博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

文字の大きさ
136 / 142
第十七章 飛躍

しおりを挟む
「これ、私が企画して店で販売したの」

バレンタイン前日の夜に、花蓮が訪ねて来た。
明日から一緒にソウルに行くので、うちに前泊する事になっている。

「おう、美味そうだ」
ボックスを開けると、ショコラデニッシュとパン・デピスが入っていた。

「たくさんじゃないけど、完売したよ」

「それはすごい。でも、明日は休んで大丈夫なの?」

「バレンタイン当日は、お店定番のチョコパンが色々と並ぶから大丈夫」
エスプレッソマシンでラテを淹れて、夕食代わりに二人で一緒に食べる。
花蓮が作っただけに、丁寧な仕上がりで上品な味だ。
地元の有名店で販売するからには、店長のチェックも厳しいだろう。
企画して販売までこぎつけたのは、彼女の実力だ。

「美味いよ、頑張ったな」

「私が欲しくなった?」

「ああ、しがらみが無ければ引き抜きしたいよ」
エイジア製菓学校や彼女の両親のことを考えると、無茶な真似は出来ない。
この夜は愛し合ったら、明日に備えてさっさと眠った。

翌日は早朝からタクシーで福岡空港に向かう。
福岡からソウルまでは飛行機で1時間半、東京に行くより全然近い。

「想像以上に近いな」

「でも、博多よりずいぶん寒いね」
空港からソウル市内のホテルまではタクシーで向かう。
今回も台湾の時に利用した日系ホテルを予約していた。
高層階のメインロビーまで上がると、明洞の街を見下ろす景色が素晴らしい。
まだチェックイン時間前だったが部屋を用意してくれた。
荷物を部屋に入れてから、ランチを食べに明洞の街に出ていく。

「寒いからソルロンタンに行きましょう」
台湾の時もそうだが、花蓮は食べ物にこだわる。
事前に調べているのでついて行くと、路地裏の奥にある店に入って行く。
ランチタイムを過ぎていたが、店内はほぼ満席だ。
空いた席に座ると、彼女が俺の分まで注文してくれる。
俺は食べ物の好き嫌いが全く無いので、何がきても問題はない。

「思ったより、薄味だな」
牛骨スープの味を確かめると、塩分が足りない。

「自分で味を調えるの」
テーブルに塩と胡椒が置いてあるのはその為だった。
スープカレーのように、ご飯を漬けて食べる。
食べ進むほどに体が温まって、額にうっすら汗をかくほどだ。
キムチで味変しながら、最後まで飽きずに食べきった。

「温まったな」

「寒いから温まる料理が美味しいの。
少し歩いてから、次はカフェに行こうね」

花蓮が俺と腕を組んで、歩いて行く。
明洞のファッションストリートを見て回った後、彼女がお目当てのカフェに入った。

「落ち着いた雰囲気だな」

「明洞では、静かなお店って評判だった」

確かに街の喧騒とは一線を画している。
日本語が話せるスタッフに対応してもらって、ケーキセットとシュガーレスのラテを注文した。

「エイジア製菓学校にも、韓国からの留学生がいたね」

「みんな熱心だった。よく練習してたよ」

この店のコーヒーもケーキもレベルが高い。
どこの国でも生き残る為に、一生懸命なんだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...