女装をしたら復讐を始めよう〜糞王子に婚約者を奪われた僕、転生チートで国ごと滅ぼすと決め男装王女と手を取りました〜

猪鹿蝶

文字の大きさ
28 / 33

28、方針を決める僕②

しおりを挟む

 ついに国境の町までやってきた僕たちは、相変わらずショッピングをしていた。
 近々戦争が始まると言うのに、町は全くその姿を変える事は無さそうだった。
 それは僕の事を信用しているからではない。きっとタルト王国ではこの要塞を超える事は出来ないと思っているのだろう。
 だってこの町はタルト王国で見た国境の町に比べて明らかに防御力が違う。きっと本当に今の腐ったタルト王国ではこの要塞を超えられないと思えてしまうのだ。

 そして今の僕といえばここに来るまでの間に、スキルの上昇率は100倍を超えていた。
 だけどそんな事を気にせず、ただショッピングを楽しんでいる僕の横には今、何故かクロテッド様しかいなかった。

 一緒に来ているはずのショコラ様とリノーは、国を出てからというもの今まで休みなしでここまでついてきてくれたからなのか、流石に体力がもたなかったようだ。王都から国境まで蜻蛉返りは流石に大変だから仕方がないだろう。
 でもそこは男女の差というよりは、スキルの差と言った方がいいかもしれない。
 どうやらクロテッド様のスキルもステータスUPがついているらしいからね。
 そう思いつつ、僕はこの町の地図を見て次に行きたいお店を指差してクロテッド様に言った。

「次はあそこを見に行きませんか?」
「あの、フラム……楽しんでいる所すみませんが、このあと行きたい喫茶店があるので、一緒にお茶でもしませんか?」
「もしかして、歩きっぱなしで少し疲れました?」
「いえ、そういう訳ではないのです。ただ単にその喫茶店に私が行きたいということもありますが、貴方に戦争が始まる前に少し確認しておきたい事がありまして……」

 深刻そうに言うその姿が気になってしまった僕は、お茶をするのを承諾したのだった。
 そしてクロテッド様につれられ、喫茶店に入った僕は何処か既視感を感じながらクロテッド様の前に座っていた。
 なんだ……この喫茶店。前世の有名な某コーヒーショップみたいなレイアウトに見える、というかまんまじゃないか?
 少し不思議そうに周りを見回す僕を見て、クロテッド様がニコリと言った。

「実はここ、私が経営している喫茶店なんです」
「え、クロテッド様が……ここを?」
「はい、ここは私が前世で愛用していたお店を真似て作ったんです」

 今、クロテッド様はサラッと前世って言わなかっただろうか……?

「私、その店がないと生きていけない程好きで好きで仕方がなくて、この世界に生まれてからずっとそこのコーヒーを生み出すのに全てを捧げていたんです」
「いや、待ってください。コーヒーの話も大事ですけど、その前に前世って……」
「ええ、私は異世界から転生してこの地に生まれてきたのです。貴方と同じように……」

 その言葉に、僕は驚きのあまり目を見開いていた。

「な、なんで僕が転生者だって……」
「この前、私にある衣装を着せてくださりましたよね? あれは私が前世で見ていたアニメ、魔女っ子ルンルンの相方であるランランの衣装でした。あの衣装が何故この世界にあるのかわかりませんが、その衣装を持っている事こそ貴方が転生者だという事を決定付けていると、私は思ったのです」
「という事は、クロテッド様は同じ世界からの転生者……?」

 クロテッド様を見つめると、その顔が少し歪んだのだ。
 僕は何か変な事を言ったのだろうか?

「いえ、同じ世界どころではありません。私の予想が当たっているのなら、貴方は私に巻き込まれて一緒に死んでしまった可能性があるのです」
「嘘でしょ、僕が巻き込まれて死んだ? 一体何に……でも僕の記憶では、運悪く何かが僕に当たったせいで打ちどころが悪くて即死した、事故死だと思っていたのだけど……?」

 前世の最後を思い出しても誰かが「危ない!」と叫んだ声とともに突然記憶が途絶えていたから、何かが頭にでもぶつかったのだと思っていたけど、違ったのだろうか……。

「残念ながら、貴方の死因はそうではありません。覚えていませんか? あの日、私と貴方はイベントに出ていたのです。それもルンルンとランランで衣装合わせをしていたのですけど……私の事、分かりますか?」

 確かに僕が亡くなったあの日、僕はイベント来てていた。そしてその横には僕と同じおとこの娘レイヤーさんが可愛いらしく立っていたのは覚えている。

「って、ことはクロテッドさんがあのとき僕の横にいたクララさんです?」
「そうです。そして貴方はルンきゅんさんですね」
「ちょ、ちょっと待って! そのニックネームで呼ばないで……」

 名前が黒歴史過ぎて忘れてたのに、僕はその名前を呼ばれた瞬間に思い出してしまい死にそうになっていた。
 自分でルンきゅんです! とか名乗ってた自分よ滅せよ!!

「何故ですか? 当時もとても可愛いくて、名前とあっていると思ってたんですけど……」
「自分にきゅんっとかつけるのはありえないですから、それにそのニックネームの事はどうでもいいので話を戻して下さい」
「でもルンきゅんさんは、おとこの娘仲間の間では憧れにする人は多かったのですよ? 私もその一人でした。そしてイベントは憧れの人と一緒に、それもおとこの娘代表としてメインステージに上がれると言う栄誉まで頂いて、その日の私はとても浮かれていました」

 その大規模イベントに僕は手伝って欲しいと知人に呼ばれて行ったけど、でもメインステージに上がった記憶はないような……?

「そして事件が起きたのはメインステージに向かうための裏口を歩いていたときでした。そこはとても人通りが少なくて、わざわざそこを狙ったのだと今なら思ってしまうのです」
「何が、起きたのですか?」
「それは….…私たちめがけて、突然後ろから男の人が走ってきたのです。私はこのままだと貴方にぶつかると思って「危ない!」っと叫びました。しかし横を見た時には、貴方の胸からすでに刃物が飛び出ていたのです」
「……え?」

 もしかして僕、刺されて死んだの?
 その衝撃的な事実を受け止めるのに、僕は数秒固まってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...