君の瞳に囚われて

ビスケット

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聖域

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ロイドが死んで、葬儀が終わると、ゼビウスはすぐに動き出した。
侯爵家当主として請け負ったあの誓いを、なんとしても守らねばならないと思ったからだ。
ロイドの最後の願いは、メアリーとカインの安全だった。
少し前まで 健康そのものの青年貴族であったロイドの死に様は異常で、再生魔法がかからないなど初めてのことだった。原因をどれだけ調べても理由が分からず、ついに残された可能性は呪いだった。

それは、そういった魔法が存在するのではないかと、うわさの域を出ない代物だった。

呪い。あらゆる魔法防御をすり抜け、体の中に入り込み、生き物の魂そのものを壊していく恐ろしい魔法と言い伝えられてきた。一度呪われたら、外からいくら治癒魔法をかけても届かず、ただ死んでゆくのを見ているしかないのだという。

高等治癒魔法を受けることのできない人々が、避けられない死を受け入れるために生んだ口伝だと思っていた。
しかし、ロイドに再生魔法が効かなかったあのとき、ゼビウスは直感したのだった。
これは呪いであると。

それからゼビウスは、着々とメアリーとカインを迎える準備を進めた。
まず、彼らを侯爵家別邸に住まわせることに決めた。
ロイドが おそらくではあるが、呪いと呼ばれる未知の魔法で死んだ事を踏まえ、万が一にも二人が呪いを受けることがないようにしたのだった。

辺鄙な場所に建てられた、優雅な隠れ家といった趣のその屋敷は、侯爵家にとって特別な場所だった。
侯爵領の奥深く、代々受け継がれてきたその別邸のことを、侯爵家の人間は聖域と呼んだ。

そこは王国の地図に載っておらず、完全に秘匿された場所だった。
広大な敷地には最高レベルの認識阻害と結界魔法が常時展開しており、外から侵入することはほぼ不可能な、侯爵家の血を守るための強固な要塞だったのだ。
出入りするには、屋敷内部の地下室にある転移の魔法陣を通るしかなく、自分が侯爵当主でいる限り、この世で1番安全な場所と思われた。

そのためには メアリーを自身の第二夫人に、カインと養子縁組をして息子に据え、侯爵家の懐に入れるよりほかなかったのだった。

たとえ、尊き王女を王家から賜り、二人目の息子を授かったその時に 妾を迎えた恥ずべき男と そしりを受けようとも。
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