる事が出来るように頑張ります」

高橋さんの挨拶で、福津店は無事にオープンした。
カフェ専科で一緒に学んだ古賀陽妃や田辺たちも駆け付けている。

「素敵なお店になったね」
陽妃は店が出来る前を知っている。

「改装のイメージは、ノースシドニーのニュートラルベイで見たカフェだ。
高橋さんから頼まれて、去年から資料を渡していた」

「その繋がりで加藤グループ入りか。
みんな、ビジネスマンだね」

「出店するなら相談に乗るよ。
優秀なスタッフは、何人いてもいい」

「遠慮しておく。凜花とは、一生ライバルでいたいんだ」
女には女の意地があるようだ。

「香山君、凄い勢いだな」
エイジア製菓学校の担任だった、春木先生もお祝いに駆けつけてくれた。

「製パンに良い子はいませんか?」

「男女は問わないのか?」

「こだわりません。ただし、情熱は必要です」

「じゃあ、任せたい子がいる。パン好きなのは間違いない」

「何か、問題児っぽいですね」

「いや、ただの美人だ」

「まさか、日野かすみですか?」

「知っているならちょうどいい」

「勘弁して下さい」
日野かすみは、製菓学校で1学年下だがアラサー女子だ。
噂では旦那が浮気して、多額の慰謝料を手にして別れている。
俺も実習室で何度か食事に誘われたが、危ない空気を察して逃げていた。

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