博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十七章 飛躍

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2月の終わり、武内社長が交渉を続けてきた食肉加工工場が当社の提案を引き受けた。
毎月100万円の仕入れ額を3年間契約は、個人経営の工場には魅力的だった様子。
ソーセージ、ハム、ベーコンなど、当社が使う加工品を一括して仕入れする。

「月に100万は、大きな金額になりますね」
俺は社長に聞いた。

「モーニングに出すベーコンエッグやソーセージパンなどのメニューを強化するつもり。
リブサンド用のポークパティも作るから、大丈夫だよ」

「こっちの注文に合わせてくれるなら、個性化は図れますね」

「それも狙いの一つ、大手との違いを出さないと。
それと博多駅前の店舗が成功すれば、天神地区に4棟ある日野トラストのビルに出店出来るかも知れないよ」

「そんな話が来てるんですか?」

「日野社長から、遠回しに言われたわ」
福岡の中心、天神地区は規制緩和でビルの建て替えラッシュだ。
当然、企業オフィスの誘致競争は激しい。
優良なテナントは、競争に勝つ為に必要不可欠な存在になる。
まずは、博多駅前の店を成功させて実績を積む事が大事になった。

3月に入り、日野トラスト博多駅前ビルの店舗内装工事が始まった。
初めからカフェが入居する設計になっているので、工事は順調に進んでいる。

日野かすみと絵美里は、奈良屋町店でモーニングからランチタイムを仕切っていた。
武内社長も応援に入って、博多駅前店の営業シミュレーションが続いている。
これからアルバイトも募集して、ここでトレーニングも始める予定になっていた。

「オープンに間に合うのかな?」
日野かすみが心配そうな顔をしている。

「無理でも、間に合わせるんですよ。仕事に計画通りなんてありません」

「香山さんって、結構スパルタなんですね」

「ビジネスの現場を知っていたら、甘いことを言ってられません。
常に最悪を想定しておくべきです」

「凜花が香山さんと組んだ理由が判ったわ。
彼女の暴走を止めるには、最適な相棒ね」

「なに? 私の悪口?」
俺たちの会話に武内社長が入ってきた。

「いや、凜花が香山さんを選んだのは間違いない選択だったと褒めていたの」

「女としては、見られてないけどね」

「そうなの?」

「香山さんには決まった人がいるのよ」

「ホントに? 結婚するんですか?」
かすみの興味がこっちに向いた。

「ええ、今年中には結婚します」
武内社長も知っている話だ、公表してもいいだろう。

「もう決まったんですか?」

「俺たちの間では決まってます。あとは手続きの問題だけですね」
ウエディングプランナーとの相談で仲人は高橋ご夫婦、結婚式は秋ごろが最適だと聞いている。
今週末にはプロポーズを決行する予定だ。

人生の勝負の時がやって来た。


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