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救助
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「フタサンヨンハチ。制圧完了しました。・・・了解。では撤収します。身柄は指定場所に運搬し、後ほど合流します。」
そんな、極めてフラットな声を耳にして、辺りを見回すと、部屋の様子が一変していた。
ゴーグルを首に下げて迷彩服を着ている屈強そうな男達が無言で立ち働いていて、そのリーダーらしき一人が、胸元の無線機に向かって淡々と報告をしていた。
迷彩男たちは拘束済の佐竹を床に転がしていたが、リーダーが無線を切ると、全員整列しこちらに向かって敬礼をした。
そして、佐竹を担ぐと一瞬で扉の向こうに消えていった。
彼等が 最後に京極の手に握られたゴーグルを回収していくのがやけに印象に残った。
部屋には京極だけが残され、ひたすら優しく語りかけてきた。
「守、来るのが遅くなってすいません。もう大丈夫ですから。」
あいつらなんなの?
何でお前がここに?
佐竹はどこつれてった?
聞くことはいくらでもあるはずなのに、俺はそれどころではなかった。
とにかく体がおかしくて。
目の前の京極しか見えなかった。
仰向けの俺にシーツをかぶせたらしい京極が、ベッドに膝をついてのぞき込んでいた。
やがて、熱を持った方の頬に手を伸ばしてきた。
駄目だ、それじゃ遠すぎる。
俺は震える腕を伸ばして奴の服を掴んだ。
すると京極は、シャツのボタンの上2つを外しながら、ベッドに乗り上げてきた。
そうして俺に体重を掛けないように覆い被さってきて低く言った。
「どうぞ。」
途端に俺は京極の首筋に鼻を埋めた。
思い切り匂いを吸い込むと、安堵のため息が漏れた。
「はぁ・・・」
さっきまで佐竹の指を受け入れていたそこが途端に潤うのが分かった。
京極の大きな手がなだめるように頭を撫でる。
「守、自分がヒートを起こしているのは分かりますか?」
必死で頭を縦に振った。嫌って程分かってる。
「特別室にお連れするまで、私もラットを抑える自信がない。一番近くにあるのは私の家なんですが、そこに移動していいですか?」
「・・・っ」
京極に穏やかにそう告げれたが、俺は もはやそんなのどうでも良くて、ひたすら頭を縦に振る。
すると、京極はふと体を離して両手で俺の頬を挟み、至近距離で見つめながらこう言った。
「Ωが一人で暮らすのに 危険が伴うことは分かってもらえましたか?」
「・・・」
現状を見れば反論の余地はなかった。
「ではこれから守は私と暮らす。・・・いいですね?」
チャッピーとは似ても似つかない、得体の知れない瞳がそこにあった。
魔物に魅入られて契約を迫られているような錯覚を覚えた。が、ヒートに陥っている俺には選択肢などなく。
「分かった。分かったから・・・早く俺を・・・っ」
それに続く言葉が、連れて行ってくれだったのか、抱いてくれだったのかは俺にも分からなかった。
「仰せのままに」
シーツごと包まれるように横抱きにされて、部屋から出て車に乗せられた。車の中では、横抱きのまま奴の膝に乗せられていた。
俺はひたすら首筋に頭を埋めて香りを嗅いで耐えていた。無意識に奴の耳や首筋を舐めたり囓ったりしていたかもしれない。いつの間にか奴の首元がびしょびしょになっていたから。
奴はただ俺を抱いているだけだった。
そんな、極めてフラットな声を耳にして、辺りを見回すと、部屋の様子が一変していた。
ゴーグルを首に下げて迷彩服を着ている屈強そうな男達が無言で立ち働いていて、そのリーダーらしき一人が、胸元の無線機に向かって淡々と報告をしていた。
迷彩男たちは拘束済の佐竹を床に転がしていたが、リーダーが無線を切ると、全員整列しこちらに向かって敬礼をした。
そして、佐竹を担ぐと一瞬で扉の向こうに消えていった。
彼等が 最後に京極の手に握られたゴーグルを回収していくのがやけに印象に残った。
部屋には京極だけが残され、ひたすら優しく語りかけてきた。
「守、来るのが遅くなってすいません。もう大丈夫ですから。」
あいつらなんなの?
何でお前がここに?
佐竹はどこつれてった?
聞くことはいくらでもあるはずなのに、俺はそれどころではなかった。
とにかく体がおかしくて。
目の前の京極しか見えなかった。
仰向けの俺にシーツをかぶせたらしい京極が、ベッドに膝をついてのぞき込んでいた。
やがて、熱を持った方の頬に手を伸ばしてきた。
駄目だ、それじゃ遠すぎる。
俺は震える腕を伸ばして奴の服を掴んだ。
すると京極は、シャツのボタンの上2つを外しながら、ベッドに乗り上げてきた。
そうして俺に体重を掛けないように覆い被さってきて低く言った。
「どうぞ。」
途端に俺は京極の首筋に鼻を埋めた。
思い切り匂いを吸い込むと、安堵のため息が漏れた。
「はぁ・・・」
さっきまで佐竹の指を受け入れていたそこが途端に潤うのが分かった。
京極の大きな手がなだめるように頭を撫でる。
「守、自分がヒートを起こしているのは分かりますか?」
必死で頭を縦に振った。嫌って程分かってる。
「特別室にお連れするまで、私もラットを抑える自信がない。一番近くにあるのは私の家なんですが、そこに移動していいですか?」
「・・・っ」
京極に穏やかにそう告げれたが、俺は もはやそんなのどうでも良くて、ひたすら頭を縦に振る。
すると、京極はふと体を離して両手で俺の頬を挟み、至近距離で見つめながらこう言った。
「Ωが一人で暮らすのに 危険が伴うことは分かってもらえましたか?」
「・・・」
現状を見れば反論の余地はなかった。
「ではこれから守は私と暮らす。・・・いいですね?」
チャッピーとは似ても似つかない、得体の知れない瞳がそこにあった。
魔物に魅入られて契約を迫られているような錯覚を覚えた。が、ヒートに陥っている俺には選択肢などなく。
「分かった。分かったから・・・早く俺を・・・っ」
それに続く言葉が、連れて行ってくれだったのか、抱いてくれだったのかは俺にも分からなかった。
「仰せのままに」
シーツごと包まれるように横抱きにされて、部屋から出て車に乗せられた。車の中では、横抱きのまま奴の膝に乗せられていた。
俺はひたすら首筋に頭を埋めて香りを嗅いで耐えていた。無意識に奴の耳や首筋を舐めたり囓ったりしていたかもしれない。いつの間にか奴の首元がびしょびしょになっていたから。
奴はただ俺を抱いているだけだった。
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