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本編
4.戸惑う心
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絡み合っていた唇と唇が離れ、銀糸が引いた。
私が力が入らなくて、そのままポスッと王太子殿下に寄りかかると、王太子殿下が「良い子だ」と頭を撫でた。
「シシー。私はね、いつかは君がジュリオへの気持ちを振り切って……私との未来を考えてくれるのを、ずっと待っていたんだよ」
「…………え?」
私が戸惑いがちに顔を上げると、困ったように笑う王太子殿下と目が合う……。
まさか……今までのは恋愛に奥手だった訳でも、草食系だった訳でも……私に興味がなかった訳でもなくて……ただ待っていて下さった、というの?
「でも、待っているだけでは駄目なのだと気付いたよ。君は臆病だからね、ガツガツすると怖がらせてしまうのだと思ったんだよ。嫌われたくなかったから、君が己の気持ちに踏ん切りがつくまでは、あまりしつこくしないでおこうと思っていたんだ」
……………。
そんな……私……私……。
「王太子殿下は、私に興味がないのだと思っていました」
「……やはりそう思っていたか。良かれと思ってしていた事が、裏目に出ていたとは思わなかったよ。すまないね、シシー。これからは、私は我慢をやめるよ」
「我慢……ですか?」
「うん、そうだね。我慢をしない。己の気持ちに正直になるよ。私はもう己を抑えたりしない。だから、シシー。覚悟をしておいて?」
王太子殿下は私を抱き締めたかと思うと、流れるような手つきで、私をソファーに押し倒した。
私が一瞬何が起きたか分からないでいると、覆い被さってくる王太子殿下と視線が絡み合う……。
「殿下?」
「2回目だ」
「えっ!?」
「シシー、殿下と呼んだら仕置きをすると言っただろう? 覚えていなかった?」
「あ……あの、も、申し訳ございません。あの……」
王太子殿下は「駄目だ、許さないよ」と言いながら、私の額や瞼、頬に口付けを落とした。
心臓が飛び跳ねそうな気がする。
こんな事嫌なのに……何故か拒否出来ない……。
突き飛ばして逃げる事が出来ない……。
「あ、あの……こ、こんな事駄目です。まだ結婚していないのに……」
「そう? でも、三月後には君は名実共に私の妻となる。もう卒業もしたのだし、遠慮はいらないだろう?」
「嫌です……私、こんなの嫌……」
怖い……。
交わりは……ジュリオが他の女性としているところを見てしまった事があるだけだ。
あれはとてもショックだった。
今思えば、わざと見せたのだと思う。私に諦めさせる為に……。
「シシー。今まで口付けをした事は?」
「え? こ、今回が初めてです」
「では、それ以上は?」
「ありません! ある訳ないじゃないですかっ!」
私がつい声を荒げてしまうと、王太子殿下は「良かった」と微笑んだ。
王太子殿下が何を考えているのかが分からない……。
怖さや不安が私を支配する。
逃げたい……逃げ出したいのに、王太子殿下が覆い被さっているから逃げられない。
「本当に良かったよ。あると言われたら、流石の私でも穏やかではいられなかった。可愛い弟を殺してしまうところだったよ」
「………………」
笑顔でそんな恐ろしい事を言わないで……。
ジュリオが私に触れてくれる事は一度もなかった。触れるような軽い口付けさえ、してくれた事はなかった……。
他の女性とは沢山しているのに……。
ふと、自分の心の中から嫉妬が顔を出した気がした。
駄目。駄目なのよ。
私たちの恋は国を乱すとまで言われたじゃない。頼むから、王太子殿下に嫁いでくれとも言われたのに……。
もう忘れなくては駄目。
嫌でも、怖くても、王太子殿下に嫁ぐしか道はない。
心を決めるのよ、チェチーリア。
「心は追々ついてくると私は思っている。だから、まずはその体にゆっくりと教え込んでいく事にするよ」
「え? 何ですか?」
どういう意味……?
「シシー、怖くないよ。これから、気持ち良い事を沢山覚えていこうか? 君の体に、誰が君の夫なのか……教えてあげるよ」
王太子殿下……?
王太子殿下の目は逃さないと物語っていた。
私が嫌だと首を横に振ると、「シシー」と優しく呼ばれて、顔がゆっくりと近づいて来た。
「殿下、待って下さい」
「3回目だね。さて、どうしようかな」
「あ……私、そんなつもりじゃ……」
どうしよう……また失敗してしまった……。
私が力が入らなくて、そのままポスッと王太子殿下に寄りかかると、王太子殿下が「良い子だ」と頭を撫でた。
「シシー。私はね、いつかは君がジュリオへの気持ちを振り切って……私との未来を考えてくれるのを、ずっと待っていたんだよ」
「…………え?」
私が戸惑いがちに顔を上げると、困ったように笑う王太子殿下と目が合う……。
まさか……今までのは恋愛に奥手だった訳でも、草食系だった訳でも……私に興味がなかった訳でもなくて……ただ待っていて下さった、というの?
「でも、待っているだけでは駄目なのだと気付いたよ。君は臆病だからね、ガツガツすると怖がらせてしまうのだと思ったんだよ。嫌われたくなかったから、君が己の気持ちに踏ん切りがつくまでは、あまりしつこくしないでおこうと思っていたんだ」
……………。
そんな……私……私……。
「王太子殿下は、私に興味がないのだと思っていました」
「……やはりそう思っていたか。良かれと思ってしていた事が、裏目に出ていたとは思わなかったよ。すまないね、シシー。これからは、私は我慢をやめるよ」
「我慢……ですか?」
「うん、そうだね。我慢をしない。己の気持ちに正直になるよ。私はもう己を抑えたりしない。だから、シシー。覚悟をしておいて?」
王太子殿下は私を抱き締めたかと思うと、流れるような手つきで、私をソファーに押し倒した。
私が一瞬何が起きたか分からないでいると、覆い被さってくる王太子殿下と視線が絡み合う……。
「殿下?」
「2回目だ」
「えっ!?」
「シシー、殿下と呼んだら仕置きをすると言っただろう? 覚えていなかった?」
「あ……あの、も、申し訳ございません。あの……」
王太子殿下は「駄目だ、許さないよ」と言いながら、私の額や瞼、頬に口付けを落とした。
心臓が飛び跳ねそうな気がする。
こんな事嫌なのに……何故か拒否出来ない……。
突き飛ばして逃げる事が出来ない……。
「あ、あの……こ、こんな事駄目です。まだ結婚していないのに……」
「そう? でも、三月後には君は名実共に私の妻となる。もう卒業もしたのだし、遠慮はいらないだろう?」
「嫌です……私、こんなの嫌……」
怖い……。
交わりは……ジュリオが他の女性としているところを見てしまった事があるだけだ。
あれはとてもショックだった。
今思えば、わざと見せたのだと思う。私に諦めさせる為に……。
「シシー。今まで口付けをした事は?」
「え? こ、今回が初めてです」
「では、それ以上は?」
「ありません! ある訳ないじゃないですかっ!」
私がつい声を荒げてしまうと、王太子殿下は「良かった」と微笑んだ。
王太子殿下が何を考えているのかが分からない……。
怖さや不安が私を支配する。
逃げたい……逃げ出したいのに、王太子殿下が覆い被さっているから逃げられない。
「本当に良かったよ。あると言われたら、流石の私でも穏やかではいられなかった。可愛い弟を殺してしまうところだったよ」
「………………」
笑顔でそんな恐ろしい事を言わないで……。
ジュリオが私に触れてくれる事は一度もなかった。触れるような軽い口付けさえ、してくれた事はなかった……。
他の女性とは沢山しているのに……。
ふと、自分の心の中から嫉妬が顔を出した気がした。
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私たちの恋は国を乱すとまで言われたじゃない。頼むから、王太子殿下に嫁いでくれとも言われたのに……。
もう忘れなくては駄目。
嫌でも、怖くても、王太子殿下に嫁ぐしか道はない。
心を決めるのよ、チェチーリア。
「心は追々ついてくると私は思っている。だから、まずはその体にゆっくりと教え込んでいく事にするよ」
「え? 何ですか?」
どういう意味……?
「シシー、怖くないよ。これから、気持ち良い事を沢山覚えていこうか? 君の体に、誰が君の夫なのか……教えてあげるよ」
王太子殿下……?
王太子殿下の目は逃さないと物語っていた。
私が嫌だと首を横に振ると、「シシー」と優しく呼ばれて、顔がゆっくりと近づいて来た。
「殿下、待って下さい」
「3回目だね。さて、どうしようかな」
「あ……私、そんなつもりじゃ……」
どうしよう……また失敗してしまった……。
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