3 / 3
3
しおりを挟む
私が手帳を凝視していると、中年男が言った。
「私どもはあなたのご主人を探しています。ご主人の会社から話がありましてね。あなたのご主人、会社ではなかなか重要なポストにいるみたいですね。ところで奥さん。あなたはご主人の捜索願を出していませんね。普通の人なら当然出すもんですがね。なんで出さないんですかね」
――この人はいったい、なにを言っているんだろう?
私は少しいらつきながら答えた。
「捜索願なんか、出すわけがないじゃないですか。うちの人は、いなくなったりなんかしてません」
中年男が私に一歩近づいて言った。
「それじゃあご主人は、今どこにいるんですかね」
私ははっきりと言った。
「裏山です」
「裏山?」
「そうです。このところ疲れ気味なので、裏山でしばらく休んでいます。そのうちまた顔を出しますから」
「裏山で? で、裏山のどこにいるんですかね」
「遊歩道のその先の深い土の中です。そこで休んでいます」
二人の刑事が思わず顔を見合わせた。
終
「私どもはあなたのご主人を探しています。ご主人の会社から話がありましてね。あなたのご主人、会社ではなかなか重要なポストにいるみたいですね。ところで奥さん。あなたはご主人の捜索願を出していませんね。普通の人なら当然出すもんですがね。なんで出さないんですかね」
――この人はいったい、なにを言っているんだろう?
私は少しいらつきながら答えた。
「捜索願なんか、出すわけがないじゃないですか。うちの人は、いなくなったりなんかしてません」
中年男が私に一歩近づいて言った。
「それじゃあご主人は、今どこにいるんですかね」
私ははっきりと言った。
「裏山です」
「裏山?」
「そうです。このところ疲れ気味なので、裏山でしばらく休んでいます。そのうちまた顔を出しますから」
「裏山で? で、裏山のどこにいるんですかね」
「遊歩道のその先の深い土の中です。そこで休んでいます」
二人の刑事が思わず顔を見合わせた。
終
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる