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京極正臣の密やかな楽しみ
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車は地下駐車場に入っていった。
それは思いがけず手にした、本能が理性を侵食するまでの僅かな時間だった。
私は今日 α抑制剤を服用していた。
間もなく効果が切れて本格的にラットが始まるまでのこのひととき。
私は 愛する番の痴態を密やかに楽しんでいた。
車の中では私のフェロモンを舐め取ろうとするかのように私の首筋に吸い付いていたこの人。
私を求めて必死に動かす この人の柔らかな舌の感触がたまらなかった。
今は 目を固くつぶって震えながら 私の胸に顔を押し当てている。胸に伝わる この人の唇の戦慄きが 私に甘いうずきをもたらす。
声が出ないように そんなことをしている この人のなんと可憐なことか。
やがて、寝室に入ると私の番に告げた。
「守、もう着きましたよ、よく頑張りましたね。」
腕に抱く可愛い人はもう理性を保てていなかった。
どこもかしこも震わせながら涙を滲ませて私に懇願する。
「あ・・・京極・・・はやく、はやく・・・」
そっとベッドに横たえ、自分も服を脱いで傍らによりそいながら、この人の潤んだ瞳を見つめながら言った。
「先程みたいに 正臣と、呼んでくれないんですか?」
「まさおみ、はやく。」
この人は、欲情すると、少し舌足らずな調子になる。私だけが知っている姿だ。
「ほら、ここに。守の欲しいものがありますよ?」
「まさおみ、俺は」
「守の大好きな、美味しいものです。食べたくないですか?」
「まさおみ・・・何で・・・」
涙をぽろぽろこぼして、頑是ない子供のように私にすがりつく。なんと甘美な時間だろう。
この人の通りの良い髪を漉きながら、その耳に囁いた。
「大丈夫、恥ずかしいなら目を塞いでいればいい。さあ、目を閉じて、守」
涙に濡れた睫毛を震わせて瞼を閉じると、この人の薄い唇が小さく呟いた。
「閉じた・・・」
「そう、じゃあ舌を出して。舐めて?守の舌は可愛いな・・・。そう、上手に咥えたね。・・・ふふ、美味しい?」
恐る恐るな動作は拙いながらも ひたむきだ。
愛おしさが止めどなく溢れ出てくる。
こんな感情が私にもあったことなど、私をよく知る者ほど信じまい。
高まる波に逆らわず、暖かい口内に精を放った。・・・コクッ。コクリ。コクリ。
Ωである守は、何も教えられていなくても、αの長い射精により放たれる物を嚥下し続ける。
「・・・美味しかった?」
「おいしい・・・もっと」
「じゃあお尻をこちらに向けて。」
そう言うと、素直に従って私に秘所をさらす。
そこには赤く充血してふっくらとしたΩの性器があった。
わずかに開閉しながら 私を待ち望む可愛い蕾を しばし眺め 愛でる。・・・散らしてしまうのが惜しいくらいだ。
避妊薬を奥に入れ、しばしの時間待つ。
蜜を指に纏わせて 蕾に浅く 出し入れし、縁に舌を這わせたりして楽しんでいると、
「まさおみ、はやく、まさおみ・・・」
と、焦れたこの人の涙声が聞こえてきた。
もう限界だったのか、ついに腕を回して自らの指を突き入れ、必死にそれを動かしはじめた。この人の指によって奏でられる水音が耳に心地よい。
「くぅっ・・・こんな・・・いや・・・だ・・・、まさおみが、して、くれない、から・・・っ、まさおみのせ・・・い・・・あっ!・・・ンンっ、届かない」
パタパタと涙をこぼしながらこちらを振り返るこの人の顔は、酷い熱に浮かされている人のようで。
その瞳は痛々しく濡れていた。
やがて 震えるその口から待ち望んだ言葉が零れる。
「もう ・・・ぃれてく・・・」
私は守の手を取ると、脚の上に向かい合わせに座らせた。
目の前には、ハアハアと上下する胸にあるピンと固く凝った守の乳頭。
それを親指で柔らかく押しつぶした後、人差し指で挟んで優しく扱いてやった。
すると、可愛いこの人は 声にならない嬌声を上げて、しなやかな背を仰け反らせて達してしまった。
ラットがもう すぐそこに来ている。
腕をだらりと下げ、私にもたれかかって脱力するこの人を抱きしめる。
私は 愛しい番に深く口づけると、長い狂乱の始まりを告げたのだった。
それを熟れた果実のようだとあの男は言っていた。
甘く熟れて、蜜を滴り落とす そこは確かにあの男のいったとおりに映るかもしれない。
だが、これは私のために熟れて、私の手にだけ落ちてくる貴重な果実なのだ。
この人の甘露を味わうのは私だけ。
一時それを手にした夢を見させてやったのだ。
後は とっとと地獄に落ちるがいい ──。
それは思いがけず手にした、本能が理性を侵食するまでの僅かな時間だった。
私は今日 α抑制剤を服用していた。
間もなく効果が切れて本格的にラットが始まるまでのこのひととき。
私は 愛する番の痴態を密やかに楽しんでいた。
車の中では私のフェロモンを舐め取ろうとするかのように私の首筋に吸い付いていたこの人。
私を求めて必死に動かす この人の柔らかな舌の感触がたまらなかった。
今は 目を固くつぶって震えながら 私の胸に顔を押し当てている。胸に伝わる この人の唇の戦慄きが 私に甘いうずきをもたらす。
声が出ないように そんなことをしている この人のなんと可憐なことか。
やがて、寝室に入ると私の番に告げた。
「守、もう着きましたよ、よく頑張りましたね。」
腕に抱く可愛い人はもう理性を保てていなかった。
どこもかしこも震わせながら涙を滲ませて私に懇願する。
「あ・・・京極・・・はやく、はやく・・・」
そっとベッドに横たえ、自分も服を脱いで傍らによりそいながら、この人の潤んだ瞳を見つめながら言った。
「先程みたいに 正臣と、呼んでくれないんですか?」
「まさおみ、はやく。」
この人は、欲情すると、少し舌足らずな調子になる。私だけが知っている姿だ。
「ほら、ここに。守の欲しいものがありますよ?」
「まさおみ、俺は」
「守の大好きな、美味しいものです。食べたくないですか?」
「まさおみ・・・何で・・・」
涙をぽろぽろこぼして、頑是ない子供のように私にすがりつく。なんと甘美な時間だろう。
この人の通りの良い髪を漉きながら、その耳に囁いた。
「大丈夫、恥ずかしいなら目を塞いでいればいい。さあ、目を閉じて、守」
涙に濡れた睫毛を震わせて瞼を閉じると、この人の薄い唇が小さく呟いた。
「閉じた・・・」
「そう、じゃあ舌を出して。舐めて?守の舌は可愛いな・・・。そう、上手に咥えたね。・・・ふふ、美味しい?」
恐る恐るな動作は拙いながらも ひたむきだ。
愛おしさが止めどなく溢れ出てくる。
こんな感情が私にもあったことなど、私をよく知る者ほど信じまい。
高まる波に逆らわず、暖かい口内に精を放った。・・・コクッ。コクリ。コクリ。
Ωである守は、何も教えられていなくても、αの長い射精により放たれる物を嚥下し続ける。
「・・・美味しかった?」
「おいしい・・・もっと」
「じゃあお尻をこちらに向けて。」
そう言うと、素直に従って私に秘所をさらす。
そこには赤く充血してふっくらとしたΩの性器があった。
わずかに開閉しながら 私を待ち望む可愛い蕾を しばし眺め 愛でる。・・・散らしてしまうのが惜しいくらいだ。
避妊薬を奥に入れ、しばしの時間待つ。
蜜を指に纏わせて 蕾に浅く 出し入れし、縁に舌を這わせたりして楽しんでいると、
「まさおみ、はやく、まさおみ・・・」
と、焦れたこの人の涙声が聞こえてきた。
もう限界だったのか、ついに腕を回して自らの指を突き入れ、必死にそれを動かしはじめた。この人の指によって奏でられる水音が耳に心地よい。
「くぅっ・・・こんな・・・いや・・・だ・・・、まさおみが、して、くれない、から・・・っ、まさおみのせ・・・い・・・あっ!・・・ンンっ、届かない」
パタパタと涙をこぼしながらこちらを振り返るこの人の顔は、酷い熱に浮かされている人のようで。
その瞳は痛々しく濡れていた。
やがて 震えるその口から待ち望んだ言葉が零れる。
「もう ・・・ぃれてく・・・」
私は守の手を取ると、脚の上に向かい合わせに座らせた。
目の前には、ハアハアと上下する胸にあるピンと固く凝った守の乳頭。
それを親指で柔らかく押しつぶした後、人差し指で挟んで優しく扱いてやった。
すると、可愛いこの人は 声にならない嬌声を上げて、しなやかな背を仰け反らせて達してしまった。
ラットがもう すぐそこに来ている。
腕をだらりと下げ、私にもたれかかって脱力するこの人を抱きしめる。
私は 愛しい番に深く口づけると、長い狂乱の始まりを告げたのだった。
それを熟れた果実のようだとあの男は言っていた。
甘く熟れて、蜜を滴り落とす そこは確かにあの男のいったとおりに映るかもしれない。
だが、これは私のために熟れて、私の手にだけ落ちてくる貴重な果実なのだ。
この人の甘露を味わうのは私だけ。
一時それを手にした夢を見させてやったのだ。
後は とっとと地獄に落ちるがいい ──。
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