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本編
5.未知の感覚
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「大丈夫、酷い事はしないよ。生涯かけてシシーだけを愛すると誓うから、私に身を委ねて欲しい」
「私……私は……」
「すぐには心は変えられないと思う。だから、努力をするよ。これからは距離を置いて待つなんて事はしない。昼も夜もずっとシシーに愛を捧ぐよ」
王太子殿下の唇が、私の耳に近づけ囁くように、そう言った。色を含む声で、愛を囁かれても戸惑う心の方が大きい。
今まで言葉や行動が足りなかったと思うのなら、こんな事をする意味が分からない。
「えっと……フィリップ様?」
私は次は間違えないように名を呼んだ。
王太子殿下と呼んではいけない。ちゃんと覚えないと……。
「どうしたの、シシー?」
「今までの私たちに色々足りなかったのは分かりました。けれど、何故このような事をなさるのですか? ジュリオは色々な女性とこういう事をしていました。とても軽薄な行為なのに……私たちにも必要なのですか?」
私だとて分かっている。
これは世継ぎを生む為に必要な行為で義務だ……。けれど、私にも心の準備をする時間が欲しい。
今日は色々とあり過ぎた。
卒業式のパーティーで、婚約破棄をしてと泣き喚いて、ジュリオにキッパリと振られ、今王太子殿下に押し倒されている。
色々あり過ぎて疲れたかもしれない……。
今日は何も考えずに眠りたい……。
「軽薄な行為ではない。ジュリオがしている事とは違うんだよ」
「同じ……だと思います……」
「私は想いを示すのに……想いを通わせるのに、最適な行為だと思っている。少し急いているのは、君の気持ちを早く欲しいから、なのかもしれない。君の涙を見た時、もう待ちたくないと思った。私は、これでも充分待ったんだよ」
王太子殿下の目がとても悲しそうで、私はもう何も言えなくなってしまった……。
これは罰……なのかもしれない。婚約者でありながら、王太子殿下を裏切り……ジュリオを愛してしまった私への罰。
でも、過去を否定したくない。
もし過去に……ジュリオではなく、最初から王太子殿下が幼馴染みとして側にいて下されば、好きになっていたのは王太子殿下だったのかもしれない……。
だけれど、それは言いたくない。
だって、もうどうする事も出来ない事だし……。それに、ジュリオと過ごした全ての時間を否定したい訳でもない。
私はギュッと目を瞑った。
これ以上、駄々を捏ねる訳にはいかない。
私はただでさえ許されない事をした。それを許して下さったのに、それでも尚、王太子殿下を拒めば……これ以上は家にも迷惑がかかってしまうかもしれない。
それは私も本意ではない。
ジュリオも言った。大人しく嫁げと……。それが最適なのだという事は愚かな私でも分かる。
私の一世一代の願いはワガママでしかなかった。
だから、私はもう己の気持ちに折り合いをつけて、ちゃんと王太子妃としての責務を全うしなければならない。
これもその責務の一つだ。
私に抵抗する気がなくなったと分かったのか、王太子殿下は「優しくするから」と言って、私の耳に口付けた。
ピクンと体が跳ねる。
「ひゃっ……な、何?」
「もしかして耳好き?」
「っそ、そんな事分かりません……」
「そうだね、では少しずつ確かめていこうか……」
王太子殿下は、そう言いながら私の耳朶に舌を這わせ、甘噛みをした。その瞬間、耳だけじゃなく甘い痺れのようなものが私の全身を侵食していく気がした。
「やぁっ……っ、ふぅ……待って、くださっ」
ぴちゃ、と耳に響く水音と甘い痺れに、私の体は震え、力が入らない気がする。
こんなの知らない……。
未知の感覚が私を襲う。その感覚が怖い気がする……。
「やぁっ……怖いっ、怖いです」
「大丈夫だから、力を抜いて私に身を委ねて、シシー」
王太子殿下の声すらも私の全身を震わせる。
これは何? この感覚は何?
私の体なのに、私じゃないみたい……。
王太子殿下は、私の耳を食みながら、空いた手で私の体を弄り、器用にドレスを乱していった。
「んんぅ……あっ」
自分の口から出ているとは思えない甘ったるい声が漏れる。それが恥ずかしくて、手で口を塞ぐように覆うと咎めるように耳朶を甘噛みされ、体が跳ねた。
「駄目だよ、シシー。声、聞かせて?」
「は、恥ずかしいから、無理ですっ、っぁ」
「そっか……じゃあ、我慢なんて出来なくしてしまえば良いのかな?」
王太子殿下が髪をかき上げ笑ったから……その情欲を含む笑みに不覚にも私はドキッとしてしまった。
「私……私は……」
「すぐには心は変えられないと思う。だから、努力をするよ。これからは距離を置いて待つなんて事はしない。昼も夜もずっとシシーに愛を捧ぐよ」
王太子殿下の唇が、私の耳に近づけ囁くように、そう言った。色を含む声で、愛を囁かれても戸惑う心の方が大きい。
今まで言葉や行動が足りなかったと思うのなら、こんな事をする意味が分からない。
「えっと……フィリップ様?」
私は次は間違えないように名を呼んだ。
王太子殿下と呼んではいけない。ちゃんと覚えないと……。
「どうしたの、シシー?」
「今までの私たちに色々足りなかったのは分かりました。けれど、何故このような事をなさるのですか? ジュリオは色々な女性とこういう事をしていました。とても軽薄な行為なのに……私たちにも必要なのですか?」
私だとて分かっている。
これは世継ぎを生む為に必要な行為で義務だ……。けれど、私にも心の準備をする時間が欲しい。
今日は色々とあり過ぎた。
卒業式のパーティーで、婚約破棄をしてと泣き喚いて、ジュリオにキッパリと振られ、今王太子殿下に押し倒されている。
色々あり過ぎて疲れたかもしれない……。
今日は何も考えずに眠りたい……。
「軽薄な行為ではない。ジュリオがしている事とは違うんだよ」
「同じ……だと思います……」
「私は想いを示すのに……想いを通わせるのに、最適な行為だと思っている。少し急いているのは、君の気持ちを早く欲しいから、なのかもしれない。君の涙を見た時、もう待ちたくないと思った。私は、これでも充分待ったんだよ」
王太子殿下の目がとても悲しそうで、私はもう何も言えなくなってしまった……。
これは罰……なのかもしれない。婚約者でありながら、王太子殿下を裏切り……ジュリオを愛してしまった私への罰。
でも、過去を否定したくない。
もし過去に……ジュリオではなく、最初から王太子殿下が幼馴染みとして側にいて下されば、好きになっていたのは王太子殿下だったのかもしれない……。
だけれど、それは言いたくない。
だって、もうどうする事も出来ない事だし……。それに、ジュリオと過ごした全ての時間を否定したい訳でもない。
私はギュッと目を瞑った。
これ以上、駄々を捏ねる訳にはいかない。
私はただでさえ許されない事をした。それを許して下さったのに、それでも尚、王太子殿下を拒めば……これ以上は家にも迷惑がかかってしまうかもしれない。
それは私も本意ではない。
ジュリオも言った。大人しく嫁げと……。それが最適なのだという事は愚かな私でも分かる。
私の一世一代の願いはワガママでしかなかった。
だから、私はもう己の気持ちに折り合いをつけて、ちゃんと王太子妃としての責務を全うしなければならない。
これもその責務の一つだ。
私に抵抗する気がなくなったと分かったのか、王太子殿下は「優しくするから」と言って、私の耳に口付けた。
ピクンと体が跳ねる。
「ひゃっ……な、何?」
「もしかして耳好き?」
「っそ、そんな事分かりません……」
「そうだね、では少しずつ確かめていこうか……」
王太子殿下は、そう言いながら私の耳朶に舌を這わせ、甘噛みをした。その瞬間、耳だけじゃなく甘い痺れのようなものが私の全身を侵食していく気がした。
「やぁっ……っ、ふぅ……待って、くださっ」
ぴちゃ、と耳に響く水音と甘い痺れに、私の体は震え、力が入らない気がする。
こんなの知らない……。
未知の感覚が私を襲う。その感覚が怖い気がする……。
「やぁっ……怖いっ、怖いです」
「大丈夫だから、力を抜いて私に身を委ねて、シシー」
王太子殿下の声すらも私の全身を震わせる。
これは何? この感覚は何?
私の体なのに、私じゃないみたい……。
王太子殿下は、私の耳を食みながら、空いた手で私の体を弄り、器用にドレスを乱していった。
「んんぅ……あっ」
自分の口から出ているとは思えない甘ったるい声が漏れる。それが恥ずかしくて、手で口を塞ぐように覆うと咎めるように耳朶を甘噛みされ、体が跳ねた。
「駄目だよ、シシー。声、聞かせて?」
「は、恥ずかしいから、無理ですっ、っぁ」
「そっか……じゃあ、我慢なんて出来なくしてしまえば良いのかな?」
王太子殿下が髪をかき上げ笑ったから……その情欲を含む笑みに不覚にも私はドキッとしてしまった。
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