魔女はいかがですか

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
2 / 27

しおりを挟む

暗い中で短い時間に俺が見たものは、つばの広い先が折れ曲がった円錐型の黒い帽子をかぶり、ゴシック調のこれまた黒い服を着て、なにか棒状のものにまたがって低空飛行をしていた、女だった。

暗い上につばの広い帽子のせいで顔はよく見えなかったのだが、印象としては女だ。

――魔女?

そうそれは、魔女としか言いようのない存在だったのだ。

振り返り、魔女らしき女が去った方を見ていると、後方から声が聞こえてきた。

見ればそれは、各々手に棍棒や鉈のようなものを持った十人ほどの男たちだった。

その団体がこっちに向かって走ってくるのだ。

――うわっ!

俺は家の壁にへばりついた。

男たちは口々になにかをわめきながら、俺の方にちらりと視線を移しつつも、止まることなく俺の前を通り過ぎて行った。

どう考えても、あの魔女を追いかけているとしか思えなかった。

男たちがなにを言っているのかはわからなかったが、俺にはなんとなくフランス語を話しているように思えた。

そして男たちの服装は、とても現代人のものとは思えなかった。

ついさっきまで気心の知れた友人と楽しく飲んでいたというのに、気が付けば中世ヨーロッパにいて、おまけに魔女とそれを追いかける団体にでくわしてしまっている。

いったいなにがどうなっているのかまるでわからない。

――どうしよう……。
しおりを挟む

処理中です...