だっこちゃん

ツヨシ

文字の大きさ
1 / 1

だっこちゃん

しおりを挟む
ショッピングモールで買い物をしている時に、出会った。

右腕に幼い少女が抱きついている女性だ。

女の子は両手両足を使ってその女性にしがみついていたが、そんな奇妙な光景にもかかわらず、周りにいる人たちはみな無反応だった。

それはそうだろう。

女の子はすでに死んでいて、普通の人には見えないからだ。

私には子供の頃からそういうものが見えていた。

最初は何事もなかったように振舞っていた私だが、どうにも気になって女に声をかけた。

あの時私は、どうかしていたのだ。

「あのう、失礼ですけど、お子さんですか?」

女は私を凝視した後に、言った。

「見えるのね。声をかけてくれてありがとう。それじゃあ」

女は空いた左手でまるで物のように少女を掴むと、私の右腕に向けてつき出した。

すると少女はそのまま私の右腕にしがみついた。

そして何も言わずに、異様に大きな黒目で私を見た。

「あなたみたいな人、早く見つけなさいよね」

その時、私は女の右腕が、わずかばかりだが黒ずんでいることに気付いた。

女はそのまま立ち去った。



あれからそれなりの時間が経ったが、まだ見つからない。

今まで以上に人ごみの中を出歩いているというのに。

まれに私の方、と言うよりも私の右腕あたりを見てぎょっとした表情を浮かべる人がいるのだが、話しかけてはくれない。

向こうから話しかけてくれないと、駄目なのだ。

一刻も早くそんな人を見つけないと。

何故なら少女がしがみついている私の右腕が、日に日に腐っていっているのだから。


     終
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの でもそれは裏切られてしまったわ・・・ 夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。 ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

処理中です...