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第3話 「ハゲ盗賊団の秘密」
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「ほうお前がガキの代わりになると?」
「ことの発端は私が話しかけたからです。それならば、私こそが罰をうけるのが道理。違いますか」
イリスさんは一歩も引かない。仮に、頭領が本気で殴れば俺もイリスさんも簡単にやられてしまうだろう。そんな相手に堂々と胸を張る。
かっこいい。心のそこから、素直にそう思えた。
「アイ、相手の弱点とか分かるんだよな! 頭領、武器の情報、お前のアドバイス、何でもいいから教えろ!」
「ハイ、マスター。少し情報の整理に時間をいただきます」
だからこそ。
「待てよ、ハゲ。発端も何も、最初に脱走を企てたのは俺だ。なら責任は全て俺にある、違うか」
この人を、そんな優しい人を、俺のせいで傷つけるわけにはいかない。
「マコトさん!?」
「ほう、中々芯のあるガキじゃねぇか。仲間に欲しいぜ」
「こちとら女子を守っても女子を殴れとは教わってねぇんだよ。教えの違いで仲違い真っ直ぐだな」
虚勢だ。どれだけ威勢を張ろうが殴り合いじゃ絶対に勝てない。それでも挑発すれば意識はこっちに向く。そうなれば俺の勝ち。
『ケンカってのはな、腕力なんかじゃねぇ。ハッタリだろうがビビった方が負けなんだよ』
人生何が役に立つのか分かったものじゃない。くだらないケンカ自慢の浅い知識もこうして役に立つ。
「ますます惜しいな、不可視の使い魔にその度胸。今ならさっきまでの言葉も許すぞ、どうだ」
「二度も言わせるな、俺を好きにしろ。それで終わりだ」
「ダメですマコトさん!」
笑う頭領から視線を逸らさず、静かに見据える。……そろそろどうだアイ。
「整理完了、アドバイスを提案します」
「何だ」
「 」
「 ?」
「 」
「 !」
……それが最善なのかは分からないが言うことは一つだ。
頼むぞ、アイ。
「ハイ、マスター」
「許可する」
俺の言葉で盗賊達全員がアイを見る。
「……これがお前の使い魔か、思ってたより不気味だな。だが、」
突然現れたアイに盗賊達は戸惑うが頭領はすぐさま支持を出す。
「お前の使い魔は見えないのが特徴、なのに見えるようにしたのは何かしらの能力を使うため。お前らぁ、すぐさま叩き落とせ! ただし慎重にだぞ!」
「おぉ!」
各々が武器を構えじりじりとアイに近く。
「マコトさん! 魔眼の使い魔に戦闘力はありません! ここは私がっ……!」
「大丈夫ですよ」
確実にイリスさんは俺よりもアイについて、使い魔に詳しい。戦えないことだけでなく、アイの能力も知っていた。恐らく俺が戦えないことも察していることだろう。
「ここは俺たちに任せてください」
それでも、俺たちのために前に立ってくれた人を守る壁にくらいには、いや、倒してみせる。
「こう見えても、異世界チートのテンプレを経験してますから」
あ、転生を抜かしたけど、まぁいいか。
「アイ!」
「見透かす眼、クリア=アイを発動」
アイを中心に、目に見えない透明な光が当たりを包んだ。
「今のは……」
「頭領は先ほどしましたが、他の盗賊はしていませんでしたのでクリア=アイによるスキャンを行いました。現在、この場にいる全員の情報を入手しています」
「何……!」
先ほどまでの不適な笑みから一転、頭領は苦々しく顔を歪める。
「盗賊頭領、チェーンメイルのヘガ。ここから八百七十メートル離れた洞窟に拠点を構える。近隣の町村から懸賞金が掛けられています」
「何ぃ!」
「頭領こいつらヤバイですよ!」
盗賊達の反応を見るにどうやら本当らしい。
「うろたえるなお前ら! 魔眼の力は本物っぽいが、それまでだ! どれだけ見透かそうが戦闘力は無い!」
違うか、そういうように再び不適な笑みを浮かべて俺を見る。
実際その通りだ。アイはサポートとしては紛れもなくチートだ。戦う能力は一切無い、恐らく持ち主がある程度戦える前提の使い魔。
だが俺は戦えない。
これは既に全員が把握している。
だから頭領は焦らず、イリスさんは慌てている。
そんな中俺は一切慌てることなく、アイの隣に立っている。
「うちの使い魔、いややっぱ違うな」
大胆不敵に、自身満々に、笑う。
「俺の使い目、なめんじゃねぇぞ」
俺が戦えないことなどアイの方が俺以上に知っているのだろう。その上で勝てる作戦をアイは考えた。
「全員の情報、秘密を暴き動揺を誘います。良ければ同士討ち、少なからず隙ができるでしょう。逃走は可能です」
「それイリスさんも一緒に?」
「私の助力、マスターの力量にもよりますが」
「……最初から考えてた?」
「マスターのことは既に計算済みです」
「最高だな」
「ヘガは仲間にも秘密にしていることがあります」
「は……?」
「頭領!?」
「な、デタラメ言ってんじゃねぇぞ!」
動揺した盗賊を見ながらイリスさんに小声で話しかける。
「イリスさん」
「……」
「イリスさん?」
「あ、はい! 何でしょうか?」
何故か俺を見ながら惚けていたイリスさんに、作戦を伝える。
「正直どれだけ時間が稼げるか分かりません、いつでも行けるように心構えをしておいてください」
「あ、はい」
「頭領の秘密、それは」
ちょうどいいタイミングだ。走り出せるように少しだけかがむ。
「行きますよ、イリスさん」
「はい!」
「な、何だ言ってみろぉ!」
信頼と疑心、その二つが盗賊達を鈍らせる。
その隙にイリスさんと逃げ出す。
「 」
アイが口、多分、口を開いた今!
「イリスさん!」
「彼は奴隷のように扱われることを心の中では望んでいます。いわゆる、どエムです。それも筋金入りの」
こけた。
走り出した足は宙を踏んで盛大にこけた。
「ことの発端は私が話しかけたからです。それならば、私こそが罰をうけるのが道理。違いますか」
イリスさんは一歩も引かない。仮に、頭領が本気で殴れば俺もイリスさんも簡単にやられてしまうだろう。そんな相手に堂々と胸を張る。
かっこいい。心のそこから、素直にそう思えた。
「アイ、相手の弱点とか分かるんだよな! 頭領、武器の情報、お前のアドバイス、何でもいいから教えろ!」
「ハイ、マスター。少し情報の整理に時間をいただきます」
だからこそ。
「待てよ、ハゲ。発端も何も、最初に脱走を企てたのは俺だ。なら責任は全て俺にある、違うか」
この人を、そんな優しい人を、俺のせいで傷つけるわけにはいかない。
「マコトさん!?」
「ほう、中々芯のあるガキじゃねぇか。仲間に欲しいぜ」
「こちとら女子を守っても女子を殴れとは教わってねぇんだよ。教えの違いで仲違い真っ直ぐだな」
虚勢だ。どれだけ威勢を張ろうが殴り合いじゃ絶対に勝てない。それでも挑発すれば意識はこっちに向く。そうなれば俺の勝ち。
『ケンカってのはな、腕力なんかじゃねぇ。ハッタリだろうがビビった方が負けなんだよ』
人生何が役に立つのか分かったものじゃない。くだらないケンカ自慢の浅い知識もこうして役に立つ。
「ますます惜しいな、不可視の使い魔にその度胸。今ならさっきまでの言葉も許すぞ、どうだ」
「二度も言わせるな、俺を好きにしろ。それで終わりだ」
「ダメですマコトさん!」
笑う頭領から視線を逸らさず、静かに見据える。……そろそろどうだアイ。
「整理完了、アドバイスを提案します」
「何だ」
「 」
「 ?」
「 」
「 !」
……それが最善なのかは分からないが言うことは一つだ。
頼むぞ、アイ。
「ハイ、マスター」
「許可する」
俺の言葉で盗賊達全員がアイを見る。
「……これがお前の使い魔か、思ってたより不気味だな。だが、」
突然現れたアイに盗賊達は戸惑うが頭領はすぐさま支持を出す。
「お前の使い魔は見えないのが特徴、なのに見えるようにしたのは何かしらの能力を使うため。お前らぁ、すぐさま叩き落とせ! ただし慎重にだぞ!」
「おぉ!」
各々が武器を構えじりじりとアイに近く。
「マコトさん! 魔眼の使い魔に戦闘力はありません! ここは私がっ……!」
「大丈夫ですよ」
確実にイリスさんは俺よりもアイについて、使い魔に詳しい。戦えないことだけでなく、アイの能力も知っていた。恐らく俺が戦えないことも察していることだろう。
「ここは俺たちに任せてください」
それでも、俺たちのために前に立ってくれた人を守る壁にくらいには、いや、倒してみせる。
「こう見えても、異世界チートのテンプレを経験してますから」
あ、転生を抜かしたけど、まぁいいか。
「アイ!」
「見透かす眼、クリア=アイを発動」
アイを中心に、目に見えない透明な光が当たりを包んだ。
「今のは……」
「頭領は先ほどしましたが、他の盗賊はしていませんでしたのでクリア=アイによるスキャンを行いました。現在、この場にいる全員の情報を入手しています」
「何……!」
先ほどまでの不適な笑みから一転、頭領は苦々しく顔を歪める。
「盗賊頭領、チェーンメイルのヘガ。ここから八百七十メートル離れた洞窟に拠点を構える。近隣の町村から懸賞金が掛けられています」
「何ぃ!」
「頭領こいつらヤバイですよ!」
盗賊達の反応を見るにどうやら本当らしい。
「うろたえるなお前ら! 魔眼の力は本物っぽいが、それまでだ! どれだけ見透かそうが戦闘力は無い!」
違うか、そういうように再び不適な笑みを浮かべて俺を見る。
実際その通りだ。アイはサポートとしては紛れもなくチートだ。戦う能力は一切無い、恐らく持ち主がある程度戦える前提の使い魔。
だが俺は戦えない。
これは既に全員が把握している。
だから頭領は焦らず、イリスさんは慌てている。
そんな中俺は一切慌てることなく、アイの隣に立っている。
「うちの使い魔、いややっぱ違うな」
大胆不敵に、自身満々に、笑う。
「俺の使い目、なめんじゃねぇぞ」
俺が戦えないことなどアイの方が俺以上に知っているのだろう。その上で勝てる作戦をアイは考えた。
「全員の情報、秘密を暴き動揺を誘います。良ければ同士討ち、少なからず隙ができるでしょう。逃走は可能です」
「それイリスさんも一緒に?」
「私の助力、マスターの力量にもよりますが」
「……最初から考えてた?」
「マスターのことは既に計算済みです」
「最高だな」
「ヘガは仲間にも秘密にしていることがあります」
「は……?」
「頭領!?」
「な、デタラメ言ってんじゃねぇぞ!」
動揺した盗賊を見ながらイリスさんに小声で話しかける。
「イリスさん」
「……」
「イリスさん?」
「あ、はい! 何でしょうか?」
何故か俺を見ながら惚けていたイリスさんに、作戦を伝える。
「正直どれだけ時間が稼げるか分かりません、いつでも行けるように心構えをしておいてください」
「あ、はい」
「頭領の秘密、それは」
ちょうどいいタイミングだ。走り出せるように少しだけかがむ。
「行きますよ、イリスさん」
「はい!」
「な、何だ言ってみろぉ!」
信頼と疑心、その二つが盗賊達を鈍らせる。
その隙にイリスさんと逃げ出す。
「 」
アイが口、多分、口を開いた今!
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こけた。
走り出した足は宙を踏んで盛大にこけた。
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