127 / 142
第十六章 チャレンジ
4
しおりを挟む
11月20日、ついに奈良屋店が竣工した。
これから開店日までに厨房機器の設置や保健所の検査、店内インテリアを仕上げなければならない。
もうスケジュールはぎっしりと詰まっていた。
「やっと出来ましたね、ずいぶん待ちましたよ」
製菓の責任者、山田涼介が俺と一緒に見に来た。
「待たせたな。時間かかった分、設備は良くなってるから」
「いやあ、カッコいい店です。本当に俺が責任者でいいんですか?」
「スイーツファクトリーは涼介に任せる。健太と仲良くやってくれ」
「分かりました、楽しみです」
3階の自宅に入ってみると、2LDKの作りは今の家とよく似ていた。
同じ建設会社に頼んでいるので設計思想が同じなんだろう。
俺も気に入っていたし、花蓮も褒めていた。
一緒に暮らせば気に入ると思う。
2階は当初の予定を変更して、倉庫の一部を事務所にしている。
今までは本店の2階、喫煙席のあるスペースで商談や打ち合わせをしていた。
ここには社長室も用意したので、会社の規模に見合った応対が可能になる。
「香山さん、今日はどんな子が来るんですか?」
若い子の面接に、伊崎櫂も興味津々だ。
「カフェ専科から2人、製菓から2人と製パンから1人が来る予定だ」
奈良屋町店のアルバイト募集を、エイジア製菓学校に出していた。
こっちの想定以上に希望者がいる。
本店の2階を借りて、面接をする事にした。
女子3人に男子2人と面談したが、みんな良い子たちだ。
男子の1人が製パン科だったので、姪浜店と掛け持ちでもいいか聞いたら大丈夫だという。
残りの4人をローテーションすることにして、全員合格にした。
他にアルバイト雑誌に掲載した募集から、アルバイトを3人採用してランチタイムのローテーションを組んだ。
「ゆっくりデートも出来ないね」
近所の商店街で食事を済ませて、家に帰ってきた。
引っ越し準備中の部屋に来た花蓮が文句を言う。
段ボールの箱が積み上げられたリビングで、ソファーに座り込んでいた。
「奈良屋町に行くまでの辛抱だ。
この家は、もう借り手が決まってるから引っ越しの業者がくる」
「ここが気に入ってたのにな」
「俺もここが好きだよ、でも奈良屋町に住むのは意味があるんだ」
店の場所は、戦国時代に豊臣秀吉が太閤町割りをした由緒正しい博多の商業地区だ。
そこに自分の店を持つのは、誇りに思っている。
「毅が言うなら、私はついていくけどね」
「それは、ありがたい。
君が理解してくれるなら、嬉しいよ」
花蓮を抱きしめて、キスをする。
もう返事はいらない。
「毅の手が冷たい」
「一緒にお風呂で温まる?」
「それがいい。
私、メイクも落としていい?」
「かまわないよ、君は素顔も美しい」
「もう、騙されちゃうよ」
不思議だ、花蓮と一緒にいると身構える事が無い。
駆け引きを楽しむ事もあるけど、何の意識もしないで居られる。
一緒に生活してみたい、そう思うようになっていた。
これから開店日までに厨房機器の設置や保健所の検査、店内インテリアを仕上げなければならない。
もうスケジュールはぎっしりと詰まっていた。
「やっと出来ましたね、ずいぶん待ちましたよ」
製菓の責任者、山田涼介が俺と一緒に見に来た。
「待たせたな。時間かかった分、設備は良くなってるから」
「いやあ、カッコいい店です。本当に俺が責任者でいいんですか?」
「スイーツファクトリーは涼介に任せる。健太と仲良くやってくれ」
「分かりました、楽しみです」
3階の自宅に入ってみると、2LDKの作りは今の家とよく似ていた。
同じ建設会社に頼んでいるので設計思想が同じなんだろう。
俺も気に入っていたし、花蓮も褒めていた。
一緒に暮らせば気に入ると思う。
2階は当初の予定を変更して、倉庫の一部を事務所にしている。
今までは本店の2階、喫煙席のあるスペースで商談や打ち合わせをしていた。
ここには社長室も用意したので、会社の規模に見合った応対が可能になる。
「香山さん、今日はどんな子が来るんですか?」
若い子の面接に、伊崎櫂も興味津々だ。
「カフェ専科から2人、製菓から2人と製パンから1人が来る予定だ」
奈良屋町店のアルバイト募集を、エイジア製菓学校に出していた。
こっちの想定以上に希望者がいる。
本店の2階を借りて、面接をする事にした。
女子3人に男子2人と面談したが、みんな良い子たちだ。
男子の1人が製パン科だったので、姪浜店と掛け持ちでもいいか聞いたら大丈夫だという。
残りの4人をローテーションすることにして、全員合格にした。
他にアルバイト雑誌に掲載した募集から、アルバイトを3人採用してランチタイムのローテーションを組んだ。
「ゆっくりデートも出来ないね」
近所の商店街で食事を済ませて、家に帰ってきた。
引っ越し準備中の部屋に来た花蓮が文句を言う。
段ボールの箱が積み上げられたリビングで、ソファーに座り込んでいた。
「奈良屋町に行くまでの辛抱だ。
この家は、もう借り手が決まってるから引っ越しの業者がくる」
「ここが気に入ってたのにな」
「俺もここが好きだよ、でも奈良屋町に住むのは意味があるんだ」
店の場所は、戦国時代に豊臣秀吉が太閤町割りをした由緒正しい博多の商業地区だ。
そこに自分の店を持つのは、誇りに思っている。
「毅が言うなら、私はついていくけどね」
「それは、ありがたい。
君が理解してくれるなら、嬉しいよ」
花蓮を抱きしめて、キスをする。
もう返事はいらない。
「毅の手が冷たい」
「一緒にお風呂で温まる?」
「それがいい。
私、メイクも落としていい?」
「かまわないよ、君は素顔も美しい」
「もう、騙されちゃうよ」
不思議だ、花蓮と一緒にいると身構える事が無い。
駆け引きを楽しむ事もあるけど、何の意識もしないで居られる。
一緒に生活してみたい、そう思うようになっていた。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる